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口封じ

 一本通りが異なるだけで、がらりと雰囲気が変わる。


 折悪く日が沈んでしまったらしく、今はまだ僅かに残っている明るさも、すぐに消えてしまうだろう。


 細い脇道を少しばかり進んだところで、ディンはようやく足を止めた。


「あとをつけまわして、いったいなんの用だ」 


 振り返ったところには、外套のフードを深くかぶった男がひとり立っていた。

 ディンがマリィナを自分の背に隠すようにして、一歩前に出る。


「おまえは何者だ」 


 ディンの問いには答えず、くぐもった声で誰何する男の後ろに、仲間と思しき男がふたり現れた。


 けれどディンに動じる様子はない。


「おれは予言者だ」


 いつものように、不機嫌そうな声で答える。


「なにをしにこの街へ来た?」

「旅の途中、立ち寄っただけのことだ。明日には発つ」


「ならば何故、女を追った」

「女……?」


 ディンがとぼける。

 女というのは、たぶんレルトが追っていった人のことだ。


「女を追ったつもりはなかったが。おれは突然走り出した仲間を追っただけだ」

「そんな理屈が通るとでも?」


「事実だからな」


 男がちっと舌打ちをするのが聞こえた。


「痛い目をみないとわからねえようだな」


 ふんっ、と挑発するようにディンが鼻で笑うのを見て、相手が腰に差していた短剣を抜いた。


 うっ、とディンが低く呻く声が聞こえた。


「ディン? 大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫だ。危ないからマリィナは下がっていろ」


 斜め後ろから見えるディンの片頬が、少し引きつっているように見えるのは気のせいだろうか。


 不安に思いながらも、ディンから距離をとる。


 短剣を持った男が勢い余ってこちらに突っ込んできても、巻き込まれたりしないように。


「丸腰の相手に向かって刃物を取り出すとは、随分と買いかぶられたものだな」

「本当に丸腰かどうかなんてわかんねえからな」


「殺せばなにも聞き出せなくなるぞ?」

「口を封じられれば問題ねえ!」


 言うなり、男が地を蹴り、ディン目がけて斬りかかる。

 ディンは立ち尽くしたままで、避ける気配がない。


「ディンッ!!」


 刺されるっ!


 思わずマリィナは悲鳴を上げた。

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