君が好きだった
僕には愛する君居て、仕事もあって平凡な日常だった。
それだけでも、僕は十分に幸せだったんだ。
ジリリジリリ
目覚ましの時計の音が枕元から聞こえてくる。
眠たい目を擦りながらも怠くなった体を起こす
ガチャとドアの開ける音が聞こえ
「あら?起きてたの?」
そう言ったのは、僕の妻のあやめだ。
あやめはいつものようにカーディガンを肩に羽織っていた。
「朝食出来てるから早く食べてね」
そう言うとあやめはリビングに戻って行った。
僕は気だるそうに返事をすると、顔を洗うため洗面所へと向かった。
洗面所の鏡には、ボサボサの髪をした目つきの悪い顔が見えていた。
勿論、僕自身なのだけれど
ちゃっちゃと顔を洗い、リビングに行くとあやめが先に椅子に座ってテレビを見ていた。
隣には暖かそうなスープとトーストが置かれていた。
僕も椅子に座り、一緒にテレビを見る。
テレビには、交通事故に遭い、夫婦が重体になっていると言うニュースだった。歳も僕達と変わらないくらいだった。
「物騒よね、世の中」
「そうだね 僕達も事故とかには気をつけないとね」
「うん、そうね」
いつも元気そうなあやめが、今日に限って元気そうに見えなかった。
僕は朝食を食べ終わると、食器を片付け、会社に向かう事にした。
いつもは、行ってらっしゃいと言うあやめの声は聞こえなかった。