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侵入者の刃

 大きな音を立てて、ドアが吹っ飛ぶ。


 ドアの向こうで、なにかがつぶれるような変な声が聞こえた。


 外にいた何者かが、ドアと廊下の壁に挟まれたらしい。


 吹っ飛ばされたドアが跳ねかえってこちらに倒れてきたのを、ディンが受け止め、ちらりと階段のほうへ視線を向ける。


 今や足音を潜める必要などないと、どたばたと何人かが階段を駆け上がる音が聞こえてきた。


 ディンが、受け止めたドアを持ったまま、階段へ向けて駆けてゆく。


 ドアの壊れた入り口を通して廊下の様子を見ていたマリィナからは、ディンの姿が見えなくなる。


 が、階段のほうから、なにかが転げ落ちるような大きな音が聞こえてきたので、何人かが壊れたドアと一緒に階下へ落とされたらしいと察する。


 けれどまだ、激しい音が時折聞こえてくる。


 部屋には、マリィナとルテアだけが残された。


 ふたりは目を見合わせると、部屋にあった麻縄(洗濯物を干せるように張ってあったらしい)を手に、そっと廊下の壁に背を預けるようにして気を失っている男へと近寄った。


 意識を取り戻してしまう前に、拘束したほうがいいと思ったのだ。


 マリィナが手間取っていると、ルテアが代わってくれた。


彼女の方が、何倍も手際がよかった。


 二階の廊下には、他に人影はない。


 ディンは、階段の下へ行ってしまったようだ。


二階へ続く階段はひとつだけ。そちらにはディンがいるから大丈夫だろう。


 あとは部屋の窓――と思いいたって、ぎくっとして部屋の中を振り返る。


 が、部屋の中に人の姿はない。


 窓から飛び降りたフィールが、外にいる相手を片づけてくれたからかもしれない。


 ふたりそろって、ふぅと息を吐いて、強張った体から力を抜いた。


「ごめんなさい。こんなことになったのは、うちのせいだけん……」


 ルテアが、肩を落として謝罪する。


美人が落ち込むと、すごくすごく可哀相に見えて、なんとかして慰めなきゃという使命感が湧き上がる。


「そんなことないですよ。ディンが男の人たちから枯れウィネヴィーを掠めてきてるし、ルテアさんがここに来ても来なくても、どっちみち襲われてたんだと思います」


「でも……」


「早くレットさんが戻ってくるといいですね」


「ええ。でも、レットは頭でっかちで体力はないし、喧嘩もからっきしだけん……」


「レットさんと一緒のリューさんは、すごく強いんです。だから平気ですよ」


「……だといいけど」


「はい」


 そろそろ、ディンかフィールが戻って来ないかな。


 そんな風に考えて、マリィナが顔を上げた時、ルテアの背後に、キラリと光るものが見えた。


 続いてそれが、どこからか部屋に侵入してきた男が握っている短剣の刃だとわかる。


「いやあっ――――!!」


 マリィナの悲鳴が響き渡る。


 男の短剣が、ルテアへ向けて振り下ろされた。

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