表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

ヘルプミー

 



 ノーマルマップを閉じ、他のアプリを取ろうと再びダンジョン・ストアのアプリを開こうとした時、俺はある事に気が付いた。



 「あれ? DPが減ってる?」



 メイン画面のウェジットに表示されていた『50DP』の表記が『40DP』に変わっていた。



 「もしかしてアプリを取ると減るのか」



 DPが何を意味するのか分からなかったがノーマルマップを落としたことで減ったとするとポイントやお金のようなものに当たるのかもしれない。


 もしそうならアプリは無尽蔵に取れるわけじゃ無いということ。


 もう少し慎重に取るアプリを選んだほうが良さそうだ。



 「う~ん、無尽蔵に取れないとなるとどれを取るべきか悩むな」



 それぞれのアプリの説明文を読んでもたいした事が書いてないのも悩む原因である。


 例えば今、画面中央に映っている『ダンジョン・ショッピング』のアプリだと『ショッピングが出来ます』としか書かれていない。


 他のアプリの説明も似たり寄ったりだった。


 こんな説明を読んだだけじゃあ即決できそうに無い。


 もう少し現状を把握してからどれを取るか決めた方が良さそうだ。


 参考がてらに他のアプリの説明にも目を通していく。


 ちなみにさっき取ったノーマルマップの説明も読んでみたが『マッピングが出来るよ』と書かれていた。


  ………一応、ちゃんと的を得た説明にはなってるので読んでおいて損ってことは無いだろう。


 しばらくの間、俺はスマホとにらめっこを続けた。




 ………

 ……

 …




 スマホをいじってる内に気が付けば結構な時間が経っていた。


 そろそろ探索を再開しなきゃな……と立ち上がった、その時だった。


 コツコツ……と足音が聞こえてきたのは。



 「……………ッ!?」



 一瞬、心臓が止まったかと思った。


 俺は慌てて元来た通路へ駆け出し、カーブ状に曲がっている通路に張り付くようにして体を隠すと少しだけ顔を出して足音が聞こえた方を窺った。


 足音がしたのは部屋の奥の通路からだった。


 目を凝らして見据えるが通路の奥は暗がりになっていてよく見えない。


 とりあえず何があってもすぐに対処できるよう心を落ち着かせると、そこから来る何か(・・)がこちらを訪れるのを待った。



 コツコツコツ………



 聞こえてくる足音は次第に大きくなっていき暗がりの中からその姿が露になっていく。


 足音の主は歩みを途切れさせる事なく部屋の中に入りキョロキョロと周囲を見渡すとがっくりと項垂れ、そして………








 「ようやく外に出られるかと思ったらまた部屋か!! しかも通路が沢山あるとかふざけるな!!」



 足音の主……くたびれた背びれを着込みバーコード状の頭から流れる汗をハンカチで拭っている恰幅のいい中年親父が苛立たしげに叫んだのであった。






 ………どうしよう。


 正直俺を此処に連れ込んだ誘拐犯かも知れないと思って警戒していたんだが、どうにも誘拐犯というよりどっちかというと俺と同じ……此処に連れてこられた人っぽい。


 とりあえず話しかけてみようかと思い通路の影から出た。



 「だいたい今日は大事なプレゼンがある日なんだぞ!! なんでよりによってこんな日に………ん? おい!! そこのおまええええええええええ!!」



 頭を掻き毟っていたおっさんは俺の姿を見ると凄まじい形相で迫ってきた。



 「あの、すみまs「貴様かぁああああああああああ!! 私をこんな所に連れてきたのはぁあああああああ!!」



 俺はなるべく相手を刺激しないように話しかけようとしたのに対し、おっさんはいきなり俺の襟首に掴みかかると血走った眼で怒鳴りつけてきた。



 「ちょ、話を聞いt「此処は何処だ私を一体どうするつもりだ何故私の昇進がかかったプロジェクトの邪魔をする斉藤か奴かそんなにも私が疎ましいかふざけんなさっさと私をここから出せぇえええええええええ!!」



 ええい!! 話が通じん!! つうか斉藤って誰だよ!!



 おっさんはこちらの話を一向に聞こうとせず俺の首を揺さぶってくる。


 興奮しすぎて人の話を聞ける状態じゃないようだ。


 なんとか宥めようとしても落ち着く気配が全くない。


 いい加減首が痛いし苦しい。


 一体どうしたら………








 コン……


 その時俺の手になにやら硬いものが触れた。


 主にポケット辺りから。



 「おい聞いているのか早く此処からだあああああああああばばばばばばばばばばばばばば!!!」



 おっさんは白目を向きながら体を痙攣させてると力無く倒れた。 


 まるで電流でも受けたかのように。



 「……………おぅふ。 やっちまった」



 俺はおっさんの惨状から目を逸らすと手元のスタンガンに目をやった。


 未だにスイッチが入ったままのそれは先端の電極からジジジジジと高圧電流を迸らせている。


 当たったらとても痛そうだ。


 おっさんをチラリと見た。



 ビクビクッ……ビクビクッ……



 おっさんはまだ痙攣している。







 ………………どうしよう、誰かヘルプミー。



 俺は途方にくれた。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ