表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵少女シマモモコ  作者: 雨宮ヤスミ
[六]暴走の炎
PR
11/46

6-1

「あたしみたいに、一暴れしたいとか、そういうのがあればいいけどねえ……」

 

 

 見慣れない街並みでも、このむき出しの灰色は変わらない。そのせいか、どんな場所に来ようとも、どんな街に来ようとも、同じにしか思えない。


「……そう、漆間アキナは使えそうなのね」


 見知らぬ街の「インガの裏側」、その片隅で立花オリエは琥珀にそう語りかける。通信の「インガ」を封じた琥珀だ。彼女が「計画」のために苦心して作り上げた、「エクサラント」を介さない連絡手段だ。


 通信相手からの返答を受けて、オリエは笑った。静寂の「インガの裏側」に哄笑が響く。


「そう、そんなことを言うのね。面白い子だわ……」


 報告によれば、「最初の改変」の理由は探り出せなかったようだが、どうやらパサラはかなり強引な手を使ったらしいことは分かる。そういう手合いは引き込みやすい。


「それであなたは、成田トウコも引き込みたい、と?」

「あれはちょーっと、無理じゃないかにー……」


 傍で聞いていた山吹シイナがそうつぶやく。


「シイナの言う通りね、彼女は今に満足しているわ。あなたの個人的な感情はさて置いて、ね」


 琥珀の向こうの通信相手は、少し悲しげな口調で応じた。


「あたしみたいに、一暴れしたいとか、そういうのがあればいいけどねえ……」

「動機が不純でも歓迎するわ。仲間は多い方がいいのだから」


 にっこりと、オリエはシイナに微笑みかける。その笑顔が怖いんだけどねー、とシイナは舌を出した。


「……なあに? ええ、大丈夫、こちらは順調よ」


 応じて、オリエは左手に持った「輪」を握りしめる。それは、彼女が背中に負っている琥珀のついた「インガの輪」をそのまま小さくしたものであった。


「四〇個目の『インガの輪』、回収できたわ」


 オリエとシイナは、足元に横たわるものを見下ろす。目を見開き、体を投げ出すようにして倒れた、同年代の少女――「ディストキーパー」の姿を。この地域の「アンバー」、「インガの輪」を奪うため手にかけた彼女の骸を。


「理論上は、あと三十ほど。計画のためにも、お互い死ねないわね」


 サヤちゃん。

 そう呼びかけられて、琥珀の向こう側から彼女は「ですね」と応じた。


「漆間アキナと成田トウコのこと、頼んだわよ。パサラにはあなたを教育係として推薦しておくから」


 通信を終え、オリエは灰色の空を見上げる。さて、この死体を「ディスト」にやられたように「インガの改変」をしておかないと。そう思い、オリエは自嘲気味な笑みを浮かべる。


 人間をなめるな、ねえ。

 何も知らないというのは、滑稽なものね。オリエ足元に目を落とす。この骸も、今のままでも「ディスト」にやられたという事実は変わらないと言うのに。


 だってわたし達はもう人などではないのだから。


 「ディストキーパー」の遺骸は、端から「インガクズ」となり崩れて消えた。頭上には昼も夜もない、狂った空が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ