二枚目――「ここは、何処?」
「AliceはAliceだヨネ。……僕がそう呼んだから。」
永遠にも思える暗闇の後…ライは、何処か見知らぬ場所にいた。
周りの家はレンガが積み重なって出来ていた。
地面も…ちゃんと舗装されている。
「やっとキテくれたね、Alice。」
ライがそちらを見ると…例の男が立っていた。
ニヤリと嗤ったまま、服についている布で頭を覆っている。
「お前…!お、俺を何処に連れてきた!?と言うかお前の服はなんだ!?そんな服、見たこともないぞ!」
「おやおや怖い怖い…ここはスゥラー。僕の服はパーカーっていう最先端のフクなのさ。」
ニヤニヤ…と相手は嗤っている。
「ああ、自己紹介だ。僕はChesha。Aliceをサガしてたのさ。」
Cheshaと名乗った男は、ただにこやかに嗤っている。
「Alice、Aliceって…俺はちゃんと名前が…」
「NONO…それは駄目だよAlice。ここではホントウの名前は名乗っちゃいけない。」
いつの間にか近くにいたCheshaは、ニコニコと言葉を遮った。
「…で……なんで俺をここに?」
ライはやや諦めつつ聞いた。
Cheshaは…意外と快く教えてくれた。
「簡単。Alice…キミはここで追手達から逃げるのさ。」
「追手?なんで俺を捕まえるんだ?」
言いながら…ライは自分の体を見回す。
服がいつの間にか変わっていた。
そう…建物の外観とあっているような、服に。
Cheshaは小さく嗤って言う。
「彼等…彼女等ダね。ほら…君のお仲間だね、あれハ。」
彼が指差した先…そこには、同じ様な格好の少年と男がいた。
二人は何かから逃げており、二人の目の前を走り去った。
Cheshaがライを抱え、近くの植え込みに隠れる。
「何処だい~?アタシの可愛い食材は?」
ドスドス…とした足音とは裏腹の、細身の影が走り去った。
「あ、あれは……」
ライが、やや震えつつ聞いた。
Cheshaが楽しそうに言う。
「あレハ“Eat-big-madam”だね。捕まったら食べられるよ。」
「食べられるって……何なんだよ、これは!」
ライがやや怒りながら言うと…Cheshaは言った。
「Aliceゲーム。このゲームのナマエさ。……ルールも簡単に説明するよ。」
言いながら、Cheshaは紙を渡してきた。
それによると…
『Aliceと呼ばれ、返事した者は男女問わずゲーム参加しなければならない』
『Alice一人に付き一人はCheshaが同行しなければならない』
『AliceはSleepy-mouseやHeart-of-queen等から逃げなければならない』
『Aliceを捕まえた追跡者達は以下に記す事以外のほぼ全てを行って良い』
『・卑猥な要求
・窃盗、殺人の依頼
・追跡者がAliceに殺される事を望む事
・下品な行為
・他のAliceをとらえさせる行為
・他の追跡者及び、他のAliceへの妨害行為の依頼』
『Alice達は以下の事を行ってはならない』
『・追跡者への反抗
・追跡者達を殺害する事
・Alice同士で共闘する事
・Cheshaを置いて遠くへと行く事』
『言いつけを守らなかった場合、その場で処刑する』
ライはやや青ざめつつ、Cheshaに紙を返した。
Cheshaは受け取りながら…聞いた。
意地悪そうに。
「参加するカイ?」
「参加しないと…戻れない、だろ……。」
茫然とした様に呟くライを満足げに見るChesha。
彼の眼は、愉快そうに笑っていた。
黄色と、緑の目で。
Enemy data
『名:Eat-big-madam
通称:マダム
Aliceを捕えた場合:食す。
Cheshaを捕えた場合:食す。
武器:自らの口。強靭なあごの力の前では骨も柔らかい。』