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しがないサラリーマンだった俺は、転生した世界で今日も悪役令嬢を溺愛する。

作者: あおたん




 転生。悪役令嬢。異世界。

 俺が前に生きていた世界ではそんな物語が溢れていた。

 物語に溢れる世界で、ただのサラリーマンだった俺は仕事に、現実にひたすらに追われていた。

 だから、あの時まで俺にとって物語はただの現実逃避でしかなかった。

 同僚の押しの強さに負け、ライトノベル「最後の初恋を君に捧ぐ」を読むまでは。

 舐めてかかっていた俺は、すぐにその作品の虜になった。

 はじめて読んだとき、心が震えて、勝手に涙が零れていた。

 何度も読み返し、アニメ化が決定した時には思わず叫び声を上げた。

 あの作品のおかげで、俺の日常は色づきだし毎日が楽しくなった。


 俺がなぜこんなにも作品に魅了されてしまったのか、それは、何と言ってもキャラ立ちの良さにある。

 どのキャラクターも魅力的で、可愛くて、カッコいい。

 みんなが初恋を通して成長する物語だった。

 そんな世界に俺はどっぷりとハマってしまった。

 中でも、悪役令嬢として登場した、カタリーナに夢中だった。

 物語のなかで、彼女は世界に名を轟かす魔法使いになっていく。

 幼い時に家族を亡くし、身体の弱い彼女が、努力に努力を重ねて、大魔法使いにまで成長する姿は涙なしには語れない。


 それに、悪役令嬢と言っても、彼女は何一つ悪くない。

 確かに彼女は幾度となく主人公に突っかかり、臆病者だった主人公はいつも彼女に怯えていた。

 主人公視点で進む物語の中で、彼女は確実に悪役令嬢だった。

 でも、彼女に悪意など全くなかったことが物語の後半で徐々に明かされていく。

 彼女はものすごく不器用で、ただ主人公に恋心を伝えられないだけの乙女だったことが明かされたとき、俺を含む読者のほとんどの人間が彼女を好きになってしまったと思う。

 そんなカタリーナがいつも可愛らしくて、カッコよくて、どうしても目が離せなかった。

 何はともあれ、俺はこの作品によって日常が彩られ、楽しい日々を過ごしていた。

 そんな最中、俺は交通事故に遭い、あっけなく命を落とした。

 そして俺はなぜかいま、「最後の初恋を君に捧ぐ」の世界にいる。



 前世の記憶取り戻したのは10歳になった頃だっただろうか。

 カタリーナに出会ったのだ。

 彼女はまだ6歳で、少しませた女の子だった。

 名前を聞いて俺はすぐに「最後の初恋を君に捧ぐ」の世界にいることを自覚した。

 彼女に出会った瞬間、俺は思ってしまった。

 この子を守りたい、この子の願いを叶えたいと。

 前世から彼女に魅了されていた俺だ。

 それは当然の感情と言えよう。


 それから剣士の一家であった俺は、剣術の特訓により一層力を入れるようになった。

 元々の才能も手伝ってか、すぐに頭角を現し始め、5年も経つ頃にはこの国随一の剣士と噂されるまでになった。

 国王からは、褒美をやるから軍を率いてほしいと言われたが、俺はどうでもいい。

 カタリーナを守れればそれでいい。

 彼女の願いを叶えられればそれでいい。

 力を手に入れたあと、彼女の育ての親であるブリティオッシュ侯爵に頼み込み、カタリーナ専属の護衛になることに成功した。

 それが一年前の話だ。


 今日も今日とてカタリーナお嬢様の元へ向かう。


「ねえ、ブライト!やっと来た!早くこっち来てよ!」


 お嬢様の部屋に着くと早々に声をかけられた。

 お嬢様は足を両手で抱え、部屋の片隅で小さくなっている。

 綺麗にセットされたハーフアップの金髪。

 細部まで編み込みがされていて、一切の乱れがない。

 お嬢様は主人公であるラウルに振り向いてもらうために毎日1時間もかけて髪をセットする。

 侍女にやらせればいいものをお嬢様は絶対にそれをしない。

 前に提案したら、

「だって、私がラウルに振り向いてほしくてやっていることよ。なんで人に手伝ってもらわなきゃならないの?それに、どんな髪型だったら彼に振り向いてもらえるかなって考える時間も私は好きなの。」

 と満面の笑みで返された。

 どれだけラウルが好きなんだか。


 真っ赤に染まる瞳に長いまつ毛。

 パッチリとした二重の瞼に、整った鼻筋。

 俺を映す瞳は、涙を蓄え、潤んでいる。

 また、ラウルにそっけない態度でもとられたのだろうか。


「どうされました?カタリーナお嬢様。」


「ブライト聞いてよ!またラウルが私に冷たいの!どうして、私の思いに気づいてくれないのかしら。私、こんなにも好きなのに、彼は振り向いてもくれない……。どうして……。」


 涙が、お嬢様の傷一つ無い頬を伝っていく。

 真っ白で透明な肌から零れ落ちる涙は神秘的なほど美しい。


「そんなこと言ってお嬢様、また緊張しすぎて顔が強張っていたんじゃないんですか?」


「そんなこと無いわよ!ラウルに私の作ったクッキーを食べてもらいたくて、頑張ってそれも伝えたのよ!」


 確かにお嬢様は昨日、何時間もかけてクッキーを焼いていた。

 何度も焼いては焦がしてを繰り返し、やっと食べられるかもしれないものが出来た時には、もう日付を跨いでいた。

 クッキーはお世辞にも美味しいとは言えない出来だったけど、あの頑張りを見ていた俺に言わせれば愛情の籠った素敵なクッキーだった。


「で、お嬢様はラウル様に食べてほしい気持ちをどう伝えたんですか?」


「このクッキー食べて頂戴。これを食べなければどうなるか分かっているかしらって。どうなるって決まっているわよね、私が悲しむの!」


 ソレハ、オモシロイ……。


 うん、これはきっとあまりにも先鋭的な冗談だ。

 もし、本気で言っているのだとしたら、お嬢様は相当なアホだ。


「お嬢様、それはちょっとしたジョークか何かですか?」


「何を言っているの?ブライト。私はいつだって本気よ!」


 まさかの本気だった。

 相当なアホだった。

 会ったこともないラウルに同情してしまう。

 きっとお嬢様は緊張したときに出てしまう般若みたいな顔で彼に迫ったのだろう。

 茶色く変色した食べ物かどうかもわからない何かを、般若みたいな顔した美人が食べなければどうなるか分かっているよなと問いながら渡してくるのだ。

 いくら何でも、怖すぎる。

 あの臆病者のラウルのことだ、もしかしたらちびってしまったかもしれない。

 可哀そうに。本当に可哀そうだ。


「ただでさえ面白くない冗談だと思ったのに、お嬢様、本気なんですか。それであるならば私は正直、ラウル様に酷く同情してしまいます。」


「なんでよ!せっかく私が頑張ったのに、ブライトは慰めてもくれないの⁉」


 しまった。言い過ぎた。

 お嬢様は、口を膨らませて、拗ねている。

 頭を下げたかと思ったら、抱え込んでいる膝に額を押し当てた。

 膨らませた口に、小さくまとまっている身体、まるで小動物のようだ。


「ごめんなさい、お嬢様。言いすぎました。お嬢様はよく頑張りました。私は知っていますよ。昨日も慣れない料理を必死に頑張ってらっしゃいました。お嬢様の気持ちはきっとラウル様に届きます。今度はもう少し素直に伝えてみたらどうですか?頑張って作ったから食べてほしいって。」


「ありがとう、ブライト。でも、そんな風に簡単に言えたら苦労しないわよ。」


「大丈夫です。お嬢様ならできます。こんなにもラウル様を思っているお嬢様ですから、素直に言葉にすれば絶対に届きます。できますよ。」


「そう…、かしら……?そう、よね……。ブライトごめんなさい。私、思いが伝わらないもどかしさに弱気になっていたわ。ダメよね。そうよ、こんなんじゃダメよ。私もっと頑張るわ。ラウルに伝わるように頑張る。うん、頑張る。頑張る!」


 お嬢様は、話ながら頭を上げ、涙を拭う。

 そして満面の笑みを浮かべた。

 すぐに落ち込んでしまうけれど、立ち直るのが早い。

 素直じゃないけど、愚直で、ひたむき。

 それがお嬢様の素敵なところだ。

 まあ、その長所が空回りして、ラウルにどんどん怖がられてしまうのだけど。

 でも、お嬢様の魅力がいつかラウルに伝わってくれればいい。

 俺はお嬢様の目線に合わせてしゃがみ込み、彼女の頭を撫でながら、声をかける。


「それでこそ私の大好きなお嬢様です。」



















「お嬢様、そろそろ休憩なさってはどうですか?根を詰めすぎてはお体に障ります。ただでさえ丈夫ではないお体なのに、もう少しご自身を労わってあげてください。」


 崖の向こうに置かれた岩に向かって何度も魔法を放つお嬢様に声を掛ける。

 こんなことを言ったところでお嬢様が俺の言葉を聞かないことは長年の経験で分かっている。

 それでも、お嬢様が止めるまで、俺も止めるわけには行かない。

 だって、本当に倒れてしまうまでやりかねないから。


「最後の初恋を君に捧ぐ」の中で、カタリーナは一二を争うほどの人気を獲得していた。

 読者を魅了した理由として、恋心を伝えられない不器用な可愛らしさを上げる人は多い。

 しかし、一番はやはり、大魔法使いになるまでの狂気とも取れる努力だろう。

 彼女は家族を失っても、身体が弱くても、絶対に自分が自分に負けることを許しはしなかった。

 彼女のこの努力家な一面が読者の心を、俺の心を掴んで離さなかった。

 でも、物語の登場人物、キャラクターではなく、一人の人間として関わってしまっている今、俺はお嬢様のことが心配で、心配で。気が気じゃない。


「うるさい!ブライトは黙ってて!私は絶対に強くならなきゃいけないの!」


 お嬢様は魔法を放ちながら叫ぶ。

 そして、しきりに目を擦っている。

 また泣きながら練習をしているのか。

 いつもこうだ。

 いつも泣きながら魔法の練習をする。

 いつも泣きながら魔法の勉強をする。

 泣いても、絶対に手を止めない。

 そんな努力が、狂気がお嬢様を大魔法使いにしたのだろう。


 でも、俺はやめてほしい。

 無理をしないでほしい。

 頑張りすぎないでほしい。

 お嬢様が何かをする時、俺は常に不安になってしまう。

 それが俺のエゴだってことは分かっている。

 だから俺は体調に支障が出ない程度まで最大限、お嬢様の頑張りを見守ることに決めている。


 ソワソワしながら見ていると、お嬢様の身体が一瞬、ふらついた。

 うん、今日はもう終わりだ。

 これ以上は看過できない。

 これ以上やってしまえば、絶対に体調を崩す。


「お嬢様、今日はもう終わりです。帰りますよ。」


 お嬢様の両目を右手で覆い、強制的に瞳を閉じさせる。

 俺の制止と同時にお嬢様の膝が折れ、ガクッとバランスを崩す。

 ほら、言わんこっちゃない。

 左手で力無く崩れ落ちていく身体を支えた。


「お嬢様、これ以上は許しません。休みましょう。これは強制です。いつものことだからわかっているとは思いますが、抵抗しても無駄ですからね。」


 お嬢様の耳元で、囁くように、しかし、確実に彼女の耳に届くように声をかける。

 言い終えると、手を持ち替え、横抱きにする。

 一番抵抗が無くなる気がするからこうしているが、俗にいうお姫様抱っこだ。


「お願い、ブライト。止めないで。もっと、頑張らないと。もっと、強くならないと。また私のせいで誰かが死んじゃうの。」


 お嬢様がしゃくりを上げ、力無く声を出す。抵抗のつもりなのか俺の腕を掴むが、全く力が入っていない。これは完全な魔力切れだ。


「お嬢様、大丈夫です。お嬢様は心配しなくても強い魔法使いになります。今は、休みましょう。何も考えなくていいんです。大丈夫です。」


 お嬢様に優しく語りかける。

 体力が底を尽きたのか、気絶するように眠ってしまった。













 カタリーナお嬢様は、5歳の時に両親を亡くしている。

 突然家に押し入ってきた魔法使いの手によって。

 家族の中で魔法を使えるのはお嬢様だけだった。

 魔法使いに対抗できるのは、魔法使いだけ。

 つまりあの時、家族を救えるのはお嬢様だけだった。

 でもそれは5歳の子供にとって無理難題でしかない。

 一家は成す術もなく逃げまどい、お嬢様を心の底から愛していた両親によってどうにか命だけは助けられた。

 カタリーナお嬢様も育ての親であるブリティオッシュ侯爵もあの事件を多くは語らない。

 だからこれは前世で読んだ小説による知識だ。

 あの小説の中で、この事件について詳しく描写されている。

 お嬢様視点で語られるあの事件は、悲惨以外の何ものでもない。






 あの後、お嬢様は熱を出してしまった。

 目の前で荒い息を立て、眠るお嬢様。


「お母さん……、お父さん……。いやっ……。置いてかないで。ごめんなさい……。」


 当時の夢を見ているのだろう。

 苦しそうな姿がみていられなくて、俺は思わず手を握る。


「大丈夫です、お嬢様。お嬢様のことは私が守ります。怖いものからも、苦しいものからも、辛いことからも私が全てお守りします。」


 力強くお嬢様の手を握りしめ、声をかける。

 閉じていた瞼がゆっくりと開いた。


「ああ、ブライト。ごめんなさい。私、迷惑かけて。ごめんなさい。強くならないといけないのに。ごめんなさい。こんなことで弱音を吐いて。ごめんなさい。」


 熱に浮かされ、弱気になってしまっているのだろう。

 涙をボロボロと零し、必死で謝るお嬢様。

 迷惑なんて掛けられていない。

 お嬢様ほど強い人間を俺は見たことがない。

 弱音なんて、いくらでも吐けばいい。

 俺が全部受け止める。


「なにをおっしゃっているんですか?お嬢様。俺はむしろ迷惑かけてほしい、弱音を吐いてほしい。俺はお嬢様の護衛です。何十年も前からお嬢様をお守りしたくて護衛になったんです。謝らないでください。もっと頼ってください。」


 俺は微笑みかける。

 そうだ、俺はあの小説を読んだ時から彼女を守りたくて仕方がなかった。


「ありがとうブライト。貴方って、本当に素敵な人ね。私にはもったいないくらい。でも、何十年も前からって言うのは少し盛りすぎじゃないかしら。」


 俺の言葉を聞いて少し柔らかくなるお嬢様の表情。

 お嬢様の手が俺の頬に触れる。

 言い終えると、またすぐに眠ってしまった。


「今はゆっくりお休みください、お嬢様。」














「ねえ!ブライト!ねえ!聞いて!」


 学校から帰宅したお嬢様は荷物も片づけずに俺の部屋に入って来た。


「お嬢様、それはさすがに行儀が悪いですよ。話をするなら荷物を片付けてからにしてください。私がブリティオッシュ侯爵に叱られてしまいます。いくらでも待ちますから、聞きますから、まずは片づけて来てください。」


「わかったわブライト。ごめんなさい。確かに行儀が悪いわね。出直してくるわ。」


 入って来たときの勢いを急激に失い、部屋を出ていく。

 きっと3分もしないうちに戻ってくるだろう。

 俺は広げていた本を片付けることにした。


 熱を出したから1週間。お嬢様はやっと回復し、久々に登校した。

 あの会話以来、お嬢様は、泣くことも弱音を吐くことも、夢にうなされることもなかった。

 俺はそんなお嬢様に安心しつつ、口うるさく注意をした。

 頑張りすぎるな、やりすぎるな、身体のことも気にかけなさいと。

 真面目な振りして俺の注意を聞いていたが、どうせお嬢様はそんな言葉なんか忘れてまた無理をするのだろう。

 また見守ってやらなければいけないな。


「ブライト!片づけてきたわよ!早速聞いてくれるかしら!?」


「お待ちしておりましたお嬢様。今日はどうされたんですか?何かいいことでもあったんですか?」


「そうなの!ブライト!私、ラウルに話かけられちゃったの!ラウルから話かけられたのなんて、初めて会ったとき以来だわ!これは大きな進歩よねブライト!」


 満面の笑みで俺に話をするお嬢様。

 どんなお嬢様も可愛いが、やっぱり笑顔が一番可愛らしい。


「そうですか、お嬢様。よかったですね。それでなぜラウル様は話かけてくれたのですか?」


「私、久々の学校だったじゃない?みんなに何と無く白い目で見られてたのよ。それが凄く居心地が悪くて、どうしようって思ってたら、ラウルが登校してきて、そんな居心地の悪さも吹っ飛んじゃったのよ。彼の姿を見るだけで私って満たされちゃうの。それでついつい彼を見つめてしまって、気が付いたら目が合ってたの。私、目を逸らすのも忘れて、なんてカッコいいのかしらって、眺めちゃって。そしたら、ラウルが体調大丈夫?って聞いてきてくれたのよ!ラウルって本当、優しいのよね。あまり接点のない私のことも気にかけてくれるのよ。」


 このくだりは何となく、小説で読んだことがあるぞ。

 お嬢様は学校で恐れられている。

 目つきが悪いとか、不真面目だとか、性格が悪いだとか、何か闇の組織と繋がっているんじゃないかとか、全て勘違いであることを俺は知っているが、お嬢様の驚くほどに不器用な性格を見るに、そう勘違いされてしまうことは致し方ない。

 そんな噂が立っているお嬢様に臆病者のラウルは途轍もなく怯えている。

 それに、居心地の悪さから、目つきも悪くなっていた。

 ラウルからしたら朝から、悪い噂しか聞かないお嬢様が睨んでくる最悪な状況だ。

 目が合ってしまったが最後、あまりの恐怖で視線を逸らすことが出来なかった。

 しかし、相手も逸らそうとしない。

 ラウルは苦肉の策で、お嬢様に声をかけたのだ。

 小説の中で、お嬢様の視線に気づいてしまったラウルの絶望感は凄まじかった。

 でも、お嬢様視点でみるとこんなピュアなエピソードになってしまうなんて。

 まあ、お嬢様が笑えているなら、今はそれでいいだろう。


「それはよかったですね。お嬢様。これをきっかけに徐々に仲良くなっていきましょう。」


「そうするわブライト!私頑張るから見ていて頂戴!ラウルと仲良くなって、私の思いを伝えるの。そのためにブライトも手伝ってくれるかしら?」


 お嬢様は満面の笑みを浮かべ、柔らかな表情をこちらに向けている。俺はいつもこの顔に見惚れてしまう。


「もちろんです、お嬢様。お嬢様をお守りすることが、お嬢様の願いを叶えることが私の昔からの夢なのです。喜んでお手伝いさせていただきます。」


 そう、俺は何十年も前から、それを願っていた。


 手の届く場所にいるはずの無かった彼女が今、目の前で微笑んでいる。

 守りたいと願ったところで叶うはずの無かった彼女を今、守ることが出来ている。


 それだけで俺は幸福だ。


 だからこそ、彼女を守るために、彼女の恋が実るために、彼女の願いが叶うために俺は今日も、明日も、明後日も彼女の傍に居て、彼女の為に全力を尽くす。






読んでいただきありがとうございます。

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