偽りだった愛のおはなし。
読む前に連載の『僕のとなりのヤンデレちゃん』をよんだほうが良いかもしれません。
非凡の隙間に在った、束の間の幸せ。
僕と彼女の小さな物語。
歪んだ恋心。
精一杯の愛情表現。
「ねえねえ、西川くん。」
「なに、青菜さん。」
「私のこと、すき?」
唐突に質問された内容に、僕はすぐに答えを口に出せなかった。
確かに青菜さんは綺麗だし、可愛いなとも思う。
でも、それとこれとは対じゃない。
だって青菜さんは、僕の大事な人を傷つけた張本人だし。
そんな人を好きになるほど、僕はお人好しじゃない。
「そんなこと聞いてどうするの?」
「だってだってー、」
眉を下げて、何時もと何だかおかしい。
てっきり、好きって言ってほしいからー!とか言うのかと思った。笑顔で。
でも、次に吐かれた言葉に僕はもっと驚いた。
「西川くん、私のこと嫌いだから。」
「・・・え?」
「私、ちゃんとわかってるよ。」
「青菜さ、」
「大事な人もたくさん傷つけた。」
「ちょっと、」
「でも!」
青菜さんは、今にでも泣き出しそうな顔で言った。
「わたしには、こうやってつたえることしか、できない、から。」
つたない日本語。
容姿に反して幼すぎる物言い。
ああ、彼女にはこれが精一杯なんだな。
泣き出した彼女を無表情で見つめて、僕はそんなことを思った。
僕はそっと、青菜さんの頭に手をおいた。
そして、ゆっくりゆっくり撫でる。
「・・・っ、にしかわ、くん?」
「青菜さん。」
あ。
「安心して。大丈夫だから。」
僕今、ちゃんと笑えてる気がする。
「青菜さんのこと、嫌いなんかじゃないから。」
ダカラ、アンシンシテ。
スキダヨ。
そんな、愛の言葉を並べた気がする。
でも、さっきより今は、青菜さんのことを好きだと思うから。
こんな歪んでる愛でも欲してくれているならば。
たくさんたくさん、満たしてあげようと思った。
人はこれを、偽善と言うかもしれない。
そう、此れは僕が彼女に差し伸べた、偽善以外の何者でもない行為。
「・・・だいすき。」
ぎゅっと僕の腰に抱きついてくる青菜さんに僕も手を伸ばして、
「僕も、好き。」
彼女への救済を口から溢した。