それぞれの役割
「……レルドナでは、すまなかったな」
しばらく、海と空と白い鳥を眺めながら波の音を聴いていると、ディンが唐突に切り出した。
「え、急にどうしたんですか?」
すまなかった、ってどれのことだろう? とマリィナは軽く首を傾げる。
急に旅に出ることになったのは高原での出来事だし、別に謝る必要なんてない。
レルドナでというと……。
「追われてたときのことですか?」
でもあれは、もうとっくに謝られた。
「ああ。それと、宿でのことも」
まだ気にしていたんだ、とマリィナは驚く。
「そんなの! 全然気にしてないですよ。旅をしてたらよくあることです、きっと」
「いや、あんなのはよくあることではないだろう」
「え、そうなんですか?」
リューやフィールが動じることなく対処するものだから、めずらしいことじゃないんだろうと思っていた。
もちろん怖いし痛かったけれど、でも結局大きな怪我などはしなかったし。
「そうだ。リューが慣れているのは、旅だからどうこうというわけではないしな。単純に職業柄だ」
「そういえば、騎士様なんですよね?」
「ああ。リューは強いぞ。おれも敵わない」
「それは、知ってます」
リューのなにがすごいって、強さももちろんだけれど、なにがあっても表情が揺らがないところとか、いつも冷静だったりするところとか。
それでいて優しいし、気を配ってくれたりもする。
ディンは、なにかを考えているようだった。
「……おまえは、おれも武器を手に闘うべきだと思うか?」
やがて、思いつめた声で、ディンが訊ねた。
マリィナが驚いて隣を見る。
海を見つめたままのディンの横顔は、どこか苦しそうに見える。
「わたしは……。ディンはディンにできることをすればいいと思います。剣士はリューさんがいるので、ディンがやらなくてもきっと大丈夫です」
レットが神官で、ルテアが薬師で、フィールが鍛冶師で自分が楽師。
そして、ディンは予言者。
それぞれがそれぞれにできることをやって、目的を達成する。
そのための旅を成り立たせる。
それができるのは、とても素敵なことだとマリィナは思うのだ。
自分に楽師としての役割が果たせるかどうかは、怪しいところだけれど。




