3話 「執事と王子」
今、俺たちがいるのは魔法・魔術学校の生徒寮ビル100階談話室。そして、目の前に俺たちの執事だと名乗る女の子が二人。そして俺たち三人と彼女たちとの間には、実に微妙な空気が流れていた...依然、彼女たちは固まっている。
「あれ?どうした二人共?なんかあったのか?」
「『なんかあったのか?』じゃねーよ!諒、お前のビックリ大爆弾発言のせいでこうなったんだろ!」
「え!?こんな簡単なお願いも無理なの?」
「晴斗、こいつがバカで天然でアホでバカなのは今に始まったことじゃないでしょ?」
…そうだよな…諒は時々考えなしに行動するからなー…
「おい諒!お前なんでこんなこと言ったんだ?」
諒の耳に口を近づけ、小声で聞いた。間違っても『えーとくに理由はなーい』みたいな答えはやめて欲しいのだが…
「えーとくに理由なーい」
はい!大当たり!……今回も何も考えてないのかよ…
「それで…どうするの?お二人さん?」
諒の一言で金銀の執事がようやく時間を取り戻したようだ。二人はいきなり話し合いを始めたかと思ったら、すぐに答えを出した。
「その御命令、承知致しました。」
「えっ…えーーー‼二人共、な、なんで?」
「なんでって…ご主人様の御命令は絶対ですから!」
「よし!じゃーそれぞれの部屋に移動するか。行くぞ!ル二エ!」
「はいっ!」
そー言って新しい主人とその執事は部屋に向かっていった。そーいえば…凛の姿がない。多分、あきれてもう自分の部屋に行ったのだろう。
「あのぅ…晴斗さ、晴斗。私、やっぱり敬語で話した方がいい…よね?」
「いや…ル二エは敬語使わないみたいだしな……まーいいんじゃないか。タメ口で話した方が仲良くなれそうだしな」
「わかりました。ご主人様のご命令とあらば」
「おいおい…さっそく敬語使ってるぞ」
「あ!すいません!じゃなくて、ごめんね!晴斗!」
「よーし、じゃあ俺たちも部屋に移動するか!」
「うん!」
諒の『執事にタメ口強要事件』があってビックリしたけど、シエルもル二エもいい子そうだし、仲良くなれそうだ。女の子なら、執事の仕事もしっかりやってくれそうだしな。
「えーと、1475番は…あ、あった。あれ?そういえばシエルはどこに泊まるんだ?この寮か、それとも近くの建物にでも泊まるのか?」
「あーうん。じゃなくて、えーと…私もここに泊まるんだ」
「へーシエルも同じ寮なんだ」
「いや!そういうことじゃなくてね…私も晴斗と同じ部屋…だよ。」
「えっ‼?」
「し、仕方ないんだよ!王様の命令だし…」
「父様の!?まったく何考えてんだかな、あの人」
「やっぱり晴斗は私がいたら嫌だよね?私は、えーと…その辺で野宿するから大丈夫!部屋は一人で使ってよ」
「いやいやいや!野宿とか死ぬ気なのか?!…うーん、仕方ないか。でも確かに男女二人が同じ部屋、ていうのも問題あるし…とりあえず、シエルの部屋が見つかるまでは同じ部屋でてことでどうだ?」
「晴斗の命令とあらば!」
…こうして、俺とシエルの同居生活(仮)が始まった。ちなみに…俺とシエルはこの先3年間同じ部屋で住むことになってしまうのだが、今の俺はそんなこと全然まったくこれっぽっちも考えていなかった。
「おーいシエル、今何時?」
「18時30分だよ。今日の夕食は99階の食堂で19時からだからね」
「そっか、なんとか終わったな。」
「でも良かったね。晴斗のおかげで早く終わって」
俺たちはまず、俺の…じゃなくて俺たちの部屋の片付けから始めた。もう二人分の家具と荷物は運ばれてきていて、あとはそれを整理するだけだったから、案外簡単に終わった。
「少し休憩しよ。晴斗はコーヒーにする?それとも紅茶?」
「コーヒーかな。今少し眠いし」
「ならブラックにするね。それに、今日は少し暑いからアイスにしよっか」
…現在の時刻18時35分。茶会まで、残り14時間。この幸せで平和な時間が永遠に続けばいいな…と、そう強く願った。
もう卒業シーズンですね...色々な先輩との別れ、悲しいです。ですが、物語ではもうすぐ一つめの世界での冒険になります。これからも、こうご期待‼