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人権なし異能者  作者: 緋鯉
大学 ループ
46/52

40

そこからは、何度も夜凪に助けを求めループを繰り返した。


次のループでは、全員が慎重だった。時間も確保し、計算も何度も書き直し重ねて確認した。


夜凪は魔術陣を構築し発動する。その幾何学模様に輝く金の輪っかは何重にも重なり完璧に見える。


「時間もかけたし計算は完璧なはず。」


計算が完璧だと満足気な夜凪は自信満々に魔術陣を構築し発動した。起動と同時に、術式が反転する。外へ向かうはずの力が、内側へと収束した。


夜凪は一瞬、目を見開く。特異点へと発動した魔術は逆行し夜凪の胸を貫いた。


「…ごめ、これ。構築、ミス。」


それを最後に夜凪はズルズルとその場へと座り込む。項垂れた夜凪の表情は髪に隠されて見えない。やがて周囲の空気が軋む音がし圧縮される。骨が砕ける音が辺りに響く。彼女の存在だけが圧縮されて潰れた。


「……構築、ミス?どういうことだよ。」


学生の一人が呟く。


空中に浮かぶ魔術陣は、なおも美しく輝いていた。金色の幾何学模様は一切乱れず、破綻も崩壊もしていない。完璧な円環。完璧な配列。完璧な比率。


──にもかかわらず。


誰かが、喉の奥で息を詰まらせる音がした。


「…………こうちくみす……こうちく、ミス?は?…はぁ?!?!!なんでなんでなんでなんで????構築ミス?ここまできてっ!!?構築ミス!?!」


学生の一人が、震える声で大声を出した。理解できないというより、理解したくない響きだった。


その学生は夜凪を見る。だが夜凪の姿は、もうそこにはなかった。血も肉片も飛び散っていない。ただ、空間が一点に向かって歪んでいるだけだった。


「……計算は、合ってた」


別の学生が、必死に言葉を探すように呟いた。


「俺たち、何回も確認しただろ。条件式も、魔力量も、展開順も……全部」


その声は、次第に早口になる。


「間違ってない。間違ってないはずなんだ。だって、ほら……」


視線が、宙に浮かぶ魔術陣へ向けられる。


金の輪は、静かに回転している。一切のノイズもなく、誤差もなく、理論通りに。正しく、そこに在り続けている。


その瞬間、全員が同時に理解した。頭の良い学生達は察しがいい。計算が正しくても、理論が完璧でも、術式が成立していても。それをどう構築したかが問題なのだと。


「……あ」


声にならない声が、誰かの口から零れた。


魔術陣の中心。本来、外界へ向かって展開されるはずだった力の流れ。それが、最初からわずかに、ほんのわずかに内側を向いていた。


誤差でも計算ミスでもない。ただの癖だ。


夜凪という存在が、力を外に放つものではなく、常に自分の内で制御するものとして扱ってきた、その思考の癖。


彼女は、無意識のうちに術式を自分に向けて閉じて構築していた。


「……構築、ミス」


彼女はそう言った。

謝罪でも、言い訳でもなく、ただの事実として。


理解した瞬間、誰かが膝から崩れ落ちた。


「……そんなの……」


声が震える。


「そんなの、どうやって気づけっていうんだよ……」


夜凪本人ですら、それを最後まで気づかなかった。


いや──

正確には、気づく必要がなかったのだ。


彼女は今までそれで生きてきた。自分を中心に据え、力を内側で制御し暴走も逸脱も許さずただ結果だけを出してきた。力を完璧に制御してきた。だから今も生きることが許されている。だからこそ、特A級だった。


だからこそ──

魔術という「外向きの理論」と、決定的に噛み合わなかった。


空間に浮かぶ魔術陣が、ふっと光を強める。


誰かが叫ぶ。


「待て、まだ起動してる!止めろ──!」


だが、もう遅い。


術式は、発動している。対象を失ったまま、行き場を探すように静かに、静かに回転を続けている。




15時47分

時は巻き戻る。


研究棟の廊下には、まだ人が少ない。

白い蛍光灯の光が床に伸び、靴音だけがやけに大きく響く。


次のループ。

学生たちは、もう泣かなかった。


目は赤く腫れているが、涙は落ちない。

泣くという行為が、意味を持たないと知ってしまった顔だった。


院生は前回と同じく早朝から夜凪へと接触する。夜凪の反応も前回と変わらない。ただ違うのは、失敗例を己の口から言わなければいけないということだけ。


「……原因、分かりました」


院生の一人が、夜凪に向かって告げる。声は掠れているが、逃げてはいない。


「今回は……構築ミス、らしいです」


夜凪は、静かに頷いた。


「うん」


それだけだった。驚きも、落胆も、ない。


「魔術として式を組む時、私…癖で陣を省いたのかも?それか、重ねる順番間違えたかな」


そう言いながら、机の上に紙を広げる。ペンを走らせ、円と線を描いていく。


その手つきは慣れていた。あまりにも慣れすぎていて、まるで自分の死を何度も経験していないかのようだった。


「次は、構築する前に紙に書いて整理するわ。紙とペン、ちょうだい」


誰も何も言わず、紙とペンを差し出す。励ましも、制止も、そこにはない。


何度目の失敗か。


時間をかけた。何度も確認した。声に出して順番をなぞり、全員で頷いた。


空間に、魔術陣が浮かび上がる。金色の輪が、幾重にも重なり、静かに回転する。歪みはない。反転もない。力は夜凪の体から外へと向いている。


美しい、と誰かが思った。


それは、失敗するはずのない形だった。


夜凪は特異点へと、慎重に魔術を干渉させていく。

ほんの少し、指先の感覚を探るように。


そして、止まった。


「……あ」


小さな声だった。


「これ、魔力の種類、合ってないじゃん」


困ったように、夜凪は顔を顰めた。


「はぁ、なんで気づかなかったかな」


次の瞬間。夜凪の身体が、内側から壊れた。


悲鳴はなかった。爆発音もない。


ただ、血が噴き出した。口から、鼻から、耳から、目から。体内を巡る魔力回路を、異質な力が逆流し夜凪の体を内側から破壊していく。


夜凪は膝をつき、そのまま崩れ落ちた。床に倒れる音は、ひどく静かだった。体が僅かに痙攣し、やがて止まる。


魔力の種類が違っていた。純度も、属性も、特異点と噛み合っていなかった。間違っていない。どこも、理論的には。


ただ、夜凪の魔力では合わなかった。


「……つまり」


誰かが、声を絞り出す。


「夜凪さんじゃ……無理なんですか」


返事はない。床に広がる血が鮮明に見えた。




15時47分

時は巻き戻る


魔術陣の中心は、いつもより少しだけ遠くに感じられた。


空中に浮かぶ魔法陣は正確で、歪みも欠けもない。

それでも誰一人、夜凪へ近づこうとしない。前の失敗が、まだ空気の中に残っている。


夜凪は特異点の目の前に立ち、ぼんやり陣を見つめる。陣は完璧なはずだ。同じ場所を何度か確かめるように眺めている。


夜凪の目がふと魔力調整盤で止まる。これは、魔力量を計測するだけの機会だ。魔力供給量の数値は、計算通り基準値を示したままだ。


「……魔力の種類が違うなら」


ぽつりと、落ちるように言葉が出る。


「量で補っちゃう?」


否定はなかった。その言葉だけで、学生達は頭の中で理論を組み立てる。

魔力は性質だが、同時に圧でもある。向きが違っても、十分な量があれば、押し通せる。かもしれない。


適合しないなら、上書きする。同調しないなら、制圧する。


調整盤の数値が、ゆっくりと動き始める。安全域を越え、警告色に近づいていく。夜凪が供給する魔力量を増やしているのだ。


誰も止めない。止める理由はない。ループが終わりさえすればいい。


夜凪は、陣の内側へ足を踏み入れた。

床が、わずかに熱を帯びる。


術式が起動する。


魔術陣は静かに構築される。光は均一で、揺らぎがない。失敗の兆しは、どこにも見えない。


誰かが、息を詰める。


魔力は流れた。特異点へと魔力が流れる。ふと、特異点へと流れていた魔力が夜凪へと逆行し、夜凪の身体で留まる。


皮膚の下で、魔術回路が光を帯び脈を打つ。血の流れとは違うリズムだった。


夜凪は口を開いた。だが、声は落ちなかった。喉が熱で焼け、肺が膨らまない。息を吸うだけで焼けるような痛みが襲う。


魔力の供給は止まらない。多めにすれば安定する、その判断が、まだ生きていると信じている。


夜凪の魔力が、体の中をぐるぐると回る。体という器の形を確かめるように、圧が広がる。魔力が膨張する。


次の瞬間、形が保てなくなった。破裂でも爆発でもない。満たされすぎたものが、崩れただけだ。


熱と圧が、距離をつくる。誰も近づけない。


床に残ったのは、夜凪が立っていた痕と、焼けた空気だけだった。


誰かが喉を押さえ、視線を逸らす。吐き気を堪える音が、静かな室内に落ちる。


調整盤の数値は、まだ高いままだ。

赤い表示が、淡く点灯している。


「多め…だめじゃん。」


零れ落ちたその言葉は、誰にも拾われなかった。




15時47分

時は巻き戻る


学園結界は、学園内における魔力事故の未然防止と被害の拡大防止。学園外への影響遮断のために張られている。

校舎の基礎に埋め込まれ、敷地全体を覆うそれは敷地内の人間、または実験における魔力の暴走を防ぎ、事故を未然に遮断するためのものだ。過去にそれが誤作動した記録はない。


だから今回も、結界は計算に組み込まれた。


位相差、反応速度、干渉閾値。すべてを洗い出し、術式と噛み合わせる。結界がある前提で、結界と衝突しない構造を選ぶ。


夜凪の構築した魔術陣は完璧である。魔力量、濃度、種類にも対応した。隙がなかった。無駄な余白も、逃げも、誤差もない。過不足なんてなかった。


術式が起動した瞬間、空気が一度、張りつめる。次いで、学園結界が反応した。


学園結界は夜凪が構築した魔術陣に拒絶をしなかった。防衛でも、攻撃でもなかった。


ただ結界は術式を読み取り、その完成度を評価し、危険度を算出した。異常と反応しただけだった。


夜凪の魔術陣はあまりにも正しい。誤差がなく、揺らぎがなく、修正の余地がない。そして、膨大な魔力が使用されている。


その判断が下された瞬間、結界は自動補正を開始する。学園内の魔力量、濃度、流れを一定に正そうと作動する。


補正は術式の内側へ、異常にだけ干渉する。夜凪の魔力経路に直接異物として作用した。


ジュッと焼ける音がした。皮膚ではない。肉でもない。魔力回路そのものが断たれる音だった。それは神経がすり潰されているかのような痛みを伴いながら夜凪の全身の魔力回路を破壊していった。


夜凪の身体が反射的に跳ねる。


「ぁ゛っ」


夜凪は思わず声を上げた。


「…くっ、ふふ。こんな痛み初めだよ」


そこで夜凪の意識は消えた。




15時47分

時は巻き戻る


何度巻き戻ったのか。

魔術陣を完成させるには一人がもつ魔力の種類では足りないという判断になった。


何度も試行を重ね、構築も供給も限界まで詰めた結果だ。


補助が必要だった。誰かが、術式と夜凪を繋ぐ必要がある。


選ばれた学生は、魔力制御が得意という必要最低条件を満たし、質のいい魔力と種類、今回の魔術陣と相性が良いという条件で選出された。


魔力の質は高く、濁りがない。種類も特異点に近く、理論上は申し分なかった。測定結果は静かに揃い、誰も反対しなかった。


夜凪は、地面に陣を描き術式の中心に立つ。


魔力はすでに流れている。出力は高いが、制御は安定している。


補助学生は外縁に立ち魔術回路に接続する。触れるのではなく、合わせる。夜凪の魔力の流れに追従し、過不足をならす役目だ。


最初の数秒は、問題なかった。夜凪の魔力が波打つ。

補助がそれに合わせて動く。遅れはない。


だが、出力が一段階上がった。夜凪の魔力は、特A級のそれだ。変動が速く、振れ幅が大きい。補助学生は、必死に追いかける。補助をする。


流し、整え、押さえる。だが、制御が遅れてしまった。一瞬の遅れ。ほんの僅かなズレ。


それだけで、回路が軋む。


「……っ」


声にならない息が漏れる。


僅かなずれにより滞った魔力が重なり、絡まり、行き場を失う。補助は破綻した。


魔術陣が明滅している。主系の魔力が乱れている。補助が追従できていない。


そのこと夜凪は眉根を寄せて、補助学生を蹴り飛ばす。


「もういいよ、お前。…どけ」


外縁に立っていた補助学生を蹴り飛ばし円外へと押し出す。


魔力は制御を失った。その瞬間、夜凪の両腕が光に包まれた。


爆ぜる。


─ドンッ!


音は遅れて届いた。肉が裂ける音ではない。夜凪が床に叩きつけられた音だ。


夜凪は後方に吹き飛ばされ、床に叩きつけられていた。両腕は、肘から先が存在しなかった。


血と魔力が混ざり、流れ落ちた血液が床を焼いて煙を上げている。


補助学生は、その場に立ち尽くす。動けない。


「…怪我は?」


夜凪は床に転がったまま補助学生に声をかける。だれも何も言えなかった。


反応がないことに溜息をつきつつも夜凪は魔力の供給を遮断する。術式は停止した。


学生たちみんな、夜凪が死んだと思っていた。だが、夜凪は生きていた。


呼吸はある。心拍もある。だが魔力の流れが、異様だった。体内で、魔力が循環しない。流れるはずの経路が、ズタズタに断裂している。血液と共に魔力が周囲に撒き散らされている。


誰かが駆け寄ろうとして、足を止める。不用意に近づけば怪我をするだろう。


夜凪は、ゆっくりと上体を起こした。


肩口から先を見て、何も言わなかった。ただ止血を試みた。


止血のための治癒魔術は発動しなかった。魔力が練れない。魔術を構築できない。


次に異能を試す。異能力は感じ取れる。だから、異能はまだ夜凪の体に残っている。異能を発動する。だが、出力は不安定だ。空間がわずかに歪む。制御されない念動が床を削った。


夜凪は、面倒くさそうに顔を顰めた。こめかみからは一筋汗が垂れる。力の出し方が以前と違う。


補助学生は、膝をつく。


「……すみません……」


声が震える。補助学生の謝罪は正しくもなければ意味もない。夜凪が補助学生の力量を見極められなかった。ただの自己責任である。


学生が未熟なのは、当然だった。

特A級の魔力を、学生が補助できるはずがなかった。


それでも、任せた。それでも、試した。


結果は床に残る焼痕と、失われた両腕。


この世界線では、それ以上の試行は行われなかった。


夜凪は生き残った。


だが、両腕は治っても壊れた魔術回路は治らなかった。魔術への道は完全に閉ざされる。何年もかけた異能の制御はやり直しとなる。


これから、特A級能力者として使えるか使えないのかは夜凪の努力次第だ。




15時47分

時は巻き戻る


術式は、最後まで成立していた。魔力の流れは破綻せず、数値は予定通りに収束し、特異点は縮退し、形を失い空間から消えた。


消失。


誰の目にも、それは明らかだった。


張り詰めていた空気が緩む。誰かが息を吸い、歓声が上がりかけて止まる。


夜凪が、倒れていた。


中心から少し外れた位置。

崩れたのではない。力を抜いたまま、静かに横たわっている。


駆け寄った者が、躊躇なく膝をつく。


「……生きてる」


呼吸をしていた。脈拍もある。正常の範囲内だ。安定している。外傷はない。


ただ、目を開けない。呼応にも刺激にも反応を示さない。その場で夜凪の魔力反応の確認が始まる。端末を見た者が、無言で首を振った。


魔力反応も異能の波形も何も力を示さなかった。


遮断ではない。枯渇でもない。最初から何もなかったかのような空白。


誰かが、もう一度測定するも結果は変わらない。特異点は消えている。夜凪は生きている。


成功条件は満たされているはずだ。

誰かが、低く呟く。


「……成功なはずだ。成功したんだ。」


答える声はない。


夜凪は眠ったままだ。異能は戻らない。

沈黙が、長く続く。


いつの間にか3限目の講義終了を知らせる鐘がなる。それから暫くして、スーツを来た細身の男が夜凪を回収していった。あの男の視線を学生達は忘れることは無いだろう。


時計の針が、15時47分を指す。


空気が裏返る。世界が巻き戻る


「……意味、なかった」


誰かが笑い、そのまま泣いた。次の瞬間、世界は始まった。同じ場所。同じ時間。同じ光景。特異点は消失したがループだけは終わらなかった。



15時47分

時は巻き戻る


今回は、本当に完璧だった。計算は揃い、構築は澱みなく、幾何学模様は寸分の狂いもなく重なっている。

誰もが成功を疑っていなかった。


起動直前、夜凪の視界にちいちゃな影が写り込む。


それは一直線に夜凪が構築した魔術陣へと飛び込んでいく。


次の瞬間術式が反応する。


夜凪の右隣に立っていた学生が、弾け飛んだ。音もなく形が失われた。内側から押し潰され、肉と骨が霧になって散る。


夜凪が右を向くより早く、鈍い衝撃が走った。夜凪の右腕が見えない力に叩き潰される。ぺちゃん、という間の抜けた音がして、腕だったものが床に落ちた。視界が歪む。片側が黒く染まり、足元の感覚が消えた。

夜凪は、そのまま地面に倒れる。


魔力の流れが一気に崩れる。


特異点が低く唸り、次の瞬間、轟音を立てて破裂した。


衝撃波が走り地面が砕け、跳ね上がり、鋭い破片となって周囲の学生たちを襲う。悲鳴が重なり誰かが倒れる音がする


夜凪は自身を見下ろす。右手首から先がない。血が滴り床を濡らしている。右目と右耳はもう何も周囲の様子を拾うことはない。


夜凪は俯き肩を震わせる。顔を覆う髪の毛のせいで表情は伺いしれない。


「……あは」


その口からふいに笑い声が漏れた。それは次第に大声へと変わっていく。


「あはは、ははははは!」


腹を抱え肩を震わせ、夜凪は大きく笑った。


「ひぃっ!、と…くふっ、とんでっ、ひに、い、いる夏の虫、じゃん!!!いた!!あっひゃははは!」


場違いな笑い声が、瓦礫と血と焦げた空気の中に響く。


「か、完璧!〜っ!ふふっ。、ごめ、笑うつもり…あっはは!笑うつもりなくてっ!んふっ。ごっめん!次の私に期待して!あーっはははは!!!」


高く、よく通る声だった。笑いすぎて喉が引きつり涙が滲む。


誰も、止められなかった。

誰も、言葉を持たなかった。


完璧だった。それでもたかが虫ごときでこうなる。


その事実が夜凪の笑い声と一緒に、全員の中に刻み込まれた。


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