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君と僕

作者: 國成 皇龍


ーどうして君なんだろうー



君と出会ったのは人気のない海岸だった

誰もいない砂浜に君は立っていた

美しく光る波が君の白い肌を照らしていた

僕はただただ、君の姿を見つめていると

不意に君が振り向いてきた

「ねぇ、海は綺麗ね」

鈴が弾んだかのような声

僕はあまりにも衝撃的なことで言葉を失う

君は少し微笑み

「私、海が好きなの」

海に語りかける

僕は彼女と海を見つめ

「そう」

乾いた息が喉を通るのがわかった

「私、もう行かなくちゃ」

そう行って君は浜辺を後にした

僕はこの衝撃的な出会いが忘れなれなかった




次に君と会ったのは雨が降る夕方だった

だんだんと雨足が強くなり僕は堪らなく店の軒下で雨宿りをした

そこへ君が入ってきたんだ

「ああ、酷い雨」

君は濡れた服をタオルで拭き

「はい、貸してあげる」

新しいタオルを僕に渡してきた

「あ、ありがとう」

僕はタオルを受け取り体を拭いた

君は雨を見つめてため息をつく

「残念、この雨じゃ海が見れないなあ」

悲しそうに言った

僕は君の悲しそうな顔をみたくなかった

だから意を決して

「お茶でもしない?」

誘ってみたんだ

まあ、この時は期待していなかったんだが

君は嬉しそうに

「喜んで」

微笑んだ

可愛らしい花が咲いたような笑顔だった


僕は君と一緒に近くの喫茶店に入った

そこで君と他愛もない話をした

お互いの名前や年齢、仕事や趣味

楽しい時間はあっという間に流れて行く

気づくと雨は上がり夜の星が顔を出していた

君は

「もう帰らないと」

言ったので僕は

「送ろうか」

聞いた

すると穏やかな声で

「ありがとう、大丈夫だから」

言って去っていた

なんて可愛らしいんだろう

僕はただ、君が去って行った後を見つめていた



次に君と会ったのは蝉が鳴く暑い日だった

この日、僕は暑さにやられて風邪を引いた

風邪薬をもらいに薬局に行くと君がいたんだ

長く伸びた髪を纏め上げ、汗が滲んだ額をタオルでふいていた

僕を見つけると君は嬉しそうに微笑み

「また、会ったね」

言いながら手招きをした

僕は君の横に座った

ちょっと日焼けした君の肌に汗が流れる

「暑いね、風邪引いたの?」

大きな瞳で僕を見上げる

僕は声を出すのがしんどかったので頷くだけにした

君はそうと呟き、遠くを見た

「私、今日が最後なの」

君は消えそうな声でいた

僕は意味が分からなくて首を傾げた

君は消えそうな笑顔を向けて去っていた



あれから何年たっただろう

僕は今でも忘れられないでいる

君との思い出を

あの時、君は何が言いたかったのか

もう1度、君に会うことが出来たら教えて欲しい



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