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ガイヌの街

 マリィナたちは、ネールディア国境に近い都市ガイヌを見下ろせる丘に立っていた。

 パールフを出て、一週間が経過していた。


 道中、マリィナは時間をみつけてはリアラの練習を積んできた。

 それまで一日にちょっとしか触らない日もあったことを考えれば、ずっとリアラを抱えている今は以前と比べて随分と指の動きが変わったと思う。


 急ぐ旅路だけれど、人も馬も休息は必要だった。

 休んでいるときくらいは、せめて、自分の演奏が少しでも安らぎを与える助けになれたらと思った。

 マリィナには、そのくらいのことしかできないから。


 峠を越える際や野宿の時、野党に襲われたことがるけれど、そういう時はリューとフィールが相手を蹴散らしてくれた。


「わあー。ここがガイヌかいねー? えらい大きいけんびっくりだー」


 ルテアが感嘆の声をあげる。


「これまでいろんな街を通って来ましたけど、ここは本当にすごいですね」


 マリィナは右から左へぐるりと視線をめぐらせた。

 教会と思しき鐘楼だけでもいくつも見えるし、遠くからでも巨大だとわかる宮殿が都市のほぼ中央辺りにどんと建っている


「ああ。国境にも海にも近い、グラトリアスの要所だからな。治めているのはグラトリアスでも大きな権力をもっているベルーニ侯爵」 

「ここに行くべきだっていうのが、ディンの予言なんですよね?」


「そうだ。ここにはおれの末の妹――第九王女シェリが嫁いでいる。まずはシェリに会う。シェリは恐らく、街はずれの離宮で暮らしている」


「離宮? あんなに大きな宮殿があるのに、あそこでは暮らさないんですか?」

「嫁いだとはいえ、シェリはまだ十一歳なんだ。王族の婚姻などそんなものかもしれないが、兄としては気にならないわけがない」

「十一歳? それで、異国に嫁がなきゃいけないなんて、王族は大変ですね」


「ああ。そして嫁いだ先でも、夫にはなかなか会えない。シェリが妻として相応しい年齢になるまでは離宮で暮らすことになっているらしい」

「そんな……」


 そんなの、寂しすぎる。


「王家に生まれたからには、仕方のないことだろうけどな」   


 憂いを帯びたディンの瞳から、どれほど妹のことを案じているのかが伝わってくる。


「よし、早く妹さんに会って驚かせましょう。わたしもなにか奏でます。それで少しでも喜んでもらえたら嬉しいです」

「そうだな」


 ディンがぽんとマリィナの頭に手を置いてうなずいた。

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