ドアの外
「作戦としては、まあ妥当だな。で、おまえは戦力になるのか? それとも俺を使い倒すつもりなのか?」
「もちろん、おれも戦う」
「素手で?」
フィールが呆れたように言うと、ディンは少し腰が引けつつも「悪いか」と言い返した。
「それで切り抜けられる状況ならいいけどな。全く使う気はないのか?」
「ない」
「仲間の命がかかっていてもか?」
「それは……」
ふん、と鼻を鳴らして、フィールは携帯していた短剣をディンへ向かって投げた。
ディンはそれを嫌そうに受け止め、フィールへ非難の視線を投げつける。
「おれの言ったことを聞いてなかったのか?」
「迷うくらいなら、念の為に持ってろ。万が一使う決意をした時に、得物がないんじゃ話にならない」
「おれは使わないぞ」
「好きなようにしろ」
ちっとディンが舌打ちしながらも、短剣を腰のベルトに差した。
「マリィナ、それにルテア。壁際に避難してろ。ディンが全ての盾になる」
「もちろんそのつもりだ」
女ふたりに代わって、ディンが返事をする。
「おれは外から回り込んで、連中を片付けながらここに戻って来る。それまでもたせろよ」
「だからわかっていると言っている。ここは問題ない」
ディンにやや憤慨しながら言い返され、フィールは「はいはい」とそれをいなす。
「じゃあな。またあとで」
フィールは長剣を鞘に納めたままの状態で手に持つと、そのまま窓枠にもう片方の手をついて、ひょいと窓の外に姿を消してしまった。
「っっっ!!」
ルテアが驚きに目と口を大きく開いているけれど、マリィナはフィールが子どものころから身軽なことを知っているので、「大丈夫だよ」と、ルテアを安心させるように声をかける。
「ほ、本当に大丈夫なのか?」
しかしマリィナに訊ねたのは、ディンのほうだった。
「大丈夫です。木登りをして高い枝の上から飛び降りたり、屋根の上から木へ飛び移ったりは、子どものころからよくやってたから、怪我をしたりはしないと思います」
「……そうか。ならいいが」
ディンが安堵の息を吐く。
と、ミシ、とドアの外で、小さく階段の軋む音がしたような気がして、ディンの目を見る。
マリィナは、耳だけはいいのだ。
ディンも気づいたらしく、小さくうなずいてドアへと近づいてゆく。
それとすれ違うように、ルテアがマリィナの隣へやってきた。
三人そろって、息を詰める。
廊下の軋む音が、ドアのすぐ外で聞こえた瞬間、ディンがドアを外へ向かって勢いよく蹴破った。




