表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~  作者: 絢乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/43

024 石包丁と味変チート

「包丁を作るってマジ!?」


「まさかの製鉄?」


 沙耶と凛が同時に言った。


「製鉄ではないよ」


 まずは凛の質問に答える。

 それから沙耶に言った。


「包丁といっても石包丁だけどな」


 石包丁は青銅器や鉄器が発達する前に使われていた包丁だ。


「俺にとっては不要だから説明していなかったが、魚を捌いたり竹を加工したりするなら使えるから教えておくよ」


 昔のツールなだけあって、石包丁の作り方は簡単だ。


「まずは適当な石を見繕って打製石器を作る。ポイントがあるとすれば、硬すぎる石は避けるってことくらいだな」


「硬すぎるとダメなの?」と凛。


「ダメというか、研磨する際に苦労する」


「そっか、包丁だから研ぐ必要があるんだ」


「そういうことだ」


 打製石器を用意したら、岩を使って加工する。


「加工に使う岩は、打製石器より硬い物がいい」


 加工方法は簡単だ。

 ただただ擦りまくればいい。

 そうすれば、柔らかい方が削れていく。

 つまり打製石器がツルツルになるわけだ。


「打製石器のデコボコがなくなったら、この工程は終了だ」


 手のひらサイズの小判みたいな石ができあがった。


「あとは仕上げだ。片面に刃を作って研いでいく」


 小判型の石器を平らな岩に置き、別の硬い石を打ち付ける。

 石器が割れないよう慎重にカチカチして、片面に刃を作った。


「これを研いでやれば完成だ」


 最初の加工と同じ要領で刃を尖らせていく。

 しばしば水を掛けつつ、何度も何度も擦りまくる。


「ふぅ、完成だ」


 3分ほどで完成した。

 本気の超高速加工を駆使したからこその作業時間だ。

 女性陣の場合は1時間以上かかることが想定される。


「ほら、この石包丁で捌くといい。切れ味は市販の包丁に劣らないぞ」


「本当!? 石なのに!?」


「本当だよ。人間の指なんざサクッと切れるから注意しろよ」


 沙耶は石包丁を何度か握りなおす。

 そうやって手に馴染ませているのだろう。


「まな板はあるか?」


 凛に尋ねる。

 俺はともかく、沙耶の場合はまな板が必要だ。


「ごめん、作ってない」


「問題ない。俺が作ろう」


 適当な木を伐採し、手刀で加工してまな板を作る。

 竹筒に入っている水で洗ってから、テーブルに置いた。


「沙耶、ここで捌くといい」


 まな板にカンパチを載せる。


「頑張る!」


「三枚下ろしの方法も説明しようか?」


「ううん、やったことあるから大丈夫!」


 この発言に凛と陽葵が驚く。


「カンパチを三枚下ろしにした経験があるの?」


「本当に!?」


「カンパチじゃないけど、このくらいの魚を捌いたことはある! 何度かね!」


 沙耶はカンパチを開き、ささらを使って中を綺麗に洗い始めた。

 ささらとは竹の串を束ねたタワシのようなものだ。

 その手つきを見るだけで、彼女が嘘を言っていないと分かった。

 俺には不要だが、普通の人間は下ろす前にこうした準備が必要なのだ。


「かなりの手際だな。何度かどころか数十回は捌いた経験があるだろ」


「そんなに!?」と驚く陽葵。


「バレたか!」


 沙耶はニヤリと笑った。


「この規模の魚を綺麗にするなら大量の水が必要だからな。だが、沙耶は竹筒1本分の水でサクッとやってのけた。大したものだよ」


 陽葵と凛が「おー」と拍手する。


「魚の質がすごくいいから作業しやすいんだよね」


「珍しく謙虚だな」


「珍しくは余計だし!」


 いよいよ三枚下ろしだ。

 ここでも沙耶の手つきには危なげが感じられなかった。

 滑らかだし、手順もはっきり覚えていて、動きに無駄がない。


「どうよ刹那! 恐れ入ったか!」


 沙耶が全ての作業を終える。

 トータルで10分程かかったが、環境を考慮すれば及第点だろう。


「実に素晴らしい腕前だった」


 心からの賞賛だ。


「はっはっは! なんだったらこの先もあたしがやろうか!?」


「せっかくだしお願いしよう」


「えっ、マジでいいの!?」


「先ほどの技量を見たあとだからな。安心して任せられる」


「刹那君にそこまで言わせるなんて! 沙耶、すごいじゃん!」


「やったー! で、何にする!? 刺身か!? 刺身なのか!?」


「そうだな、刺身にしよう。ホタテも含めて全て刺身だ。ただ、スズキとカンパチの一部は普通の刺身じゃなくて、皮を炙って食べよう。また違った食感と美味しさが楽しめるぞ」


「それ賛成! そうしよう! そうしよう!」


 沙耶は上機嫌でスズキを捌き始める。


「陽葵は食器の用意! 縦に割った竹に刺身を盛るよ! 凛は本ワサビを擦って! 刺身と言えばワサビだから! ブタ君はキノコの調達だ!」


 沙耶がテキパキと指示を出す。

 まるで大人気レストランの料理長だ。


「で、俺は?」


「刹那は石包丁を作って! もっと長い包丁がほしい! あと石を直に握っている状態だと作業しづらいからどうにかして!」


「はいよ」


 沙耶の要望にお応えする。

 石包丁に木で作った柄を装着し、接着剤で固定する。

 接着剤といっても市販の木工用ボンドではない。


 黒い土の塊だ。森の一部分にあった。

 この土は熱することで液状になり、冷ますと固まる。

 言うなれば天然のアスファルトだ。


「できたー!」


 調理を終えた沙耶が両手を挙げて叫ぶ。

 同じ頃、俺たちも作業を終えて戻ってきていた。


「今日の晩ご飯は沙耶様特製お刺身の盛り合わせとかっぽキノコだ!」


 かっぽキノコとは、かっぽ鶏のキノコ版である。

 数種類のキノコ、山菜、輪切りのレモンが詰まっている。


 俺たちはベンチに腰を下ろす。

 俺の隣は陽葵で、正面に沙耶。

 沙耶の隣には凛が座った。

 ブタ君は俺と沙耶の横で伏せている。


「「「「いただきまーす!」」」」


「ブヒィー!」


 こうして晩ご飯が始まった。


「まずはなんといっても刺身だよな」


 竹の器に盛られた刺身に箸を伸ばす。

 スズキのカンパチを摘まみ、ワサビを軽くつけて口に運ぶ。


「うめぇ!」


 醤油がなくても十分な美味しさだ。


「せめて塩があればなー!」


 沙耶が「塩を作ってくれ」と目で訴えてくる。

 作ってやろうかと思ったが、時間がかかるので無視した。

 塩を作るのはまたの機会だ。


「かっぽキノコも美味しいー!」


 陽葵が熱々のキノコを口の中ではふはふしている。

 どういうわけか、はふはふに合わせて胸が揺れていた。

 俺はさりげなくチラ見、ブタ君はガン見で食いつく。

 ブタ君が腰を浮かせると、沙耶が反応した。


「こらブタ君! お座りしなさい!」


「ブヒィ……」


 沙耶に叱られてしょんぼりのブタ君。


「ほれ、ブタ君のご飯だぞ」


 俺はホタテのヒモや生殖巣をブタ君にあげる。

 問題ないと思うが、念のためにどちらも火を通しておいた。


「ブヒッ! ブヒィィィ!」


 嬉しそうに頬張るブタ君。

 その姿を眺めているとこちらまで笑みがこぼれた。


「やっぱキノコはダメだなー」


 沙耶がかっぽキノコに向かって不満をこぼす。


「不味いか?」


「いや、美味しいんだけどさ、飽きてきたんだよね、この味」


「あー、それは分かるかも!」と陽葵。


「調味料が少ないからいつも同じ味だもんね」


 凛も同意する。


「塩があればなぁ!」


 再度の塩を用意してくれ光線だ。


「今日は面倒だからパスだ」


 沙耶は「ちぇ」と唇を尖らせる。


「だがまぁ、味を変えたいという気持ちは理解できる。だから今日限りの味変チートを使ってやろう」


「うおおおお! なになに!? なにするの!?」


 興奮する沙耶。

 俺は「待ってな」と言い残し、ラフトに入る。

 そして、バックパックからある物を持って戻った。


「コイツだ」


「すげぇぇぇぇ! って言いたいところだけど、それお菓子じゃん!」


 そう俺が持ってきたのはスナック菓子だ。


「コイツが革命のアイテムになる」


 中を粉々にしてから袋を開けた。


「これは魔法のふりかけだ。食べてみろ」


 沙耶のキノコにスナック菓子パウダーをふりかける。


「そんなに変わるわけ――変わったぁああああ! すご!」


 100点満点の反応をする沙耶。


「そんなに変わるの!?」


「私も食べてみたい」


 陽葵と凛が自分たちのかっぽキノコを向けてくる。

 俺は「いいだろう」と微笑み、スナック菓子パウダーをふりふり。


「ほんとだ! 全然違う味になった!」


「いつもと違う味で新鮮だからなのかな? すごく美味しく感じる」


「これがスナック菓子の正しい使い方さ」


 普通に食べても腹の足しにならないスナック菓子。

 しかし、この島では即席の味変道具として大活躍だった。


「ではでは、俺も味変してっと……」


 俺はドヤ顔で自分のかっぽキノコにパウダーをかけようとする。

 だが、配分を考えていなかったせいで、粉が残っていなかった。


 そんなこんなで、楽しいディナーと共に4日目が幕を閉じるのだった。

これにて4日目終了です。


続きが気になる方、お楽しみの方、

【評価】や【ブックマーク】で応援していただけると幸いです。


何卒、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ