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感謝の気持ち

「行っちまったな」

 

 背後から聞こえた声に、マリィナはびっくりして振り返る。


「フィール!」


 そういえば、晩餐会のあいだ、見かけなかったなと改めて思い至る。


「お見送り、一緒にすればよかったのに」

「ま、会いたくなったら、いつでも会いに行けばいいからな。ふたりが同じ場所にいるなら、まとめて会えて助かる」

「そんな言い方して……。レットのこと、案外気にかけてたの知ってるんだから」


 道中、体力がないレットの荷物をさりげなく持ってあげたり、動けないでいるレットのために水を汲んであげてたり、そういう姿をよく見かけた。

 マリィナが気づくより早く、フィールが動くから、マリィナの出番はなかなかなかった。


「レットを気にかけてたっていうか……ずっとおまえの面倒見てきてるから、つい体が動いちまうんだよ。動ける俺が動いた方が早いし、気になることが解決するから俺もすっきりする」

「そ、そうだったの⁉」


 それでも、レットはきっと、すごく助かったと思う。

 もちろん、マリィナも随分と助けられている。


「ああ。でもまぁ、悪い奴じゃなさそうだし、また会ってもいいかなとは思ってるけどな。ルテアにも」

「そしたら、会いに行くときは一緒に行こ!」

「まあ、いいけどな」


 研究所がどこにあるかはわからないけど、フィールと一緒にふたりに再会するときのことを思うと、去ってゆくふたりを見送って寂しくなっていた気持ちが少し薄れるような気がした。


「部屋に戻るんだろ? 俺も一緒に行くわ」


 そう言って、フィールがマリィナを追い越し、そのまま部屋に向かって歩き出す。

 マリィナは、フィールの後姿を眺めながらついてゆく。

 

「ねえ、フィール。わたし、家に戻るよ」


 ゆっくりと歩きながら、マリィナは心に決めたことを伝える。


「は? 俺が連れ帰ろうとするのを、嫌がってたのに?」


 驚きに目を丸くしたフィールが足を止め、マリィナを見やる。


「うん。おじいちゃんとアネに会いたいし、リアラを上手くなりたいけど、その勉強をするにも、まずは基礎力をつけなきゃだし、その為には、まだ再就職してる場合じゃないかなって思って。フィールとおじいちゃんに恩返しできるのは、まだ少し先になっちゃうかもだけど……」


「恩返しなんて、気にすんなよ。こっちが期待してねえんだから、どれだけ先になろうと関係ねえし。おまえがやりたいことを見つけて、それに向かってがんばるっつーんなら、俺もじいさんも応援するだけだ」


「フィール……。ありがとう」


「別に。これまでと何も変わんねーってことだ」

「これまでも、ありがとうだよ」


 いつも、感謝をしている。

 小さいころから傍にいて、見守ってくれている。

 でも、今、改めて強くありがたいと思った。

 自分は、フィールになにかしてあげられているんだろうか。

 フィールが困った時に助けられるような自分になりたい。

 マリィナはそう強く思った。

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