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無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~  作者: 絢乃


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030 シカとピューマ、感動の塩

 それはベンチに座っている陽葵が鼻歌を口ずさんでいる時のこと。


「ブヒィ! ブヒッ! ブヒッ!」


 突然、ブタ君が威圧的な声で吠え始めた。

 いつの間にやら真っ暗になった森を睨みつけている。


「ふぇ!?」


 素っ頓狂な声を出して固まる陽葵。

 彼女の向かいに座っている俺は酷く落胆した。

 左右に揺れ続けていたボインちゃんが止まったからだ。


「どうかしたのか、ブタ君」


 立ち上がってブタ君の横に行く。

 美少女たちが警戒感を強める中、そいつは現れた。


「キィィィィィイイイ!」


 甲高い鳴き声の正体――それはシカだ。


「ラッキー! ホンシュウジカだ!」


 ホンシュウジカはシカの中でも食材に適している。

 鹿肉の中ではクセが弱くて食べやすい。


「カモがネギを背負ってやって来たようなものだぜ!」


 どうしてシカが突っ込んできたのかは分からない。

 野生のシカは警戒心が強くて触れるのは困難なのだ。

 積極的に近づいてくるのは奈良公園のシカくらいである。


「もらったぁ!」


 俺はシカの顔面を殴りつけ、その場に倒す。


「相変わらず豪快ね」


 陽葵の隣に座っている凛が言った。


「捌け刹那! 今すぐ捌けぃ! ジビエの時間だぁ!」


 沙耶は柄の付いた石包丁を振り回して大興奮。


「任せろ!」


 俺はシカの角を掴み、放り投げようとする。

 その時、森から新たな野生動物が現れた。


「「「ひぃいいいいいいいいい!」」」


 女性陣が悲鳴を上げる。


「なるほど、こいつから逃げてきたわけか」


 現れたのはピューマだ。

 体長は150cm程で、ブタ君と違ってノーマルサイズ。

 無駄のない筋肉質な体とシュッとした顔が特徴的だ。


「安心しろ、問題ない」


 ブタ君と女性陣を落ち着かせる。


「ほ、本当に大丈夫なの?」


 陽葵が不安そうに尋ねてきた。


「ピューマの戦術は奇襲だ。正面からの戦いは得意じゃない。襲ってきたとしても負けないよ」


 ピューマは賢い生き物だ。

 本来なら既に退散していてもおかしくない。


「ガルルゥ……!」


 目の前のピューマは逃げる気がないようだ。

 距離を保って俺を睨んでいる。


「もしかして俺と戦う気なのか?」


 それはピューマらしからぬ愚かな選択だ。


「むっ?」


 ピューマの背後の茂みがカサカサと揺れる。

 そして、そこから3頭の小さいピューマが現れた。


「そういうことか」


 目の前のピューマが逃げないのは子供のためだ。

 俺が倒したシカを子供のエサにする予定だったのだろう。


「沙耶、事を穏便に済ませるため、鹿肉の一部をこいつらに分けてやる。問題ないか?」


「え、あ、うん! こんなにたくさん食べられないし、大丈夫!」


「オーケー」


 俺はシカを上に放り投げ、素早く手刀でカットする。

 シカは一瞬にして解体(バラ)され、鮮血と肉塊が地面に降り注いだ。

 いつも通り、皮・可食部・その他に分けている。


「ガルゥ!?」


 親ピューマが驚愕して跳びはねる。

 子供たちは何が何やら分からない様子で眺めていた。


「沙耶、必要な分を回収してくれ。残りをこいつらにあげる」


「了解!」


 沙耶は肉塊に近づき、竹の容器に好みの部位を入れていく。

 落ち着いて作業に取り組めているのは、俺が傍にいるからだろう。


「これで全部!」


「なら残りはプレゼントしよう」


 余った肉をシカの皮に載せて、親ピューマの前に差し出す。


「ガルゥ……?」


 親ピューマは警戒しつつこちらを見る。


「それはあげるよ、食べてくれ」


「ブヒッ! ブヒブヒ、ブヒッ!」


 俺の言葉が通じたのか、それともブタ君が翻訳してくれたのか。

 ともかく親ピューマが鹿肉を食べ始めた。


「ガルゥー!」


「ガウー!」


「ガー!」


 子供たちも続々と肉に飛びついた。

 こちらには目もくれず、美味しそうに食べていく。


「ガルッ!」


 食事が終わったようだ。

 親ピューマが俺を見ながら甘えるような声で鳴いた。


「これでお別れかな?」


 と思ったが、まだ去る気はないらしい。

 なんと親ピューマはその場で体を横にした。

 そこへ子供たちが群がっていく。

 どうやら食事のあとはお乳の時間みたいだ。


「わー! 可愛いー!」


 陽葵は立ち上がり、俺の近くに駆け寄ってきた。

 目を輝かせながらピューマを眺めている。


「ガルッ! ガルルッ!」


 お乳の時間が終わったようだ。

 親ピューマは起き上がり、何やら言ってから去っていく。

 子供たちはその後ろに続いた。


「子育てを頑張るママピューマだったみたいだな」


 ピューマの姿が消えたのを確認して呟く。


「母は強しって感じのたくましさがあったよね」


 凛の言葉に、俺たちは頷いて同意した。


「じゃ、調理再開だー!」


 沙耶が鹿肉を捌き始める。


「ブヒッ」


 ブタ君が俺の服を口で引っ張る。

 何事かと思って顔を向けると、ブタ君は鹿肉を見ていた。

 ピューマの食べ残しだ。


「いいぞ」


「ブヒィイイイイイイイイイ!」


 ブタ君は鹿肉を食い始めた。

 口を鮮血に染めながらバクバクと貪っていく。

 あっという間に完食した。

 実に気持ちのいい食べっぷりだ。


「こっちはまだ『いただきます』もしてないってのにー!」


 沙耶が調理しながら頬を膨らませる。

 彼女の手際は素晴らしくて、既に完成間近だった。


「こりゃ俺も急いだほうがよさそうだな」


 俺はシカの皮を持って移動する。

 ラフトから少し離れた場所にある焚き火で燻煙鞣(くんえんなめ)しを始めた。

 シカの皮も、革にすれば色々な使い道がある。


「見て凛、手が血まみれだよー!」


「私も。内臓ってぶよぶよして気持ち悪いね……」


 凛と陽葵はバラしたシカの後始末。

 体の骨や内臓を、ラフトから離れた場所に捨てている。

 それから血の付着した地面に砂をかけて綺麗にしていた。


 残っている部位は角だけだ。

 角は何かに使えるかもしれないので保管しておく。


「できたー!」


 沙耶が料理を完成させた。

 俺たちは作業を終えてテーブルに集まる。

 空腹だからか、俺を含めて皆の動きが機敏になっていた。

 一刻も早くメシを食いたい。


「じゃーん! 今日の晩ご飯はスライスした鹿肉のローストにワサビや塩をかけたもの! その他にも鹿肉とキノコを使ったかっぽ鹿肉(ベニソン)!」


「なんで『かっぽシカ』じゃなくて『かっぽベニソン』なんだ?」


「かっぽシカって言いづらいじゃん! それにシカって英語でベニソンでしょ!?」


「ディアーだよ」と凛。


「かっぽディアーってのもなんだか微妙だなぁ! やっぱりかっぽベニソンで正解!」


 沙耶は「そんなことより」と手を叩いて話を打ち切る。


「さっさと食べようよ! もうお腹ペコペコだよ! 真っ暗だし!」


「それもそうだな」


 沙耶の言う通り真っ暗だ。

 すぐ傍に焚き火がなかったら何も見えていないだろう。


「女性陣にブタ君、今日もお疲れ様! それでは!」


 俺たちは手を合わせ、「いただきます」で食べ始めた。

 そして、次の瞬間には全員が口を揃えて叫んだ。


「「「「うんまーい!」」」」


 塩が加わったことで、味が段違いに向上していた。

 今日の料理を食べたあとだと、昨日までの料理が雑魚に感じる。

 それほどまでに美味い。


「塩だけでこれほど変わるのか……!」


「だから塩が欲しかったの! 塩って最強っしょ!?」


 沙耶がドヤ顔で言い放つ。

 俺は「違いねぇ」と頬を緩める。


「こんなことなら初日に塩を作っておけばよかったぜ」


 俺のサバイバル力もまだまだだなと痛感した。


これにて5日目終了です。

6日目も毎日更新を継続する予定です。




「5日目はいかがでしたか?」




お楽しみいただけた方・続きが気になる方は、

【評価】や【ブックマーク】などで応援してやってください。


お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。


また、それらが既にお済みの方、ありがとうございます。

おかげさまでモチベーションを保つことができています。


引き続き応援していただけるよう頑張ります。


絢乃

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