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深夜の来客

 ギィ、とベッドの軋む音と、微かな揺れに、マリィナがはっと浅い眠りから目覚める。


「マリィナ、起きろ」


 耳元で囁く声。


 驚いて声の主をみやると、開け放したままの窓から射し込む月光を受けた青紫の瞳がそこにあった。


「ディン!?」


 横になっているマリィナの頭の両側に手をついて、ディンが顔を覗き込んでいる。



「しっ」


 ディンがマリィナの唇に、人差し指を添えた。


 そのまま、ディンの動きが止まる。


 マリィナはどうすればいいものかわからず、そのままじっとディンの瞳を見上げる。


 至近距離で、視線がぶつかり合う。


 ディンの瞳の色は、やっぱりきれいだ。


 ずっと見ていたいと思う。


 けれど、この距離は近すぎて、どきどきしてしまう。


 初対面では特徴のない顔立ちだと思ったけれど、すっと整った眉とか、大きすぎないきれいな二重の瞼

とか、主張しすぎていない形のいい鼻と唇が、バランスよく小さな顔におさまっていることに気づく。


 ばくばくばく、と。

 自分の鼓動が、聞こえるような気がする。


「……ディン?」


 心臓のどきどきに耐えかねて、マリィナはディンの指先が触れたままの唇をそっと動かした。


「っ! 悪い」


 ディンがはっとしたように、マリィナから体を離す。


 ベッドから素早く下りたディンは、動揺を隠すように、服のボタンを触っている。


「い、いえ。ずっと、リューさんとレットさんのことが心配で寝られなかったんです。少し、うとうとしていただけなので。それより、こんな時間にどうしたんですか?」


 マリィナはまだばくばくしている心臓をなだめるように深呼吸をしてから、声をひそめて訊ねる。


 まだ夜明けまでは時間があるはずだ。


「ああ、どうやら客人らしい。今、フィールが探りに行っている。すぐに動けるか?」 


「はい。大丈夫です」


 客人? と訝しく思いながらも、マリィナは上半身を起こす。


「よし。フィールが戻って来るまで、待機だ。支度があれば、急いですませてくれ」


 マリィナはうなずくと、ベッドの下に置いてある靴に手を伸ばした。

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