表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~  作者: 絢乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/43

032 沙耶の依頼

「陽葵ー、たくさん作るぞー!」


「おー!」


 朝食後、沙耶は陽葵と土器作りを始めた。

 色々な大きさの容器を作って利便性を高める狙いだ。

 土器の用途は幅広い為、量産して損はない。


「刹那ー、よろしく頼んだぞー!」


「おう」


 俺は一人で森へ向かう。

 沙耶に頼まれて、今日の晩ご飯に必要な物を調達する。


「いってらっしゃい」


 凛が声を掛けてきた。

 彼女の作る布団は完成まで秒読みの段階だ。

 既に布団の形をしており、そのままでも使えそう。


「凛のほうこそ(こん)を詰めすぎないようにな」


「ありがとう、刹那も無理しないでね」


 誰もが陽葵の誕生日に向けて取り組んでいる。

 そのことに気づいていないのは陽葵だけであった。


 ◇


 今日は大忙しだ。

 最初にするべきことは木の伐採。


「これが良さそうだな」


 太い幹の木に目を付ける。


「そいっ!」


 樹皮に縦の切れ込みを入れ、そこから皮を剥く。

 大根の桂剥きのようにめくれて気持ちいい。


「めくった樹皮も使い道があるが……」


 今回は使わないのでポイッと捨てる。


 そして、俺は手刀で木の伐採に取りかかった。

 精神を集中させた全力の一撃でスパッと根元の近くをカット。


 大木が豪快な音を響かせながら倒れた。

 周辺にいたシマリスや猿が驚いて逃げていく。


「このくらいあれば十分かな」


 8メートル程の長さにカットして完成だ。

 こうして綺麗な丸太が手に入った。


 ただ、このままだと持ち運びに苦労する。

 そこでこの丸太を4等分にする。


「グッ、流石に重いな……」


 計4本の丸太を両肩に担いで帰路に就いた。


 ◇


「すっご! 見た目に反してマッチョか!」


 丸太を持ち帰った俺に驚く沙耶。

 陽葵と凛もたまげていた。


「何度も往復するのは面倒だからな」


 丸太を保管庫の近くに置く。


「細かいデザインは俺が決めていいのか?」


 依頼人である沙耶に尋ねた。


「うん! 数もおまかせで! それだけあれば絶対に余るし!」


「余った分は薪にするから問題ないさ」


 俺は丸太の加工を始めた。

 まずは薄くスライスしたものを数枚。


「こんな感じでどう?」


「最高! これで料理が映えるよ!」


「それはよかった」


 俺たちの会話に首を傾げる陽葵。


「スライスした丸太を料理に使うの?」


「違う違う! あれはお皿にするんだー!」


 沙耶が嬉しそうに説明した。


「そういうこと。俺が依頼されたのは食器の製作なんだ。皿やサラダボウルなどを作ってほしいそうだ」


「そうなんだ!」


 沙耶が特に欲しがっているのは皿だ。

 今までは竹を縦に割った物を皿として使っていた。

 それはそれでいいのだが、それだけだと盛り方が決まっている。

 料理に拘りを持つ沙耶としては、他のバリエーションも欲しいところ。


「沙耶、これで十分か?」


 作業を進めて、4人で使うには多すぎる分の食器を確保。

 ついでだからブタ君のための大きなお椀も作っておいた。


「ばっちりだよ! あとは薪にしちゃってOK!」


「ほいほい」


 言われた通り残りの木材を薪にして、最初の任務が終わった。

 しかし、俺に休む暇はない。

 やるべきことはまだまだ残っていた。


「さて、と」


 竹の籠を背負って再び森へ向かう。


「刹那君、今度は何しに行くのー?」


 陽葵がつぶらな瞳を俺に向ける。

 土器作りの影響で、彼女の手は泥だらけになっていた。

 顔も少し汚れていて、どことなくアライグマを彷彿させる。


 そんな彼女を可愛いと思いつつ、俺は答えた。


「食材の調達さ」


「食材?」


「今日の晩ご飯のネタになる食材さ」


「具体的には?」


「まだ決めてない」


「えっ」


「森の中を歩き回って適当に見繕う予定だ――それでいいんだよな?」


 沙耶に確認する。


「うん! 理想を挙げても手には入らなかったら意味ないしね!」


「ということだ」


「そっかー! それもそうだね! 刹那君、ファイト!」


「陽葵も頑張ってくれ」


 軽く雑談したあと、俺は早足で森に向かった。


 ◇


 沙耶が晩ご飯に考えている料理。


 それは素揚げだ。

 昨日、俺が精製した綿実油を使うらしい。


 味付けはサッと塩をまぶすだけ。

 それだけで十分に美味い、と沙耶は豪語していた。


 俺もそう思う。

 極上の油と作りたての塩の組み合わせは最強だ。


「もう少し詳しく訊いておくべきだったな……」


 森を歩いてすぐ、俺は悩むことになった。

 素揚げに適したネタが分からないからだ。


 俺の料理に関する知識は乏しい。

 塩の抽出を後回しにしたことからも明白だ。


「それっぽいので攻めていくか」


 とりあえずシイタケを採取する。

 この島に来てから毎日食べている有能な食材だ。


 素揚げで食べたことはないが、きっと美味いはず。

 なにせシイタケの天ぷらは俺の大好物の一つだからな。

 天ぷらで美味いなら素揚げでも美味いに違いない。


「あとはこの辺も定番だろう、たぶん」


 アスパラガスとインゲンを獲得。

 味もさることながら彩りもよくなったはず。


「彩りと言えば!」


 ピンッと来た。


「たしかこの辺に……あったあった!」


 パプリカを発見。

 近くで見るとすごく艶やかだ。

 食品サンプルに見えなくもない。


「サンプルだと困るし、本物かどうか確かめねばならんな」


 これは抜け駆けやつまみ食いではない。

 食品サンプルでないことを確かめるための検証だ。

 そう自分に言い聞かせて、パプリカを囓ってみた。


「うん、美味い!」


 口の中にパプリカの味が広がっていく。

 辛みや苦みはなく、ほのかな甘味が感じられる。


「このパプリカは本物だ! サンプルなんかじゃない!」


 パプリカも背負い籠の中に放り込んでいく。

 これで緑色に続いて赤色も加わった。

 できれば黄色も加えておきたい。

 だが、しかし。


「黄色のパプリカは見当たらないな……」


 付近にあるのは赤色のパプリカだけだ。


「何か黄色い食材で素揚げに適した物ってあったかな」


 ラフトへ向かいつつ考える。

 この森には色々な食材があるから、何かしらあったはずだ。


「そうだ、いいのがあったぞ!」


 ある食材が思い浮かぶ。

 ワタ畑の位置を確認するためにジャンプして見つけた物だ。


 俺は身を翻し、駆け足で目的地に向かう。

 しばらく走り続け、森を抜けて草原に辿り着いた。

 ワタ畑とはまた違った植物が群生している。


「これは……想像以上だな」


 目の前に広がっている黄色い食材に感嘆する。

 そこにあるのはトウモロコシだ。


「ここのトウモロコシは不思議だな」


 成長スピードが物によって大きく異なっている。

 既に育ちきった大きい粒の物から、まだまだこれからの物まで。

 今回はお子様――ヤングコーンをいただくことにした。


「多めに持っておくか」


 ヤングコーンの素揚げは美味い。

 過去に食べたことがあるのだ。


「これでメイン以外は揃ったな」


 素揚げと聞いて最初から考えていたネタがある。

 それこそが今回の素揚げでメインを飾る食材だ。


「とりあえず戻るか」


 メイン食材の調達はあとに回す。

 その方が効率的だし、何より皆を驚かせられる。


「誰かの誕生日を祝うために駆け回るのって楽しいものだな」


 陽葵の喜ぶ顔を想像しながら帰路に就いた。

お読みくださりありがとうございます。

【評価】【ブックマーク】で応援していただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ