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第5話 【月の雫】ニューフェイス


 世界には108ヶ所のダンジョンが存在する。

 それぞれのダンジョンには、総合階層には違いはあれば、上層、中層、下層、深層の4つの層に分かれていた。

 そのダンジョンを探索する人達を「探索者シーカー」と呼ぶ。


 全体的に言えることではあるが、探索者自体の人気はあまりない。

 理由としては所謂3k(きつい・汚い・危険)の職業である為だ。

 どこぞの過疎配信者でもない限り、ダンジョン探索は数日かがりの遠征であり、その間はお風呂やトイレに満足に行けず、いつモンスターが現れ襲われるかの緊張状態の連続を強いられることになる。

 上層1階層に出てくるゴブリン程度の強さはでも、戦闘訓練を受けていない一般成人男性を殺せるほどの強さを持っている。


 しかし、地上にはほとんど出現しなくなったモンスターがいるダンジョン。

 自分が戦うのはイヤだけど、モンスターと戦闘を見たいという人達は一定数いた。

 そこに目をつけた世界的なインターネットビジネス企業「Satellite」が、ダンジョンでモンスターとの戦闘などをメインとした、ダンジョン関連の動画配信専用サイト「DungeonTube」を作りだした。


 初めの内は、あまり人気が振るわなかったが、徐々にゲームや映画と違い、刺激的なリアルな動画に魅入る人が出始めた事で、「DungeonTube」は人気になり、Satelliteのメイン動画サイト「Yootube」に迫る人気を獲得した。


 「DungeonTube」が人気になるにつれて、一時期は玉石が混じった配信者――「DTuber」も増えたものの、今はある程度、落ち着いている。

 理由としては、なんだかんだで、戦闘系動画が一番バズりやすいものの、実際の戦闘出来る人材は限られるからだ

 幾ら魔力が普通にある世界とは言え、それを戦闘目的で鍛えるのは一部の人達のみで、日常生活を送る際には、ほとんど使用しないのが実情であった

 ダンジョンを甘く見て「DTuber」になった者は、淘汰されて行き、今ではある程度の実力を持った探索者とDTuberが活動している状況である。



 日本のダンジョンは3ヶ所あり、京極蘭が潜っているのは、東京から一番近い、霊峰富士の麓に拡がる青木ヶ原樹海にあるダンジョンである。

 ダンジョンにはモンスターが生息しているため、地上に進行してこないか国が監視しているが、蘭はvs.呂布戦でしたような時間が停止するほどの高速移動、またはクエビコによる監視カメラ等をハッキングして、誰にも気づかれず事無く、ダンジョンに侵入しては好き勝手に暴れる事が趣味となっていた。

 配信はしているものの、ダンジョンは似たり寄ったりの光景が多いため、配信者の自己申告か、有名配信者の視聴者に多い特定班のような存在がいない限り、どこのダンジョンに潜っているバレる可能は少ない。

 つまり過疎配信者である蘭は、ダンジョン出入り口にさえ気をつけていれば、誰にもバレることなく潜り配信する事が出来るのであった。





 ----------


 


「皆さん、こんにちはー。本日は青木ヶ原樹海の中層に来ています。入り口の所で聞いたところによると、今日、このダンジョンに潜っているのは私達だけみたいです。つまり私達『月の雫』の貸し切り状態!」


 カメラ付きの高性能ドローンに向けて「月の雫」のパーティーリーダー、東雲絵馬は言った。

 肩よりも少し伸びている黒髪をポニーテールにまとめ、髪の先の方は少し紅く染めている。格好はシャツとジーンズと言った軽装で、腰の所に片手剣を下げているだけだ。

 実力は日本探索者ランキングにおいて7位の実力者で、二つ名は「剣帝」。以前は「剣姫」だったが、3×歳となって姫と言われるのは精神ダメージが大きい事もあり、有無を言わせず改名して経緯がある。

 「DTuber」では登録者数90万人を越えている人気配信者でもあった。


「更に今日は、「月の雫」のニューフェイス、弥勒 京華ちゃんの紹介も兼ねてます!」


 ドローンは180度回転すると、パーティーの中で一番小柄な少女を映す。

 黒髪が腰の所まで伸ばしていて、まるで日本人形を思わせる。

 目は少しつり目。服装は着物を現代ファッションに改造した物を着ていた。


“幼いな”“中学生ぐらいか”

“いやもしかして20を越えている合法ロリの可能性も”

“あー、魔力を体内循環して細胞の劣化を抑えるって奴か。アレって都市伝説だろ”

“それは実話。ただし、魔力を循環させる難易度は針の穴に細い魔力を通す感覚で365日24時間しないといけないらしいから、無理ゲーの類いってだけ。”


「はいはい。京華ちゃんは合法ロリじゃなくて、ちゃんとした現役女子中学生です」


「絵馬さんから紹介があった弥勒(ミロク)京華(キョウカ)です。中学2年生で、14歳です」


“――京華ちゃんって言うんだ。なんとなく感じるドSっぽい”

“罵って欲しい”“踏んで欲しい”“見下して欲しい”

“↑お巡りさん、こいつら犯罪予備軍です”

“って、そもそも現役JCが中層潜るって大丈夫なのか”


「ふっふっふ。京華ちゃんは、ただの女子中学生じゃあないんだ。

100年に1人の逸材と言われる天才陰陽師、それが京華ちゃんなのです!!」


「絵馬さん。私は、そんな大した子ではないです」


「謙遜しなくていいんだよ。実力は私が保証するし、同年齢で京華ちゃんより出来る子はいないんじゃあないかな」


「――……」


 2年前の京華ならば、絵馬の言葉を疑うことなく肯定して頷いていたことだろう。

 でも、今は違った。

 チラつくのは家が近所で親同士の交流もあった事もあり、一緒に育ったと言っても過言ではない幼馴染みの少女――京極蘭のこと。

 

(2年前――。私は知ってしまった。私がどれだけ井の中の蛙だったのか。本当の天才はどんな者なのか。あの子に比べたら――私は)




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