表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/46

罪と償い

 ディンと話した後、マリィナは部屋に下がることにした。

 演奏は楽しかったけれど、緊張のための疲れもあった。


「不意打ちの様になってしまってすまなかったな。今夜はゆっくり休んでくれ」

「いえ、とんでもない! 嬉しかったです」


「部屋まで送りましょうか?」


 テラスから戻ってきたマリィナたちに気づいたリューが聞いてくれる。

 けれど、まだまだ晩餐会は続いていて、この場にディンがいる以上、リューも仕事があるってことだろう。


「ありがとうございます、リューさん。でも、大丈夫です。部屋の場所は覚えてるので」

「そうですか。それでは、ここで。ゆっくりお休みください」


 ディンと、その傍らに控えるリューに笑顔で「おやすみなさい」と挨拶をして、マリィナは大広間をあとにした。


 歩いていると、まだ夢の中にいるように、足元が少しふわふわしている気がする。

 記憶をたよりに城内の廊下を歩いていると、


「マリィナ!」


と自分を呼ぶ声が聞こえた。

 聞き覚えのある、女性の声。

 きょろきょろ見回していると、再び声が聞こえる。


 二階の廊下を歩いている自分より、下の方から。

 吹き抜け側の手すりから下を見ると、一階にルテアとレットの姿があった。


「そこで待っとって~」


 ルテアがそう言いながら、階段を駆け上がってくる。

 そのあとを、レットが少し遅れてついてくる。


「ルテア、弟さんは、大丈夫でしたか?」


 ルテアは、病気だという弟さんが心配で、会いに行っていたはずだ。


「ありがとう。大丈夫、薬もちゃんと飲ませてもらっとって、病状も落ち着いとったけん」

「当たり前だろ。そのあたりはしっかりと指示を出してあるし、念を押してある」


 レットがきっぱりと言い切る。

 

「レットがっていうよりは、ディンが指示してくれたんだろうけど」

「それは……最終的にはそうだけど」


 それでも、弟さんの状態が安定していると知って、マリィナはほっとした。

 その時になって、ふたりが旅装に身を包んでいることに気づく。


「弟さんのこと、よかったですね。ところで、あの……おふたりはこれからどこかへ行かれるんですか?」


 マリィナの問いに、ああ、とレットが頷く。


「うちがしとったことは償わんといけんけん……」

「国営の、薬の研究所がある。ルテアには、そこでの労働を命じる判決が下った。この国の為に働いて償えってことだ。逃げ出さないように、見張りも付く。……まあ、その見張り役が僕なわけなんだけどね」


 ルテアを攫い、恐喝し、利用していた組織は、宿で捕獲された連中から大元までたどられ、壊滅したと聞いた。

 罪は償わなければならない。

 ルテアが研究所に送られるのは、適材適所ということかもしれない。


「そうなんですね。おふたりなら、きっと今よりもっと多くの人を助けられる、そんなお薬をきっと作れると思います」 


 治療薬のおかげで疫病がおさまったのは、間違いのないことだから。


「研究所勤めをしたいと思ってたところだったから、まあ悪くない配置だよね」

「ありがとう、マリィナ。そんな薬を、きっとたくさん作るけんね」

「はい! がんばってください」


 マリィナの言葉に、ルテアはしっかりと頷いた。

 それじゃあ、とふたりが踵を返す。

 晩餐会の賑わいがかすかに聞こえてくる中、マリィナはふたりが階段を下り、その先の壁の陰へと消えるまで見送った。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ