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無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~  作者: 絢乃


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027 純白の草原

「あれ?」


 仲良く手を繋いで森を歩くこと数分、陽葵が何かに気づいた。


「こっち方面って今までに来たことあったっけ?」


 どうやら進路方向に違和感を抱いたようだ。


「よく気づいたな、初めてだぜ」


「じゃあ、なんで刹那君は目的の何かがこっちだって分かるの?」


「前に見たからな」


「えっ? どういうこと?」


 陽葵の頭上に疑問符が量産されていく。

 俺は繋いでいる手を解き、陽葵の頭を撫でた。

 そうして疑問符の数を1つにまとめてから答える。


「この島での生活が始まった日、俺はジャンプして木の上に行ったろ?」


「うん! よく覚えているよ! すごかった!」


「あの時に確認したのさ。このまま進むと草原があるってことをな」


「そうだったんだ!? その草原が目的地?」


「いかにも。念のために改めて確認しておこう」


 近くの木に跳び乗る。

 そこから何度も跳躍して頂上へ。

 さらにもうひと跳びして、木よりも高い位置に。


「よし」


 方向が正しいことを確認したら、そのまま地面へ。

 完璧な受け身で衝撃を流す。


「あんな高いところから落ちて平気とかおかしいよ、刹那君!」


「受け身を極めれば陽葵だってできるようになるぜ」


「えー、絶対に無理だよ!」


 たしかに陽葵には無理かもしれないな、と思った。

 とんでもサイズの胸がひっかかって衝撃を流しきれない可能性がある。


「それはさておき、進路方向は正しいと分かったぞ」


「おー! あとどのくらいで着くかな?」


「10分から20分程度だろう」


 俺たちは移動を再開する。

 当たり前のように手を繋いで。


「こうして手を繋いでいるとカップルみたいだな」


 自分の発言に興奮する俺。

 妄想が加速していって止まらない。


「刹那君が恋人だったら、毎日が驚きに満ちてそう」


 陽葵は頬を赤らめ、繋ぐ手の力を強めた。


「ああ、きっと周囲が羨む幸せな老夫婦になれるぜ、俺たち」


「老夫婦!? カップルじゃなくて夫婦になってる!?」


「じょじょ、冗談だ」


「刹那君の冗談はよく分からないよー!」


 陽葵が声を上げて笑う。

 どうにか話を紛らわせることに成功した。


「そ、そんなことより、ほら、見えてきたぞ!」


 いよいよ草原が近づいてくる。

 森に覆われた小規模の草原で、ある植物の群生地となっていた。


「わぁー! すごい! すごいすごい、すごいよ!」


 陽葵が「すごい」を連呼している。

 俺の想像を遥かに超えるレベルで感動していた。

 両手を口に当てて目に涙を浮かべている。


「な? 内緒のほうが感動できただろ?」


「うん! まるで雪が積もってるみたい! すごく綺麗!」


 草原に群生しているのはワタだ。

 綺麗な純白の木綿(コツトン)を種子に付けている。


「なんだか天国にいるみたい!」


 陽葵が両腕を広げてワタ畑を駆け抜ける。


「おいおい、俺たちはまだ生きてるぜ」


 と言いつつ、たしかに天国のようだ、とも思う。

 楽しそうに走る陽葵の姿が紛れもない天使だからだ。

 清楚系の可愛さがこの空間によく合っている。


(なんという可愛さだ……!)


 俺は息を呑んで陽葵の顔を見つめる。

 だが、その視線は次第に下がっていく。

 最終的にはいつもと同じ場所を凝視していた。

 今回は特にボインボインしていてたまらない。


「刹那君、刹那君」


「おほぉ、むしゃぶりつきてぇ」


「刹那君ってば!」


「あっ、はい」


 陽葵に体を揺すられて正気に戻った。

 いつの間にか妄想の世界に浸っていたようだ。


「私はこの白いフワフワの部分を集めたらいいの?」


「お、おう。そのフワフワがコットンだ。限界まで集めるぞ」


「了解!」


 陽葵と手分けしてコットンを収穫していく。

 だが、彼女は早々に弱音を吐いた。


「1つずつ採っていくのって大変だぁ……」


「現実世界だと専用のトラクターで収穫するからな」


「私たちもどうにか効率良く収穫できないのかな?」


「そう言うと思ったぜ。任せておけ」


 俺は両腕を広げ、両手を手刀モードにする。


「ソニックブレード!」


 シュッ!

 研ぎ澄まされた手刀を振り抜く。

 衝撃波が周囲のコットンを浮かせた。

 それに合わせて跳躍する。


「せいやー!」


 宙に浮いたコットンを漏れなく籠でキャッチ。

 全く間に籠の中がコットンで満たされた。


「ほれ、終わったぞ」


 コットン盛り盛りの籠を陽葵の前に置く。


「すごい……っていうかもう異常だよ! 刹那君!」


「トラクターに打ち勝つ男なのさ、俺は」


 陽葵の背負っている空の籠を受け取る。

 そして、その場で再び〈ソニックブレード〉を放つ。

 次に集めるのはコットンではない。


「やはりコットンよりは遥かに重みがあるな、種子は」


 それはワタの種子だった。


「コットンはまだ分かるけど、それは何に使うの?」


「ラフトへ持ち帰って栽培するのさ。砂辺をワタ畑に変えてやる」


「ほんとに!?」


「嘘だ」


「えっ」


「砂辺にワタ畑を作るわけないだろ」


「だから刹那君の冗談は分かりづらいってばー!」


「ふふふ、照れる」


「褒めてないからね!?」


 陽葵が楽しそうに笑っている。

 その顔を見ていると、己のコミュ力が高まっているのを感じた。

 無自覚ながら我がコミュ力は成長していっているようだ。


「ちなみに正解は綿実油(めんじつゆ)を作るためだ」


「綿実油? あぶら?」


「食用油だ。分かりやすく言い換えると質の高いサラダ油ってところか」


「サラダ油!? すごい! 刹那君、油を作れるの!?」


「ワタの種子があれば楽勝だ。圧搾して不純物を取り除くだけだからな」


「とても簡単そうには聞こえないけど……」


「ま、あとで実演して見せるよ。綿実油をどう使うかは考えていないけど、料理好きの沙耶が何かしらの使い道を考案するだろう、たぶん」


「コットンだったり綿実油だったり、ワタってすごく優秀なんだね」


「生命の維持に直結するものではないけど、生活の質を高めるという点においてはとてつもなく優秀だ」


「凛が何を作るのか今から楽しみだねー!」


「同感だ」


 陽葵と手を繋いでラフトに戻った。

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