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第7話

 泥は、私の足元に這いつくばっているモノだけでなく、四方八方から数を増やしてやってくる。


 神経を研ぎ澄ませ、魔力の源をたどって主を探そうとしたが、できない。遠すぎて探知できないところにいるのか、気配遮断の魔術でも使っているのか……。この魔術の滅んだ世界で、こんなことができる奴なんて、いないはずなのだが。


 しかし、相手が誰だろうと、私の平穏を乱すものは敵だ。


例えこの泥が魔王直々に遣わされた魔族だとしても、容赦してやるつもりはない。正直、魔王本人がやってきたとしても私は行動を変えない。


 しかも、せっかく美味なるケーキを買って浮足立っていたところに水を差されたのだから、今の私はすこぶる機嫌が悪い。


 急いで周囲に結界を張って、まずは私と剣持勇也、泥たちが周囲の人々に見えないようにする。これで、他人がこの道を通りかかったとしても私たちを目撃することはない。


 次に防御用の籠を作って、眠っている剣持勇也を中に入れて、宙に浮かべる。怪我でもされては、こちらのプライドに関わるからな。


 泥たちは剣持勇也を狙っているので、彼の入った籠を私の頭の真上に浮遊させる。


 じりじりと、剣持勇也に向かうため、私の体に這いあがってくる泥。


 ぬめぬめとした触感。鼻を覆いたくなるような腐臭。一瞬でも珈琲のことを、こいつらに似ていると思ってしまったのが、ひどく申し訳ないと思った。


「……塵も残さず消えるが良い。■■■■■……!!」


 この世界の人間には発音できない呪文を唱え、右手の人差指を空に掲げる。


 この術式に従って、泥たちには最高によく効く火炎魔術が発動。私の体に這いつくばっていたモノも含めて、すべての泥に、一瞬で炎が燃え広がっていった。


「グオオォォォォ……!? アアアアアアアア!!」


 泥どもは、断末魔の悲鳴をあげて、塵も灰も残らず消えていく。


 この魔術によって、私にも炎がまとわりついたが、私の体はこんなもので火傷するほどヤワではない。軽くはたけば、跡も残さず綺麗に炎は消えた。


「まったく、こんな泥風情に魔術を使ってやることになるなんて、思わなかったな。」


 元の世界では、私が泥のような下級魔族ごときに魔術を使ってやるなんて、ありえない事態だったのだが。


 さて、あとは剣持勇也を家に送り届けるだけだ。彼には災難だったが、翌朝目覚めれば、すべて夢だと思って忘れているはず――


「あ、亜久津さん……? い、今の何だったの……?」


 頭上から、聞こえるはずのない声が聞こえた。


 声のした方を見上げると、剣持勇也が怯えた様子で……しかし、はっきりと目を見開いて、私を見つめていた。


「そ、そんなバカな……!!」


信じられない!! 魔族でも半日は眠り続けるはずの邪眼の力だぞ!?

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