第二十四話 姉のウォチパで配信がバズった
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俺は姉さんに配信環境を整えてもらった。
「本当に、何から何まで至れり尽くせりだな……」
必要な機材を運び込んできて、率先してセッティングをしようとしたけどできないから俺に投げてきて。
結局俺が作業している間にも、あれやこれやと楽しそうに話しかけてきて。
「あれ? よく考えたら機材をもらった以外は俺が働いていた気がするな……?」
姉さんは本当に、嵐のような勢いだった。
「なんにせよ……ニノンの配信でウォッチパーティーしてもらえるってのも、ありがたい話だ」
俺のゲーマーとしての強さを、自分の配信だけでなく、ニノンという数字を持ったVTuberの配信で宣伝してもらえる。
ハッキリ言って、これはチャンスだ。
だけど、そのチャンスを生かすための大前提として。
「まずは俺が、大会で実力を示さないとな」
姉さんに背中を押してもらって、俺は一段と気合いが入った。
それから俺はチームメイトと練習を繰り返しつつ、テスト配信を何度か行い。
準備万端で迎えた大会の予選当日。
試合開始前の待機時間中、俺はボイスチャットでチームメイトと会話していた。
『ふふ。いよいよだね』
凛乃が本番前に、高揚した笑い声をこぼす。
「少し緊張してきたな……」
いつもより、心拍数が上がっている感覚がある。
『葵が緊張するなんて珍しいな。本番に弱いタイプだとは思っていなかったけど……あ、そうか』
「なんだよ?」
納得した様子の凛乃に、俺が問いかけると。
『お姉さんに見られるから、緊張しているんだね』
「……もしかしたら、そうかもしれない」
今日は二ノンが俺の配信をウォッチパーティーすることになっている。
試合開始前だから俺の配信は点けていない。
つまりまだ、他の誰かに見られているわけではない。
だが、それは重要じゃない。
これだけ姉さんに……ニノンにバックアップしてもらった以上は失敗したくないという気持ちが強い。
ニノンは数日前から「弟くんが「Predators」の大会に出るからウォッチパーティーするよ!」と大々的に告知していた。
ニノンのファンの注目が集まっている。
そんな中で、俺がもしレベルの低いパフォーマンスを見せてしまったら。
ニノンの……推しの配信を、台無しにしてしまうかもしれない。
『葵なら、いつも通りやれば大丈夫』
嫌な思考に陥りかけていたその時、瑠衣花が声を掛けてくれた。
淡々としているようで、どこか優しい声色。
瑠衣花はこういう時、いつも俺をさりげなく励ましてくれる。
「そう、だな……いつも通り、やるしかないよな」
考えても仕方ないことは、考えるな。
『ん、頑張ろう』
瑠衣花もいつもより気合いが入っているのが伝わってくる。
「よし……そろそろ俺の配信を点けるぞ」
『それにしても驚いたな、葵のお姉さんが人気VTtuberだったとは』
配信をするにあたってチームメイトの二人にも事情を説明してある。
ウォッチパーティーをしてくれる二ノンの正体についても、凛乃に打ち明けていた。
当然、姉さんの許可は得ている。
「悪いな、俺の都合に巻き込んで配信に乗る形になって」
『有名な人が手伝ってくれるならチャンスだろ? 弟くんを差し置いて、ワタシの人気が出るかもな』
凛乃は軽口を言う余裕があった。
その時、大会運営者からのチャットでゲーム内のロビーに集合するよう連絡があった。
「じゃあ二人とも。いつも通り、最強のプレイを頼む」
『任せろ!』
『うん』
そうして俺たちは「Predators」の大会予選に臨んだ。
結果。
俺たちのチームは、一位で予選を通過した。
『お疲れー! いやー、爽快だったな』
『ん、絶好調』
「大勝だったな。二人のおかげだよ」
大会終了後、俺たちのボイスチャットは明るかった。
まだ予選ながらも圧倒的な強さだったと、自画自賛できる。
獲得ポイントは二位の倍だった。
『謙遜だなー。キルもダメージも葵が全参加者で一位だった癖に』
『今日のMVPは、葵』
凛乃と瑠衣花は手放しで俺を賞賛してくれた。
「……ありがとう」
ここは素直に受け取っておこう。
「そう言えば、配信の方はどうなってるかな……」
大会の配信には、ゴースティングなどによって競技に影響が出ることを防ぐため、十分間の遅延を設けている。
見ると、ちょうど最後の試合で俺たちがチャンピオンを獲得したところだった。
コメント欄が盛り上がっている。
まだ数回しか配信していない素人としては、賑わっている方だろう。
『おお、盛り上がってるね……やっぱニノンさんの影響なのかな』
『きっと、葵が強かったから』
二人も俺の配信を気になって覗いていた。
「姉さんには感謝だな……」
コメント欄の中には、ニノンの配信で使われるスタンプも多く流れている。
ニノンの配信も開いてみよう。
『わーわー! 弟くん強すぎる! 見てみてみんな、これ私の弟くんなんだよー』
姉さんが騒がしくも俺のことを褒め称えて自慢してくれていた。
コメント欄も肯定的な反応だ。
(なんだか、ほっこりするな)
まるで推しが俺のことを逆に推してくれているみたいな、不思議な感覚だ。
「さて。今日勝ったから、明日は二次予選だな」
『明日も楽勝で勝ったら、二週間後には予選の決勝だ』
『ん、それも勝ったらプロと同じリーグに出場できる。がんばろう』
そうして俺たちは、改めて気合いを入れた。
緊張するけど、楽しもう。
だがこの時の俺は、まだ気づいていなかった。
想像以上に、俺の配信とニノンのウォッチパーティーがバズっていたことを。




