異世界転生承ります。
今日調べるのは佐竹竹三、27歳。
○○フードに努める男である。
随分とブラックな企業のようで、その男をこき使って睡眠時間まで削る作業を続けさせている。
このまま続けていれば過労死という物になるのは確実だろう。
その前に気が狂って殺人何てことにもなりかねない。
社畜=奴隷なんて今時普通のはなしだろうか。
俺の目的は、彼を殺すことが目的である。
だが別に殺人を楽しむとか、殺し屋だという話ではない。
俺は送り屋と呼ばれる、いわゆる死神のようなものだ。
まっ、ただし、普通の死神とは少し違うんだけどね。
「よし行くぞ」
黒の帽子と黒い服に身を包み、トラックに乗り込んだのがこの俺だ。
まあ俗に言う名前なんてものは持っていないが、どうしても呼びたいというならスケールとでも呼んでくれ。
俺はアクセルを踏み込んだ。
「うわあああああああああああああ?!」
時速百キロでトラックにひかれた、普通人間は死ぬのだ。
ただし、これは本物のトラックではない。
「きゃあああああああ、人が死んでる!」
「誰か救急車を呼ぶんだ! 早く!」
他の人には見えていない精神体のようなものだ。
周りの人間には、ただ倒れただけにしか見えていないのである。
「じゃっ、運ぶかな」
意識もない魂の状態で、送るのは天国でも地獄でもない。
導きの部屋と呼ばれる場所だ。
「毎度、お届けに上がりました。ここにハンコをお願いしまーす」
「ああご苦労様ー、じゃあ次は……」
しっかりと渡した彼が何処に行くのか。
彼はこれから別世界に転生するのである。
本人が望む望まないを関わらずだ。
さて、彼が勇者になるか、はたまた魔王となるか、それともただ平和に暮らして行くのかは彼の自由だが、サッパリ俺には関係のない話である。
では次の人物を送る為にでかけようか。
依頼人もこの神だけではないからな。
神から悪魔、果ては異界の者の依頼を受けるのが俺達の役割だ。
次の勇者様を送りに行こうか。