ネールディアの
ララシア山脈に国境があり、マリィナたちの住んでいた高原はグラトリアス領だが、その先にある最高峰デラ・ララシアを越えればネールディア領に入る。
けれどデラ・ララシアは人が越えるには険しすぎる為、国境を越える人はデラ・ララシアのやや南にある街道を利用することが多い。
「そうだ。リューがなんと説明したのかは知らないが、グラトリアスの第八王子だとは言っていないはずだ」
「どうなんだ、マリィナ」
ええっと……とマリィナは記憶を遡る。
すっかり王子といえばグラトリアスの王子だと思っていた。
「確か、リューさんは『我が国の』って言ってた。それを聞いて、ああ、うちの国の王子様なんだって思ったんだけど……。ネールディア国民のリューさんにとっては、我が国っていうのはネールディアのことだもんね」
「なるほどな」
事の顛末に、ディンは漸く得心がいったようにうなずいた。
そんなディンの前で、フィールが顔を手で覆う。
「ご、ごめんね、フィール。わたしの勘違いのせいで」
「……もういいよ」
はあー、と長いため息を吐いてから、フィールがディンに「すまなかった」と詫びる。
「被雇用者の始末は雇い主の始末でもある。おまえが気にする必要はない」
そんなふたりのやりとりを見て、マリィナはようやく安堵した。
フィールたちへの疑いは晴れたわけだから、フィールがマリィナを連れて帰るという案は消滅したはずだ。
このまま、これからはフィールも一緒に旅ができるんだと思うと、心強さを感じた。
「よおし、じゃあ、景気づけに一曲、弾きますね」
椅子に座り直して、リアラを構えたマリィナは、これからの旅に対する期待を乗せて弦を弾いた。




