鹵獲品の価値
サササササッ………サササササッ。
「フンッ!!」
ドゴッ!!
「ピギャアアアアアッ!?」
ゴブリンは背後から不意を付いて襲い掛かった俺の一撃を受け、あっけなく灰へと還った。
「よし、結構やれるもんだな」
ゴブリン共を狩った初戦闘の後、探索は順調に進んでいた。
道中は基本的に敵と出会っても闘わず、不意打ちできそうな時や一対一で闘えそうな時だけ闘う……そのスタンスの為、戦闘しても大した怪我を負うことなく魔物を狩る事が出来ている。
まあ、今の所出会った魔物はゴブリンのみだが。
それにしても暴力を振るう事、振るわれる事への忌避、躊躇い、恐怖………初戦闘を経てそれらを乗り越える事ができたのは行幸だった。
あの時に覚悟が出来てなかったら俺は未だに迷宮の片隅にて動けずにいただろう。
そう考えれば現状はいい方向へと向かってると言えた。
ゴブリンとも闘えてるし武器の調達も出来ている。
しかしその段階になって俺は新たな問題に気づく事になった。
俺は今しがた倒したゴブリンの死体を漁り、結晶と戦利品の武器を回収する。
このゴブリンは持っていた武器は槍だった。
だがその槍は石器時代に使われていたような尖った石が穂先がついた木の棒みたいな代物で、しかも例によってゴブリンサイズで短い。
俺はこの槍は破棄する事にした。
探索中の戦闘においては一対一か不意打ちという形ではあるがこなせるようになってきた。
問題は奴らが落としたドロップアイテムにあった。
「どいつもこいつも武器がボロ過ぎんだろ。 鹵獲した武器が使い物にならんてどういうことだよ」
ゴブリン共が使っていた武器は基本的にボロい不良品が多い。
奴らが使っていた武器の性能が知りたくて何度か鹵獲品で闘ったのだが戦闘中に壊れること壊れること。
壊れなかったとしても大きく刃こぼれしていたり唯でさえボロい武器が更にボロくなって使い物にならなくなる。
正直、1回の戦闘しか耐え切れない武器しか手に入らんとは思わなかった。
「こんなもん使ったってすぐ壊れそうだもんな」
俺は槍を壁に向かって投擲した。
槍は壁に一直線に飛んでいき衝突した瞬間にはばらばらに破砕した。
「やっぱり宝箱に期待するしかないのか」
これまでに俺が見つけた宝箱は全部で4つ。
その内武器が入ってた宝箱は2つでスタンガンとバールが入ってたやつだ。
残りの2つの宝箱から手に入ったのは水色の液体が入ったガラスの小瓶と乾パンの缶詰&水のセットだった。
宝箱に入っているのは武器だけじゃないらしい。
今の所、武器はバールがあるので何とかなっているが複数の敵と戦うならもっといい武器がほしいというのが正直な気持ちだ。
それに武器の調達も大事だがそれ以外のアイテムも重要だ………特に食料なんかは自生してる植物は見当たらないしゴブリンも倒したら灰になるので食料になりえない。
入手できるかどうかで生死に関わる。
武器、そして食料………それらを入手する為にも宝箱は積極的に探していかねばならない。
発見した宝箱は袋小路や小部屋等に置かれていたのでそういう所がありそうなエリアがないかスマホのマップを起動して探してみる。
長時間の探索で広範囲をマッピングできているが群れたゴブリンが居た場所は避けるように探索していたのでマップにはまだマッピングできていない黒く塗り潰されている場所が多い。
そんな未探索エリアへの迂回路がありそうな場所に当たりをつけると俺はその場所へと向かった。
ギィー ギギー ギギッ
おーおー、いらっしゃるいらっしゃる。
ゴブリンの群れを避けるように迂回しながら進んでようやく辿り着いた一つの小部屋、中を覗くとゴブリン共がたむろってやがりました。
ちくしょう。
探索方針を考えるならさっさと退散すればいいのだがこの小部屋の中にはなんと宝箱が2つも設置されていたのだ。
このまま退散するにはあまりにも惜しい。
何とかできないものだろうか、と小部屋の中の様子を伺ってみた。
小部屋の中には4体のゴブリンが居り、小部屋の中に設置された宝箱の周囲に陣取っていた。
まるで宝箱を守っているように見える。
こういう風に取りにくい所にある宝箱の中身ってゲームとかだと大抵レアアイテムだったりするんだよね。
そう考えると益々見逃したくなくなるな。
俺は宝箱を奪取すべく考えを巡らせた。
闘って分かった事だがゴブリン単体ははっきり言って弱い。
荒事に慣れていない俺でもバールを振るうだけで十分ダメージが与えられていると思うし、頭を狙えば一撃で倒すことも可能だ。
だが一撃必殺で倒せるのは大抵不意打ちで襲い掛かった時だけだ。
こちらの存在に気付かれた時は相手も動くし攻撃すれば防御される。
倒せることは倒せるが時間がかかって手こずってしまう。
相手が複数いる状況で手こずってしまえば反撃を食らってしまう可能性が高い。
武器は持っているが防具を身に着けている訳ではないのでゴブリン共のボロい武器でも当たれば怪我を負ってしまう。
先のことを考えると怪我を負うことは避けるべき、そう考えてリスクの高そうな時は闘わないようにしてきた。
今回も出来れば手傷を負うことがないように闘いたい。
そうするにはどうすればいいか。
うーん、問題なのはゴブリン共が群れている事なんだよね。
ようするにそれを分断し、一対一で闘えるようにできればいいのだ。
俺はしばし熟考し、そして昔テレビで見たある方法を思い出した。
今まで出会ったゴブリンの性質を考え、その方法が通じるか想定してみる。
……………うん、十分にいけそうだ。
もし失敗したらその時は逃げればいい。
俺はバールを手に小部屋へと乗り込んだ。




