長崎到着から初日
長崎の空港から、これまた貸切バスで長崎駅へ。バスの車体には、『長崎観光交通』と馬鹿でかく書かれた、よくこんなバス作ったなという、センスが疑われるバスだ。
ぼくたちは、休み時間に密かに決めた席順の通り、要領よく乗り込む。
そして、バスは軽快にエンジンをふかし、出発した。
23分後、13:09分。(時間はバスの時計で見た)長崎駅の前に着いた。ああ、でかいなぁ。空港でも一瞬見たが、駅に書かれた『yokoso!nagasaki』の文字は、長崎に来た、という気分にさせてくれる。
そこから、JR九州:特急『blue-sky!nagasaki』に乗り、矗差駅から、地方の路線矗能生線に乗る。
…さっきまでは、ビルが立ち並んでたのだが、この路線に乗ったとたんに田園風景が広がる。
「おい、森田、田園、って感じだな」
僕は、クラスメート以上友達ぐらいかな、の森田雛子に話す。
「確かにね…。さっきまでは都会だったのに、田舎になってるわ。私たちが住む東京とは大違い」
森田は率直に感想を言う。森田はクラスの中で男子がつける『女子人気ランキング』で2位を獲得している。性格もおとなしく、優しい。まぁ、僕は1位である、祥子のほうがいいけど、10人ぐらいは、森田を好きらしい。
話が逸れてしまった。そんな事は置いといて、やっぱり日本人には田園風…おっと、もう降りる駅が近づいてきた。
降りた駅は、太齋湊といった。また、それがボロボロの駅、無人駅だった。
その名の通り、駅の近くには『太齋湊』と呼ばれる港があった。今は使われていないらしいが、今回は特別に船を用意し、島へ向かうこととなった。
その船は、この港にいるのがおかしいぐらい立派な船で(まあ、立派な港で見たらちっぽけに感じるのだが)、1000人の人々を運べるという船だった。名前は、『MIDORIKAWA educational institution ship.special ver.』といった。って、『midorikawa educational institution』って、うちの学園の英称じゃないか!…船まで持っていたのか、うちの学校。
とりあえず男子と女子全員が乗り込み、出発。なんか静かやな、と思い、先生に聞くと「ああ、この船はモーターで動いているんだ。太陽電池システムも採用している。2003年に緑川学園製船工場にて作られ、2004年に登録された」ほーん。そんなシステムをねぇ。
そんな事を話しているうちに、島に到着した。先生たちは吉見小島に建物を作り、そこに滞在するようだ。僕たちはまずそこに行き、そこで詳細が話された。
「えっと、無人島には、テントがあるので、入り口にある番号札の数字を見て、自分の班の数字のテントに入ってください。グループは、先生たちのほうで決めてあります。先生宿舎入り口の表で確認してください」
「では、解散!」
先生の発言が終わると、僕らは先生宿舎前の表を確認した。えーと、僕はNO.6か。あ、祥子ちゃんもNO.6だ。森田も。大屋も。…先生、なんて都合がいい。ということは、NO.6のグループはこの四人で活動するのか。
僕たちは、一時的に本島から小島にかけられた橋を渡り、本島へ。僕ら、NO.6のテントの中に入る。すると、大屋がいた。
「あれ、他のメンバーはまだきてないのか?」
僕は大屋に聞いた。
「ああ、そうだ。遅いな、女子はやっぱ」
そうだ、と答えが返ってきた。
「じゃあ、壁に糸でぶら下がってるあの『正しく無人島生活していただくために』でも読むか」
「サンセー」
そして、僕ら二人は黙々と読み始めた。
▼以下、本文
1.持ち物の確認
テントの中に以下に記載するアイテムがあるかきちんと確認しましょう。ない場合は先生宿舎へおいでください。
1.非常用PHS(先生宿舎と海上保安庁のみにかかります)
2.薪、50本
3.非常食セット(五日、メンバー分)
4.災害時緊急ライトメンバー分
5.正しく動物を狩っていただくために教本
6.他のグループと協力していくために教本
7.YA!ENTERTAINMENTのレーベルの本全冊
…僕らはひとつだけないものがあることを確認し、その本を読むのをとりあえずやめた。
そんなとき、女子組が来た。
「遅い!なにしてんだよ!」
大屋が女子に対して言う。
「いや、女子はこれを持ってけって」
「あっ」
そう、なかった非常食セットだ。職員宿舎にとりに行こうと思ったのだが。
「あっ、ども」
「もう、誤解しないでよね」
ちょっと不機嫌気味の女子も参加させ、全員で(2)を読んだ。
今度は、心得が書いてある。その次は…どうでもいい本だと確認した僕らは、とりあえず本棚にしまっておいた。そう、このテントの中には、発電機と電球、本棚、布団がある。(あ、発電機は厳密に言えばテントの隣にある)本棚にはYA!ENTERTAINMENTや、教本が入れられていた。発電機は、一応低音だが、ブーンと唸っていた。電球は一個だがあまり暗くない。ワット数が高いようだ。布団は羽毛布団で、メンバー分あった。そういえば広いな、このテント。普通のテントの10倍ぐらい広そうだ。―眠くなってきた僕は腕時計を確認する。AM2:21分…そりゃ眠いわけだ。そして僕はこういった。
「みんな、そろそろ寝ないか」
「賛成」
まるっきし疲れた声で全員が返答する。発電機のスイッチを切り、電球のスイッチもオフにしておく。そして、静かに寝息をたて、就寝。