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無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~  作者: 絢乃


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016 交通整理

 沙耶の釣り上げたナマズは結構な大きさだった。

 俺たち4人の1食分としては申し分ない量だ。


「やったな! ナマズは食べやすくて美味いぞ!」


「本当!? あたし、やっちゃった感じ!?」


「うむ、やっちゃった感じだ。実にやっちゃったぞ!」


「やったあああああ! やっちゃったぁあああ!」


 沙耶は両手を挙げて喜ぶ。

 それからナマズを掴もうとして、眉間に皺を寄せた。


「うげぇ、ヌメヌメするしなんだか顔が怖い」


「あとは俺に任せろ。早く川に戻してやらないといけないからな」


「えっ、返すの!? 食べないの!?」


「食べるけど、食べるのは今日じゃない」


 俺は口の大きな竹筒を手に取った。

 その筒を指で突いて無数の穴をあける、筒の両端に紐を付ける。

 それから筒の中にナマズを押し込み、筒の口を塞いで川へ戻す。


「天然のナマズは獲ってすぐに食べると不味いんだ」


「不味いの!? 食べやすくて美味いんじゃ?」


「それは下処理をしっかりした場合の話さ」


「その下処理が筒に押し込んで川に浸けるってこと?」


「いかにも。これは〈泥抜き〉といって、何日かメシを食わせないことで体内の泥を吐き出させるんだ。できればラフトに持ち帰ってやりたいところだが、エアポンプのないこの環境だときつい。ナマズは酸欠になるとすぐに死ぬからな」


「ほっへぇー! ナマズって見た目に反してデリケートな奴なんだ!?」


「そういうこと」


「刹那は物知りだねー、何でも知ってるじゃん!」


「昔、一山当てようとナマズの養殖に挑戦したことがあってな」


「マジ!?」


「嘘だ」


「なんだよその嘘! 意味分からないし!」


 沙耶の笑い声が響き渡る。

 俺の冗談が上手く決まったようだ。

 コミュニケーション能力の成長を感じる。


「ナマズを釣ったんだし満足だろ? 戻るとしよう」


「いいや、ダメ!」


 なんとまだ物足りないらしい。


「どうしてだよ」


「このまま戻ったらあたしの釣った魚が何もないじゃん!」


「ナマズを釣ったことに変わりないし別にいいだろ」


「あたしはあたしの釣った魚をみんなに振る舞いたいの! 凛や陽葵、それに刹那にもね! 今日の晩ご飯はあたしが中心になるんだ!」


「なるほど、そういうことか」


 俺はニヤリと笑い、人差し指を立てた。


「それだったらいい考えがある」


「いい考えって?」


「嫌がりそうだからあえて言わなかったんだが、実は簡単に魚を釣りまくれる“裏技”が存在するんだ」


「裏技!? マジ!?」


「大マジだ。このままだと全員分の魚を釣り終える前に日が沈んでしまうから、悪いがその裏技を使わせてもらうよ」


「いいよ! 釣れたらなんでもOK! あたしは刹那が釣った魚を食べるから、あと3匹釣らせて!」


「すぐに準備しよう」


 俺は靴と靴下を脱いで川に入り、秘技〈交通整理〉を発動した。

 周辺の岩を持ち上げ、テンポよく投げていく。


 ナマズと同じく岩の間に隠れていた川魚が混乱して暴れ回った。

 いきなり隠れ家をぶっ壊されて驚いているようだ。


 そんなことには目もくれない。

 気にすることなく作業を進め、川の中に岩の袋小路を作った。

 この袋小路に日光が入らないよう、竹や葉っぱを積んでいく。


「これでよし」


「なにが『よし』なのか分からないんだけど!?」


「まぁ見てなって」


 ほどなくして結果が出た。

 多くの川魚が次々に袋小路へ飛び込んでいくのだ。

 あとは出入口を岩で塞げば完成だ。


「これが俺の裏技――」


 袋小路の上に積んだ日よけを取っ払う。

 大量の魚が窮屈そうに密集していた。


「――釣り堀大作戦だ!」


「すごっ! こんなの釣り堀じゃん!」


「今しがた俺がそう言っただろ!」


「そのツッコミ待ってました!」


 沙耶が満足気に笑う。


「あとはこの釣り堀に針を垂らせばサクッと釣れるだろう」


「よっしゃー! 任せておいて!」


 沙耶は直ちに釣りを始めた。

 案の定、ものの数秒で魚がヒットする。


「そりゃー! うおりゃー! フィーッシュ!」


 瞬く間に3匹のイワナを釣り上げた。


「ミッションコンプリート!」


 沙耶が両手を挙げて叫んだ。


「これでもう満足だな?」


「うん!」


「じゃ、この釣り堀は潰すぞ」


 そう言って岩の囲いをバラす。


「なんでさー!? そのままでよかったじゃん! 明日も釣れるよ!?」


「そのままにしたら壊滅するぞ。それにこれだけ密集していたらストレスが半端ないから、釣ったところで質が悪くて不味い」


「そりゃいかん!」


「釣り堀なんざ簡単に作れるし、必要に応じて作ればいいさ」


 沙耶は満面の笑みで頷き、釣り竿を俺の背負い籠に放り込む。

 それから川に浸している籠を抱えた。

 籠には俺の釣った分も含めて4匹のイワナが入っている。


「ナマズの入った竹筒をラフトの近くまで移動させたら戻るとしよう」


「了解! ナマズの筒は私が持つよ! 犬の散歩を思い出す!」


「犬を飼っているのか」


「いいや、飼ってなーい!」


「なんじゃそりゃ。まぁいい、任せた」


 ナマズの筒から伸びる紐を沙耶に渡す。

 彼女はそれを持って川沿いを歩き始めた。


(犬の散歩か……言い得て妙だな)


 沙耶に引っ張られて川を進む筒を見て思った。

 たしかにシルエットは犬の散歩に似ている。

 ただ、犬と違って可愛げはない。

 なにせ筒だからな。


「刹那と一緒だったらこの島での生活も楽しいなー!」


「今は問題が起きてないからな」


「問題って、例えばどういうの?」


「猛獣に襲われて怪我をするだとか、風邪や食中毒に罹るとか、あとは台風が直撃してラフトがやられるとかだな」


「うはー! どれもやばいじゃん!」


「そうなんだよ。どれか1つでも遭遇したら、楽しい楽しい生活が破綻する」


 などと言ったまさにその時だった。


「ちょ、アレ、まずくない?」


 沙耶が足を止める。


「実にまずいな」


 あまりの恐怖で沙耶の顔が引きつっている。

 無理もないことだった。


 前方からワニが迫ってきているのだ。

 5メートル級の特大サイズで、間違いなくアリゲーター種だ。


「どうしよ!? 刹那、逃げられる?」


「俺は大丈夫だが、沙耶は無理だろうな」


「ひぃぃぃぃぃぃ!」


 知られていないが、ワニの移動速度はそれなりに速い。

 時速20キロ以上、個体によっては30キロを超えることもある。

 俺たちに迫ってきているワニも30キロ超えの猛スピードだ。

 平均的な高校生である沙耶が逃げ切るのは無理があった。


「アリゲーターは沼に棲息しているものだ。それが川にいるということは、もしかすると近くに沼があるのかもしれないな」


「そんな冷静に分析してる場合じゃないっしょー! おしまいだよ!」


 沙耶が絶叫する。


「案ずるな、自然に強い朧月刹那がいるではないか」


 素早く背負い籠を置く俺。


「俺は常軌を逸した大きさのイノシシを軽く倒した男だぜ。それに昨日は陽葵を守ってゴリラをボコボコにした」


「じゃ、じゃあ、大丈夫なの!? 刹那なら勝てる!?」


「まぁな。100回戦えば1回は勝てるぜ」


「ダメじゃん! それ勝てないってのと同じだよ!」


「でもやるっきゃねぇ、100分の1を引き当てる時だ!」


 俺はワニに突っ込んだ。

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