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『ウサギと亀と時事と文芸』

作者: 成城速記部

ウサギが亀に速記勝負を挑みました。ウサギの祖先が、かつて、亀の祖先にかけっこで負けたことを気に病んで、別の速さ比べならいけるかもしれないと思ったのです。

亀は快諾しました。もともと亀は、のろいと思われていますから、どんな勝負だろうと、負けて当然、勝って大もうけです。ウサギの敗因は、ここに端を発します。

よき日が選ばれ、カラスが朗読、チョウチンアンコウが照合、ニッポニアニッポンがタイムキーパーを勤めることになりました。何となくです。別に誰でもいいのです。

カラスは、声を枯らすほどに、朗々と朗読しました。二匹とも、懸命に速記しました。ま、不まじめに速記するやつなんて、この世にいませんけどね。

ウサギは、ちらっと、亀のほうを見ました。どうやら全部は書けなかったようです。もちろん、ウサギも、全部書けたわけではないのですが、ウサギは勝利を確信し、反訳を終えると、寝ました。ほっとしたのでしょう。ぐっすり寝ました。

ウサギが目を覚ましたのは、ニッポニアニッポンが、反訳終了一分前を宣言する声を聞いたからです。ウサギは、急いで反訳用紙を見直し、少し雑に書いてしまっていた字を二文字ほど修正して、まあ、これで、書けたところは全部反訳できたろうという感じで提出しました。

三十分ほどして、結果が発表されました。

亀は、結構なミス数です。これなら余裕だろうと、ウサギは安心して自分のミス数の発表を待っていましたが、びっくりです。失格だそうです。

失格って何ですか。最終審査委員長に尋ねました。

だって、ウサギ君、反訳用紙、提出しないんだもの。

そんなはずはありません。さっき出しました。

あれは、二問目の文芸でしょ。一問目の時事を提出しなかったから失格。当然だと思うよ。

おやおや。どうやらウサギは、一問目の時事の途中で寝て、二問目の文芸の途中で起き、一問目の反訳用紙を、二問目の反訳用紙として提出したようです。そりゃ、失格です。

ウサギの心は折れました。汚名をすすぐどころか、上塗りしてしまいました。もう、祖先に顔向けができません。ウサギは、出奔し、どこかで修行を積んで、戻ってきたときには、鳥の仲間になっていました。ウサギが一羽二羽と数えられるのは、この顛末によるものなのです。



教訓:かつて負けた一族にまた負けるというのは、相性が悪いのだから、立ち向かわなければいいのだと思う。

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