帰宅
俺の家は学校からまあまあ離れている。
連れ込む……って言ったら聞こえが悪いけど、知り合いを呼ぶ事はほとんど無い。ましてや女子は皆無だ。
「ついたぞ」
「ここが?」
俺の家は母と妹と三人暮らしの二階建て一軒家。もう外は暗くなってるのに電気が点いていないと言う事は、2人は出かけてるんだろう。
「大きい……」
「まあ、とりあえず入れよ」
鍵を回してドアを開ける。狭いし汚いとか言ってたが、あれは謙遜だ。何LDKか知らないけど普通の家よりはだいぶ広い。
「おじゃまします」
靴を脱ぎ廊下の電気をつけると、ルアも玄関から後をついて来る。
向って右側がリビングとダイニング、階段を上がると俺の部屋と、妹のまひるの部屋がある。
「じゃあー……、どうする」
どうしよう。ルアを見ても、あっちも俺の指示を窺ってる。どうすればいいかわからない。「とりあえずくつろいでくれ」とか言っても無理っぽいし。女子とお泊り会みたいな経験は俺には無いぞ。
「そういえばお前、ここで泊るにしても服とか持ってないんだろ? 寝間着とかはまひるの借りるとして……」
うむむ……、自然と目が細くなる。下着とかは共用出来ないだろ。
ルアは立ったまま考えている俺の様子を見ると、自らの手の内を披瀝するように自然に提案した。
「お金だったら大丈夫よ。金属原子さえあれば合成術式を使って、この国の流通硬貨と同じ形に錬成できるし……」
「いやいやいやそれはマズいだろ。イロイロ的に。なんかちょっと惹かれる物はあるけど、やっちゃいけない感が凄いするぞ。お前は金の事とか心配しなくていいから、普通の生活をしててくれ」
「……わかった」
ルアがしおらしく頷く。
うん、まあ廊下で客を立たせとくのマズいし、こんな所で立ち話もなんだからリビングの方に向おう。
リビングの方へ行き部屋の電気を点けてやる。
母さん達はまだ帰って来ないらしいな。2人で買い物だろうか。帰りは遅くなりそうだな。
「あールア、お前昨日野宿したんだろ? とりあえず、風呂入って来いよ」
「おふろ? あ、あれね! 知ってるわ、体を洗う習慣ね?」
「そうそう。概念だけでも知っててくれてうれしいよ」
俺は廊下の突き当たりの浴室の扉を開けて電気をつけ、ルアを案内してやった。
「ここがお風呂ね?」
「そう」
俺は脱衣所にルアを残したまま「風呂自動」のボタンを押す。「お湯張りをします」の音声とともに浴槽にお湯が注がれる。
「来いよ。説明する。えーっと、こっちが蛇口で、それをこっちに捻るとシャワーだから。温度はここで調節して。あ、シャンプーとか好きに使っていいから」
ルアを浴室の中に呼び寄せて使い方を解説してやる。ルアはうんうんと興味深そうに頷いた。
「で、脱いだ服はこの洗い物カゴに入れてくれ。それからーー」
ルアがシャワーの所を捻った。
その瞬間上の方に掛けられていたシャワーのノズルから冷水が、屈み込んでいたルアの上から降りそそいだ。
「きゃっ!」
驚いたルアは立ち上がり足を滑らせると、お湯の半分溜まっていた湯船の中に突っ込んでいた。
ぼちゃん。
「あー……」
ごめん、目尻を親指で押さえてベタなポーズで溜め息つかせてもらう。
はぁ……。