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第22話 封じる者と議事録

 商会の倉庫の前で馬車が軋むような音を立てて止まると、客室の扉が静かに押し開かれた。中から現れたのは、全身を黒いローブで包み、深く被ったフードで顔を影に沈めた人物だった。背格好からして、女のようだった。


 その女は倉庫には目もくれず、周囲を一度だけ素早く見回すと、隣接する建物の脇にある狭い階段へ向かった。階段は地中へと吸い込まれるように続いており、灯りの少ない地下へ降りていくたびに、静かになる。


 階段の最下段に辿り着くと、黒塗りの重厚な扉がある。女は皮手袋に包まれた手をドアノブに伸ばし、静かに開いた。扉の向こうは、落ち着いた雰囲気のバーだった。一枚板のカウンターの向こうには白髪に蒼い瞳をした男が立っている。


 男はローブの女を見ると、ニコリと笑顔をつくり、無言で頭を下げた。女は頭にフードを被ったまま会釈を返し、店の奥へと向かう。突き当りの黒壁がスッと動き、女を迎え入れるように空間が現れた。


 中では豊かな黒髪を持つ闇ギルドの幹部、サシャが待ち受けるように革張りのソファに座っていた。


 女はサシャの対面に座り、静かにフードを外す。連動するように黒壁が閉まった。


 ローブの女はイムリス王国第一王女、セレーネだった。随分と急いで出掛けてきたようで、髪が乱れている。


「急にお呼び立てして申し訳ございません」

「いいえ、気にしないで。私からの依頼だもの。当然よ。早速だけど、調査結果を教えてもらえる?」


 セレーネは王族とは思えない気さくさを見せる。サシャは恐縮しながらも、予め用意していた報告書を丸テーブルの上に置いた。報告書は何度も読み直されたようで、軽くよれている。


 セレーネは焦りを押さえるようにゆっくりと皮手袋に包まれた手を伸ばし、報告書を手に取り、じっくりと読み始めた。


「これは……本当なの……?」

「信用出来る者からの報告です。私も実際に【邪神の器】を見ました。もしご不安ならば、カーディナル伯爵領を中心に活動するAランクギルド『鋼の牙』から裏どりをすればよろしいかと」

「そうね……」


 セレーネは顎に手を当てて考え込む。しばし、時が流れた。


「セレーネ様は邪なる者を封印できるような人物を知っておられますか?」


 沈黙を恐れたのか、サシャが問いかける。セレーネは薄く瞼を閉じると、「一人、思い当たる人物はいる」と呟いた。


「今回調査をした者が【邪神の器】の扱いについて困っております。セレーネ様としても【邪神の器】が帝国に渡るのは避けたいはず」

「……少し考えさせて……。また、連絡するわ」


 セレーネは眉を寄せたまま、頭にフードを被りなおす。


「報酬はこの後、使いの者に持たせるわ」

「ありがとうございます」


 サシャがニッコリとほほ笑む。セレーネは静かに立ち上がり、「青い目」の隠し部屋を後にした。



#



【第五十回 冒険者ギルド案内所 情報交換会 議事録】


案内所職員1

⇒各ギルドからの求人状況について報告をお願いします。


案内所職員2

⇒相変わらず、「天空の盾」は採用意欲が高いですね。最近は力さえあれば素行に問題があるような若者でも採用しています。


案内所職員3

⇒Sランクギルドがそれでいいのか?


案内所職員4

⇒内部の研修で矯正するのであろう。問題ない。


案内所職員5

⇒天空の盾は拡大路線だからな。王国最大のギルドの地位を揺るがぬものにしたいのだろう。


案内所職員6

⇒少し前、天空の盾からクレームが来ていましたよ。ウォルトという若い男が自分のジョブを偽って採用試験を受けに来たと。


案内所職員7

⇒詳しく頼む。


案内所職員8

⇒ウォルトという男は自分のジョブを【剣士】と申告して、天空の盾の面接に望んだらしい。結果は見送り。


案内所職員9

⇒それで?


案内所職員10

⇒後日、逆恨みしたウォルトが天空の盾の依頼の邪魔をしたそうだ。その時のスキルから判断すると、ウォルトのジョブは【狂戦士】だったと。


案内所職員11

⇒カリア教が発行した履歴書を改竄するとは……。神をも恐れぬやつだな。


案内所職員12

⇒天空の盾から、各ギルドに注意喚起の知らせが出ていたぞ。ウォルトを採用しないように、と。


案内所職員13

⇒ウォルト、終了のお知らせ。


案内所職員14

⇒次の話題はギルド無所属の優秀な若者についてだ。昨今の人手不足を考えると、ギルド無所属の若者は非常に重要な存在だ。目ぼしい人材は有力ギルドに紹介して、紹介料を貰わなければならない。


案内所職員15

⇒王都周辺の目ぼしい人材はすでにギルドに所属しているなぁ。


案内所職員16

⇒地方からの情報はどうだ?


案内所職員17

⇒カーディナル伯爵領を中心に活動する「鋼の牙」から、凄腕の【薬草師】の話が上がっていたぞ。


案内所職員18

⇒ほう、珍しい。


案内所職員19

⇒非常に効き目の高い薬を作成できるそうだ。


案内所職員20

⇒その【薬草師】の名前は?


案内所職員21

⇒「ウォルト」と報告が上がっている。


案内所職員22

⇒ふはは。同じウォルトでも、【狂戦士】の方とは大違いだな。


案内所職員23

⇒【薬草師】ウォルトか。メモしておこう。

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