空白の間と感想
ディンはなにも言ってくれない。
「あの、こ……こんな感じで、どうですか?」
不安に駆られて、でもディンを直視することはできなくて、ちらりと上目使いでディンの顎あたりを見やりながら訊ねる。
「ディン様」
リューがディンに反応を促す。
「あ……ああ。思った通りだったな。おれの捜していた楽師はおまえで間違いない」
ディンがしっかりと頷くのを見て、マリィナはほっと胸をなで下ろす。
どうやら解雇は免れたようだ。
――空白だった、あの間が気にはなるけれど。
「すごいじゃないか。いやぁ、お見事」
ぱちぱちとレルトから拍手を贈られ、マリィナはいえそんな、と照れて俯く。
これまで、リアラを弾く時は大抵アネくらいしか近くにいなかったし、たまにフィールとおじいちゃんに聴かせても、あのふたりはなんでも上手いと言ってくれるから、本当にそう思っているのかどうかいまいちわからないのだ。
そんなわけで、全くの他人から拍手を贈られるのは初めての経験だ。
「素敵でしたよ、マリィナさん」
リューにも褒められて、尚更照れる。
ひとしきり照れてから、ふと思い至る。
そうか。この人たちはフィールやおじいちゃんと同じなんだ、と。
一緒に旅をするマリィナを身内と判断して、褒めてくれているに違いない。
みんな優しいから。
ディンのさっきの間は、きっとそこの折り合いをつけている間だったんだ。
だから、笑ってくれなかったんだ。
そこまで考えたマリィナは、ディンがもう一度笑ってくれることを期待していたのだ、という自分の気持ちに気づいた。
――だって、あんなに嬉しそうに笑うんだもの。
もう一度、あんな風に笑ってもらいたい。
その為には、きっともっと練習しなきゃいけないんだ。
これまでみたいに、好きな風に弾いてるだけじゃ、ダメなんだ。
これからはもっと練習しないと。
マリィナは固く心に決めた。




