第7話 イケオジ様の戦略開始 ※エイブラムの視点あり※
ランドルフ様はオウカ様と、エイブラム様を睨んだ。
「お、お前ら!」
「あー、ランドルフ。お前の負けだ」
「そうだな。拙者も長く生きてきたが、ここまで豪胆かつ思い切りのよい方は、初めだ。なにより清々しい上に、我々を対等に見てくださる。拙者は聖女殿が気に入ったぞ」
『桃花は聖女で、神々からの頼み事をするためにここに来ている。過ごしやすい環境を整えるのは当然。面倒なことがあったら、桃香は僕に頼む。僕が解決する』
お腹に頭をぐりぐりと擦りつけてくるハクが可愛くて、撫で回した。なんて癒しなのだろう。
「しかし……具体的に、どのように資金調達をなさるのですか?」
どうやらランドルフ様的には、腹落ちしていなかったらしい。でも現実問題を解決しなければ、安心できないのもわかる。耳のいい言葉は軽い。どんなに熱を入れても、数字や実績という結果を叩き出した時の説得力は全然違うのだ。
「チッ。立ち直りが早いな」
「しかし、まだ折れないとは、少々往生際が悪いのではないか?」
「煩い、どっちの味方ですか!?」
「「モモカ殿」」
「裏切り者!」
ランドルフ様は乱暴に涙を拭って、改めて私を見つめた。これは本格的に騎士団を変えられると確証を持たせないと折れない。そういう空気を醸し出していた。
(重鎮にプレゼン企画をするときの空気によく似ているわ)
「それでモモカ殿は、どのような形で資金を集めるおつもりですか。正直、聖騎士団に支給される給金だけでは、騎士団そのものを維持することは難しいのが現状です。地下迷宮での狩りをしつつ、素材を売ることでなんとかしておりますが……」
「ちなみに素材などは、冒険者ギルドに下ろしているの? それとも商業ギルド?」
地下迷宮の深層までいく実力者を持っていて、素材が売れないはずはない。だとすると考えられるのは、身分的に買いたたかれている可能性が高いということだ。
「教会専属ギルドです」
「(なるほど、教会専属となれば足下を見られる可能性があるわね。あと中抜きとかされてそう)……それを商会ギルドや冒険ギルドに下ろすのは、規則的にダメだったりする?」
「その通りです」
「そう。じゃあ、今後の窓口は私がするわ。商談の際は、ハクとランドルフ様たちに護衛を頼むけれど」
「しかし、それだけで解決は──」
「もちろん、それだけじゃないわ。私の作った回復薬も買い取って貰おうと思うの。ほかにも」
「なに!?」
「回復薬だと!?」
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
「ん?」
ランドルフ様が声を荒らげた。彼だけじゃなくオウカ様やエイブラム様も驚いた顔をしている。何か変なことを言ったかしら。
「モモカ殿、本当に回復薬をですか?」
「ええ。他にも万能薬とか、治癒特化回復薬なんかも作る予定よ。私、錬金術のスキルがあるみたいなの」
鑑定を見て素材を集めていたし、錬金術のスキルもあるから料理と同じような手順で作ればできる。本当は作って鑑定してから相談したかったけれど、その前にランドルフ様を説得する形になってしまった。
「……この世界で回復薬が作れる錬金術師は、数人しかおりません。というのも、教会の治癒魔法師が増えた時代に錬金術師は職を失い、世捨て人となって姿を消したからです」
「ナルホド」
それ絶対に、追放または迫害した感じよね。あるいは錬金術師の扱いが雑になったから、有能そうな人たちは早々に王宮や街から姿を消したような気がする。
「……王宮と組織で囲っていた者たちもいましたので、完全に途絶えたわけではないのですが結果的に回復薬の価格が上がったため、金貨で取引されるようになっています」
「じゃあ、十分売れるわね」
フフフッ、と六歳とは思えない下種な笑みを浮かべつつ、今後の方針を決める。とにもかくにも、騎士団たちの生活環境を整えるのも大事なことだ。
またこの世界に来た一番の目的でもある食事についても、色々知りたい。そうあれこれ考えていると、オウカ様と、エイブラム様は私の傍に歩み寄り、片膝を突いて頭を下げた。
「モモカ殿! お願いの儀がある」
「その回復薬を売っていただくことは、できないだろうか」
「は? へ?」
「オウカ、エイブラム!」
ランドルフ様が声荒げるが、二人は言葉を続けた。
え……? なになに? 回復薬が必要な展開があるってこと!?
まだ実際に出来ていないのだけれど!?
**エイブラムの視点**
「その回復薬を売っていただくことは、できないだろうか(この聖女なら、どう答えるだろう。どう交渉するだろうか。俺の一族を踏み躙った教会上層部と同じか、あるいは──)」
六歳の幼女に向かって、首を下げる。中身はおそらく大人、それも知識と経験を持った叩き上げの人間。そんな印象を覚えた。周りをよくみて気配りもできる。
だがその本質はいかに?
俺の両親は、教会上層部の連中と貴族に嵌められて殺された。
男爵家の五男で、家は代々鍛治工房を経営運営する一族だった。ドワーフの血も少し混じっていることが誇りで、ドワーフにも引けを取らない武具や、武器を作るのが生き甲斐とも言えた。
そのあり方を壊したのは、教会上層部、数名の枢機卿だ。権力争いの道具として、俺たち一族を巻きこんだ。俺が一人生き残ったのは、珍しい鉱物を隣国から買取に出ていたから──。
俺は鍛治師になることを投げ捨てて、復讐するため聖騎士団に潜り込んだ。
そして黒狐騎士初代団長に登りつめて、その権限を利用して、復讐を遂げた。
そこになんの後悔もない。
ただランドルフに恩がある。団長を辞めて脱退する時も引き止めてくれたのは、アイツだ。「人の心や感情、気持ちが分からない。だから君の復讐を手伝えば何か分かるかもしれない」と言い切ったお人好しだった。
今はそれなりに人らしくなったが、やはりお人好しは健在だ。だからこそ俺が悪役でも何でもいいから、この騎士団が使い潰されないように動く。ランドルフにとって、この騎士団は唯一の居場所だから。
聖女モモカ、どうか。
ランドルフの砕けかけた心と矜持と誇りを、守ってくれないだろうか。そう柄にもなく願い、期待しながら、博打を打つ。ここで聖女の機嫌を損ねたら、護衛の件も水疱に帰すだろう。それでも彼女の本質を知るために、壊滅しつつあるこの騎士団の実情を語る。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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