2話 「会議と王子」
あまりの重苦しい雰囲気に気持ちが押しつぶされそうになる。僕は今、学校の会議室にいる。学校の会議室...といっても、国で一番安全な場所と言われているらしい。今から15分くらい前に諒達と別れたから、彼らはもうとっくに教室に着いているだろう...
「では今から三貴族会議を開始する。」
重々しい雰囲気にとても良く合うその声は僕の父にして国王、月神晴信が発し
たものだった。今回の話は父が進めるようだ。
今、この場にいるのは三貴族の長達だ。しかし、僕の家...月神家の長は父のはずだ。僕がこの会議に参加できる権利などない。
「王よ。なぜ第二王子様がこの会議に参加されているのですか?」
そう疑問を発したのは亮の父、虎春だった。
「今回話したいことの一つ目はそのことについてだ。私、月神晴信は月神家の長という地位を息子の晴斗に譲り渡すことを、今ここに宣言する。」
衝撃が走った。その場に、そして自分自身にも。もちろん俺はそのことについて何も聞かされていない。
「待ってください!僕はまだ高校生なんですよ!?」
「まー待て、晴斗。お前を王にしなければいけない理由があるのだよ...ここからが会議の本題だ。日本の三大貴族の長たちよ...心して聞いて欲しい…」
「晴斗!お疲れ様!それと...おめでとう!」
満面の笑みでそんな事を言われると不思議と元気が出てくる。緊張からの疲れも、少しは消えていったようだ。
「ありがとう、凛。」
午前8:00から始まった三貴族会議は昼過ぎの午後12:30に終了した。そして今は高校の昼食タイムだ。
「でも驚いたよなー晴斗が月神家の長なんてさー」
ただ今オレ達はテラスで学食中。なぜか三人共同じナポリタンだ...偶然てこうゆうことを言うんだなー。それはそうと…会議で話されたこと、この2人もいづれは知ることに…
「そういえばね!聞いてよ晴斗、亮のスピーチだったんだけどね……」
「お、お、俺はちゃんとスピーチしたぞ!しっかり…ばっちり…はっきり…な…」
「えーうっそだー...諒スピーチの時すっごく緊張してたくせに!」
「そ、そんなことねーわ!!」
「ほぉー…『カミカミ諒くん」は今も健在なんだね!諒くん?」
そんなお昼の和やかな時間に終わりを告げる学校のチャイムが鳴り響いた。
「おかえりなさいませ!晴斗さま!諒さま!」
「ただいま~...てどちら様ですか!?」
僕達の通う魔法・魔術高校は全寮制の学校で一つの巨大なビルに全校生徒およそ1500人が住んでいる。また、クラスごとに階数が決まっており、全学年合わせても、わずか30人しかいない僕達11組(Kingクラス)は最上階の100階だ。また、それぞれの階に行くための階段もあるが、ほぼ全ての生徒は転移魔法で階を移動している。僕と凛と諒の三人もその転移魔法を使い、100階の談話室に到着したのだったが…なぜかそこには、二人の女の子が立っていた。
「私達は今日から晴斗さまと諒さまの執事となります、シエルとルニアと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
執事がつくなんて聞いてない。まーでもあの人(父)は俺たちのことを少しは心配して勝手に決めてくれたんだろーけどな。
「こちらこそよろしく。えーと...どっちがどっちの執事なのかな?」
そう尋ねると二人はそれぞれの主人の前に立ち、一礼した。僕の執事は銀髪の小柄な女の子、シエルの方だった。諒の執事のル二エも小柄だが、こちらは銀と対の金髪だった。二人とも高校生...ではなく、年は15歳で一つ下のようだ。
「えーと...一ついいか?」
諒が何か言いだした…いきなり何か頼むつもりなのかな?二人は初めての命令を聞き逃さぬよう、真剣な表情で諒を見ている。
「まず...敬語禁止な。普通にタメ口でいいよ。それと、様とかつけなくていいから俺のことは諒、晴斗のことは晴斗て呼んでくれ。」
「いきなり何言ってんだよ!諒!!」
まだまだ幼き二人の執事はただ茫然と立ち尽くしていた。
もうすぐ4月ですね~でも、まだまだ寒い!早く春になってー!!