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007 竹を探して

 2021年5月24日。

 月曜日の今日、俺たちは無人島生活の2日目を開始した。


「俺の睨みではこの近くのはずだ」


 朝食を済ませるなり、俺たちは森の探索を始めた。

 少しずつ活動範囲を拡大して、いつかは島の全容を把握したい。

 いや、それよりも先にかつての現実を取り戻したいものだ。

 早くも深夜アニメが恋しくなってきた。


「本当にあるのかよー、竹なんてさぁ」


 沙耶が気怠げな口調で言う。

 俺たちは今、竹を探して彷徨っている。


「そもそも竹ってそんなに使えるの?」と陽葵。


「竹は有能だぜ? 色々な道具を作るのに使えるし、料理にも活かすことが可能だ。そのままでも使える」


「そうなんだ!?」


「是非とも期待していてくれ――あったぞ、竹だ!」


 直感に従って進んだ結果、竹を発見した。

 周辺の木々を退ける強い生命力で竹林を形成している。

 いくらか伐採しても少しすれば回復しそうだ。

 流石は竹である。


「な? 睨んだ通りだったろ?」


「何度も方向転換して、少なくとも3時間は歩き続けたけどね」と凛。


「全てはここへ至るまでのプロローグだったのだ」


「なんでもいいけどあたしはクタクタだよ!」


「私もー」


 沙耶と陽葵がその場にへたり込む。


(おほっ、これはこれは見事な……!)


 沙耶のパンツが見えている。

 スカートを短く穿いているおかげだ。

 綺麗な純白のパンティーである。

 いや、微かに黄ばんでいるようにも見えた。

 それもまたよし。


「おーい、刹那ー」


 凛の声でハッとする。


「どうした? 我が友、凛よ」


「どうしたもなにも、どうすればいいの? 竹は見つけたけど」


 そう言うと、凛は何歩か距離を詰め、耳元で囁いた。


「覗くならもう少しさりげなくね」


「な、ななな、なんのことだか」


「分かったから話を先に進めてもらえるかな?」


「お、おうよ」


 俺は竹に近づいた。


「あとはこいつを伐採して持ち帰るだけさ」


「打製石器で竹の伐採って可能なのかな?」


「無理だろうし、できたとしても危険だ」


「だったらどうするの?」


「素手でいく」


「「「素手!?」」」


 俺は「うむ」と頷き、実演してみせた。


「ふんっ!」


 手刀一閃。

 俺の攻撃によって竹がスパッと切れた。

 久しぶりの手刀だが、切れ味は衰えていない。


「こんな感じだ」


「……今日も絶好調ね」


 苦笑いを浮かべる凛。


「すっげぇー! 今のすごいカッコよかった!」


 沙耶が素早く立ち上がる。

 そして、別の竹に「アチョーッ!」と手刀を繰り出した。

 どうやら俺の真似らしいが、まるで威力が伴っていない。


「いでぇ!」


 当然ながら沙耶の手刀は竹に弾かれた。

 ポコンという妙に可愛い音が響く。

 真っ赤に腫れた手を見て、彼女は目に涙を浮かべた。


「凛ー、いだいよぉ、いだいよぉ」


 凛に泣きつく沙耶。

 そんな彼女を優しく抱きしめながら凛は言う。


「私たちは普通の人間なんだから、その辺は弁えないと」


「おいおい、それだと俺が普通じゃないみたいだろ」


「うん、普通じゃないよ」


 普通じゃない、か。

 昨日もそんなことを言われた気がする。


「やっぱり俺って“異端児”なんだな……」


「「「…………」」」


 誰も返事しない。

 代わりに冷ややかな視線を感じた。

 異端児というワードは中二病指定されているようだ。


「きゃあああ!」


 突然、陽葵が悲鳴を上げた。

 何事かと思って振り向くと、彼女の視線の先にイノシシがいた。

 ブタ君より格段に小さい一般的なサイズのイノシシだ。


「グルルルゥ……!」


 イノシシは前肢で土を掻きながら陽葵を睨んでいる。

 闘牛のようなオーラが漂っていた。


「ブヒィ!」


 迎え撃つのはブタ君だ。

 彼女は陽葵の前に立ち、敵のイノシシと対峙する。

 そう、ブタ君は実はメスだったのだ。朝食の時に知った。


「ブヒッ、ブヒィ!」


 おそらく警告であろう言葉を発するブタ君。

 するとイノシシはくるりと身を翻した。


「グビィー!」


 そして、イノシシは全速力で逃げていく。

 まるで「勘弁してくれー!」とでも言っているようだ。


「ブタ君、私を守ってくれたの?」


 陽葵の言葉に「ブヒッ」と頷くブタ君。


「ありがとー!」


 陽葵がブタ君の顔に抱きつく。

 パンパンに膨らんだおっぱいがブタ君の顔に押し付けられる。


「ブヒヒィ……ブヒヒィ……」


 スケベそうな顔でニヤけるブタ君。

 これでメスなのだから驚きだ。


(もしかしたら男なんじゃないか?)


 改めて性別を確認してみる。

 やはりブタ君はメスだった。


「さて、野生のイノシシも去ったことだし、作業を進めるか」


 竹をガンガン伐採していく。

 ここの竹はかなりの長さなので、伐採後に三等分にカットする。


 女性陣の仕事は、俺のカットした竹をブタ君に括り付けること。

 蔓を紐の代わりにして、ブタ君の背中に竹を固定させる。


「そろそろ手が痛くなってきたな。途中で紐が切れたら厄介だし、今回はこの辺にしておくか」


 ブタ君の背中に竹の束を装備させ、ライフラフトのある海へ戻った。


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