助っ人
ところが、次の瞬間、ディンに斬りかかった男の体が宙を舞っていた。
そのまま、逆さまに背中から壁にぶつかり、白目を向いて気を失う。
マリィナは瞬きを繰り返した。
一瞬のことで、なにが起きたのかわからなかったものの、ディンは無事で、襲いかかった男がやられたということはわかる。
「野郎!」
残りのふたりが、逆上してディンに飛び掛かってゆく。
今度は、ディンも動いた。
すっと横に体をずらし、最初のひとりの足を引っ掛けて転ばせ、続く男の、短剣を突き出した腕を絡め取ると、転んでいる男の上にひょいと投げ飛ばした。
ぐへぇっ、というひしゃげた声がして、ふたりが目を回す。
「すごい……」
あっという間に、三人をのしてしまった。
「行くぞマリィナ」
「は――」
はい、と答えようとしたマリィナの首が、突然ぐいと絞め上げられた。
いつの間にか、男たちの仲間が道の反対から回り込んでいたらしい。
いやあっ!!
じたばたと暴れると、更に首を絞める腕の力が強まる。
苦しい――っ。
「大人しくしろ」
耳元で、聞いたことのない低い声がする。生温かい息が耳にかかって、気持ち悪い。
ずっと抱えていたリアラが、手から落ちる。
「マリィナ!」
ディンが名前を呼ぶけれど、マリィナは返事ができない。
「派手にやってくれたじゃねえか。このちんちくりんは詫び代にいただいてくぜ」
「待て! っくそっ!」
苦しくて涙の滲む視界に、羽交い絞めにされるディンの影が見える。
放せっ、と叫ぶディンの声。
「来い」
男が首を絞める腕を緩めた瞬間、肺に空気が流れ込んでむせる。その隙に、腕を後ろ手につかまれる。
「放してっ!」
咳き込みながらも、できる限りの抵抗をする。
「騒ぐな」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ! 助けて! リューさん、レルトさん!」
精一杯の大声を上げる。このまま連れて行かれてしまったら、どうなるかわからない。
もう二度と、ディンたちに会えなくなるかもしれない。
「黙れっつってんだろうが――」
男が空いているほうの手を振り上げる気配がした。
殴られるっ――。
マリィナは反射的にぎゅっと目を閉じる。
びゅん、と風を切る音が、頭のすぐ上で聞こえた。
――けれど、衝撃はない。
「なんで俺の名前を呼ばないんだよ、おまえは」
聞き慣れた声が、呆れたように言う。
マリィナは、信じられない思いで、目を開けた。
灰色の髪に、焼けた鉄色の瞳。
そこには、小さなころから見慣れた、幼なじみが立っていた。




