フライドチキン!
今日は誕生日だ。
一年に一度だけの、少し特別な日。
目の前に自分の好物ばかりが並べられている。
だけど少しだけズレていた。
「フライドチキンと唐揚げってなにが違うんだろう?」
前者をリクエストしたのだが、目の前にあるのは後者。
「味?」
さして興味なさそうに弟は言った。スマホから視線を上げることもない。
本当は知っている。テレビでおかっぱ少女が言っていたから。
「パスタって麺類を表すイタリア語なんだよな。知ってる知ってる」
すこしヤケ気味に目の前に置かれた焼きそばをつつきながら言う。
焼きそばは好きだ。
カルボナーラとかジェノベーゼとかも好きだ。
そして今日は後者の気分だっただけだ。
香ばしいソースの香りが食欲をそそる。
「まあ、お前が本当に言いたいことは父さんもわかっているさ」
最後の一皿を並べた父がテーブルについたところで、それの上にろうそくを立てて火を灯す。
「テラシュール」
「草」
小麦粉と卵を混ぜて焼いたもの。
上には黒いソース。
「これ、お好み焼きですよね?」
「ケーキですけど?」
弟がイ○スタに上げたその写真は少しもバズらなかった。
ツイ○ターに上げたらちょっとだけいいねがついた。
男三人ワイワイ言いながら食べたケーキは忘れられない思い出になるだろう。たぶん。
作者には純文学がわからぬ。