表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

他責の果て -- 兄の命日に --

挿絵(By みてみん)

兄は、いつも誰かのせいにして生きてきた。

うまくいかないのは母のせい、父のせい、学校のせい。

大人になってからも、会社のせい、家族のせい、父の病気のせい。

その視線を自分に向けたことは、一度もなかったのかもしれない。


まだ私が幼かった頃、鉄道模型で高校生の兄と遊んだ日。

思うように動かなくなった機関車を兄は投げつけ、

壊れた破片を拾う私に向かって言った。

「短気は損気だ」――自分で壊しておいて。


父が大動脈破裂で入院したとき、兄は言い放った。

「親父は俺が面倒を見る」

実際に退院後は引き取ったが、間もなく自身も離婚し、

転院させた父を放置したまま姿を消した。


父の死後しばらくして、兄の会社から緊急の電話があった。

職場でトラブルを起こし、寮にこもっているという。

母が会いに行くと、兄は言った。

「こうなったのもお前のせいだ。お前にも弟にも世話にはならない」


それから数年後、今度は姪を通じて知らせが届いた。

兄が入院し、手術の同意書に署名が必要だという。

姪としては、もう縁を切った。父親とも思っていないと。

私は同意書を書きに病院に駆けつけ、兄はその手術で命を拾った。


手術後、経過の説明を受けに病院を訪ねたとき、

医師が「昨日から意識が戻ってますよ」と言った。

しかし、「弟さんが来てくれましたよ」と声をかけても、

兄は目を閉じたままだった。

その様子が、昔の狸寝入りを思わせた。けれど私は、

回復に安堵すると同時に、胸の奥で静かに溜飲を下げていた。


兄は、いつも誰かのせいにして生きてきた。

だが、そんな兄を見て育った私は、慎重になった。

コップの水がお湯に変わり、麦茶がめんつゆに変わる。

そんな悪戯の積み重ねが、私をそうさせたのだろう。


兄の命日に思う。

あの人は、他人を責めてばかりいたけれど、

結局は、自分の人生の責任を負うことから逃げ続けていたのだろう。

私の慎重さも、兄の他責も、同じ場所から生まれたのかもしれない。

十四年経った今、それを思うと、憎しみよりも哀れみが先に立つ。


 お読みいただきありがとうございます。

 今回は、個人的に過ぎると思いこちらでのみの公開。


挿絵(By みてみん)

※家紋 武範さん("https://mypage.syosetu.com/1245433/")作

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ