表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

排除されたボクらの、疾走。

此処は理想の世界だと、アイツラが言う。犯罪の因子を排除し、選ばれた質のよい人間が安心して生きられる世界だと。

ボクらは『生存可能エリア』から駆逐された。セーフティレベル0という、最悪の危険因子として。


正しい世界は、異端を見捨てた。ボクらは唯一の望みの為に反逆を始める。

冷たい風の吹き荒ぶこの草原から。







ミオウは鈍器のような大岩に腰掛け、立てた右膝に腕を乗せていた。青味の黒髪がなびき、額を夕暮れの風にさらす。襟ぐりが開いて肩が少し出るので、冷えてくると麻布をマフラー代わりに巻いている。

視界全てをくまなく監視していた彼の眼が、一瞬止まって左を向いた。

「…背後に音もなく来んな。ていうかさぁ、見張り変わって、ラン」

「ふふふふー、変わるつもりはないんだよねー」

ミオウの後ろでヘラヘラ笑う少女は、白いブルゾンの裾を引っ張っていた。だるそうに首を回して足元をじっと見る。鳶色の直毛が顔に影を作るので、表情は読めない。

「テイキホウコク。してあげにきたんだけど?」

「…早く言って。んで、とっとと戻って」


「シオンがまた『中』に行ってたってさー。無謀ってか、バカかなぁ?」

「どっちもでしょ。悪運だけ強いガキだけどね」

ランは俯いたままクツクツと笑って、そのまま暗い森のある方角へ歩いていった。足音はない。

「ミオー、時間には来てよ。一応リーダーなんだからさ?」

だいぶ遠くから聞こえてきた声に、ミオウは溜め息をついた。

「リーダー、ね…」


立ち上がって見上げた空は赤黒く、此処が『生存不可能エリア』だと思い知らされる。此処で生き残っている人間などごくわずかだ。ほぼ全員が何らかの特殊技能を持っている。

その中に 『スクラップ』と呼ばれる集団に属す、9人の異端がいる。彼らの望みはただ一つ、生きることのみ。そして、若干19歳のミオウが『スクラップ』のリーダーなのだ。


「熟してないにも、程があるんだけどな」


つぶやいた彼の声は荒れる風にかき消された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ