表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/58

部活動

 よっしゃー終わったー!

 ついに教科書もノートもなしで6時間のりきったぞ。これであとは部活やって帰れる。


 帰りのホームルームが終わって鞄を持つと、うしろから女子に声をかけられた。

「レイジくんっ、行こう」

「あぁ、女子Dか……」

「なぁにそれ。わたしモブキャラじゃなくてメインヒロインだと思うんだけど」

 御剣みつるぎ言葉ことはが「むぅ」と不本意そうな顔をする。

 言葉ことはは俺とは同じ部活動の仲間だ。染めてるわけじゃないのに茶色い髪に、肩にかからないくらいのセミロングが似合っている。こいつは元々見た目とは裏腹に、相当痛い中二病患者なので、変な評価を貰った後のルアにも熱心に絡んで来たのもこいつだ。


「……」

「……今、来栖さんの方がヒロインっぽいって思ったでしょ」

「ごめん、心底どうでもいいわ」


 そういえばルアはどうするんだろう。俺が家に帰るまで見張っているつもりなのか?

 と思っていると噂をすればルアが、俺の真後ろに立っていた。

「うわっ」

 なんで真後ろに。

「あ、来栖さん。もう帰るの?」

「いいえ。私は龍ヶ崎くんを監視していなきゃいけないので、彼についていくんです」

「へぇ……」

 言葉ことはが変な目で俺の事を見る。いや待て、変な事言ったのはこいつの方だぞ?

「来栖さんの家って近くなの?」

「はい。龍ヶ崎くんの家の方です」

「そっか。じゃあ、わたし達と一緒の部活に入ろうよ! いいでしょレイジくん?」

 俺?

「えっ? あ、まあ、いいけど……」


 成り行きにより、ルアが新入部員になった。

 別にたいした活動はしていないけど、陸上部の10倍くらい人気の高いサークルなせいで、毎年入部者数が増えて大変なんだ。

「部活って、なにをする部活なの?」

 成り行きに流されながら、俺の後をついてくるルアが聞いてきた。

「いや、正確には部活じゃなくて同好会なんだけどな。特になんもしないよ」

 他の部員と待ち合わせる為に一階の階段前に来ると、すでに部員の男子全員(2人)が集まっていた。

 西園侘充(たくみ)と、朽木柊真(しゅうま)

 そう、帰宅部である。


「えっ、来栖さん……?」

 驚く柊真に、言葉ことはが得意げに言う。

「来栖さんは今日から帰宅部の新入部員になるんだよ」

「よろしくお願いします」

 状況を把握しないまま、取り敢えずルアは男二人に頭を下げる。「マジかよ。頼んでよかった」と侘充たくみが俺を肘で小突いた。


「じゃあ部員紹介。この背の高い方が西園にしぞの侘充たくみな。前の学校祭の時、幼女に赤ちゃん言葉で」むぐっ

「おい怜士くん? 一回黙ろうか?」

 せっかく面白い話が出来そうだったが、侘充にすごいスピードで口を塞がれてしまった。

 それを横目に、背の低い方が話し出す。

「僕は朽木柊真です。来栖さん、よろしくね」

 俺に酷い紹介をされる前に逃げたな。

 柊真は俺と見た目が似ている奴だ。うしろから見たら兄弟に見えるらしい。(もちろん俺が兄で)

「わたしは御剣みつるぎ言葉ことはだよ。あらためて、よろしくねっ」

「みなさん宜しくお願いします」

 ルアが改めてお辞儀した。


「じゃあ行くか」

 と俺は西園を振りほどいて、生徒玄関へ歩き出そうとしたとき、突然チャイムが鳴り、めんどくさそうなオッサンの声で校内放送が流れた。


『(ピンポンパンポーン)ーーえー、一年四組、さいおんじ君。お姉さんがお呼びです。一階職員玄関まで来て下さい』


「まじかー」

 西園が苦い顔をする。

「あー悪い、俺呼び出された。先帰ってて」

「は? なんでお前なんだよ。お前ニシゾノだろ? いつから西園寺さいおんじになったんだよ。〝寺〟はどうした」

 俺がツッコむと、西園は苦笑する。

「ニシゾノはお前が勝手につけたアダ名だろ? 忘れたのかよ。西園寺侘充が読めなくてさ、最初、「西園ジワビジュウ」って……」

 あー、そうだった。

「忘れてた。本名ジワビジュウだったな……」

「ちげーよ。もういいよ西園で。……じゃあ俺、迎えが来てるから行ってくる」

 何かあるの? と柊真が西園に聞く。

「ちょっと、バイクの教習の関係で……。わざわざ放送で呼び出すなよって思うけどな」

「バイクの免許とってるの?」

「ああ」

「呼び出されたの職員玄関だし、生徒玄関と近いから、途中まで一緒に行こうよ」

 という柊真の提案により、俺達は職員玄関へ向った。ルアはただついてくる。


 職員専用玄関につくと。ガラス張りの扉の向こうに、背の高い女の人が立っていた。

 長い黒髪を下し、凛とした立ち姿で腕時計を見ている。着ている制服は聡くない俺でも分かる、名門女子校のものだ。高校3年生くらいだろうか。

「あの人がお前のお姉さん?」

「ああ」

 俺が聞くと、西園が頷く。

「よお、姉貴」

 西園が玄関口で呼ぶと、振り向いたお姉さんが微笑み、外側から扉を開けた。

「遅いぞ。あまり姉を待たせるな」

「悪い」

 お姉さんは俺や柊真や言葉ことはの方を見ると、侘充に聞いた。

「お友達か?」

 こんにちは、と俺達は口々に挨拶をする。侘充が俺を紹介した。


「ふぅん、君がレイジくんか。みんなも、侘充からよく話を聞いているよ。いつも愚弟がお世話になっているようで申し訳ないね。私はこいつの姉の、西園寺さいおんじみそぎだ。よろしくね」

 みそぎさんが俺達に向って微笑む。その所作や言葉遣いのいちいちが、かっこいいと思った。立ち振る舞いが堂々としていて洗練されている。侘充たくみによく似た凛々しい目鼻立ちや形のいい眉、背の高さなど、全てが女性としていい方へ作用しているようだった。


「そちらは……?」

 禊さんがルアに目を向け、侘充が紹介した。

「そっちは来栖真希菜さん。今日知り合ったんだ」

 ルアがよろしくお願いします、と挨拶をする。なんか、二人とも、少し相手を見る目が厳しい。と思ったらやっぱり、禊さんとルア、外見のキャラが被っていた。どっちも黒髪ロングで高身長美人だからか、なんかライバル視のような視線が交差したように感じた。たぶん邪眼で見たら火花散ってただろう。


「そうか。部活動、邪魔して悪かったね。これからもよろしく頼むよ」

「じゃあな。また明日」

 西園姉弟が帰っていく。

 俺達四人は普通に生徒玄関から帰った。                                                                         

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ