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世界は1つだけだった  作者: カイル
序章 -世界の宴-
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1話 「出会いと王子」

 死にたい。死んだ。死にたい。何度もそう思った。もう何も考えられない。考えたくない。だから、今はただ目の前のこいつを殺す。殺す。殺す‼

 1対10000の戦いで俺は死んだ―はずだった―

 1つめの世界―フェアリーロザリオ―

 「おはようございます。王子!!」

そう言って黒服の集団は頭を下げた。

総勢50人といったところか…

 「いってきます...」

それだけ言い、長さ13m級のリムジンに腰をかける。ふと見上げた窓ガラスに映る自分の姿に思わずため息が出てくる。身長は165㎝くらいで髪の色は黒、なのに対してハデな制服がどうにも似合っていない。


 「到着致しました」

運転手の言葉と同時にドアが開く。着いたのは国立魔法・魔術高校、今日からは僕達の学び舎だ。

 「ありがとうございます...」

それだけ言って車を降りると、校門には大勢の生徒に混じって顔見知りが一人いた。生徒達は皆、それぞれに待ち合わせや記念撮影をしているため、まだ彼の正体に気付いた人はいないようだ。

 「おはよ晴斗!ひさしぶりだな!」

 「おはよう、諒。」

 本名は神楽諒助なのだか、幼なじみの僕は昔から諒と呼んでいる。

 「諒、お前制服似合ってるな」

 「そう言うお前は似合ってないけどなw」

 「お、俺は服とか身につける物には興味なんてないし。やっぱり男は性格とか中身だろ!」

 「でも顔が良ければ、少しくらい性格が悪くてもいいだろw」 

 「はいはい...そうですね160cmの小さな茶髪美青年さまー」

そんないつも通りの話をしながら歩いていたからだろうか。気付かなかった。ボク達は回りを数十人の生徒に囲まれていた。

 「王子さま!王子さま!ご入学おめでとうございます!!」

 ありがとう...とだけ言い、作り笑ってやり過ごす。本当にこういう場面は苦手だ。

 「晴斗王子さまも大変だな。」

 「本当に...ていってもお前も王子だろ!しかも、あの人達は、第一王子のお前に挨拶してんだぞ。」

 2098年の現代、日本には王がいて、三家の貴族がいる。そして将来の王候補が王子だ。この王子は、その三大貴族の男子から選ばれる。この隣にいる諒こそが行く末の王である第一王子。僕はその一つ下の第二王子だ。

 「そーいえばさ、諒。お前今日の入学式で代表の言葉をするんだって?今緊張してる??」

「フッ...晴とよ、俺を誰だと思っている...」

 「めっちゃよく噛む噛み下手王子。」

 「うん!そうだね!...てなんでそうなる?!...俺はもう変わったんだ。いや、今日から変わるんだ!この神楽諒助さまの王様伝説の始まりさ!」

 「うんうん、そーだねー諒さまスゴーイ。かっこいい。いっけめえーん。」

 「...こ、心がこもってなさすぎだろ。あれ?なんか玄関に人が集まってんな。」

 いつのまにか、もう生徒玄関に着いていたようだ。玄関には確かに人が集まっていて、何かに注目しているようだった。

 「そーいえば...新入生は生徒玄関でクラス表を見てクラスを確認後、速やかに自分のクラスに移動するように...てなにかに書いてあったよな?」

 「いや、俺紙とか見ない方のタイプだし!」

 「諒のメンドくさがり屋は続いてるみたいだな。ていうかタイプってなんだよ。」

 「そんなことより!早く俺たちのクラスを確認しに行こうぜ!」

 「別に見なくてもよくないか。だってどうせ...」

 「分かってないなー。もしもっていうドキドキ感がいいんだろ!」

 そういって人混みの中をかき分けていく諒について行く。こんなに人が多いからだろうか、誰も僕達が王子だとは気付いていないようだ。

 「おい晴斗!見てみろよ!」

 「えーと...月神、月神...と。あった!」

 僕、月神晴斗と親友、神楽諒の名前は確かにあった。1-11通称Kingクラス。貴族と一部の権力者の身内しか入ることのできない特別クラスだ。予想通りとはいえ、諒と同じクラスで本当によかった。

 そして、クラスを確認したところで早速教室に向かおうとしたその時...

 上から人が降ってきた......はーー。なんでこういつもトラブルに巻き込まれるのかなー俺たちは。

 見たところ...女の子のようだ。絶叫と号泣を合わせたような声を出しながら、一気に地上へ急降下している。このままだと、あと十数秒としないうちに彼女は地面に激突するだろう。

 「諒!!」

 幼なじみ兼親友は、それだけで俺の考えを理解したらしく、すぐに行動に移した。

諒の膨大な魔力の一部が風力に変わり、ゆったりと俺を包み込んだ。この世界で魔法を使うためには、使いたい魔法を強くイメージし、詠唱をする必要がある。

 「・・・解放!!」

 諒が詠唱を終えると魔法の光が一気に爆発し、諒のイメージ...今回は風が俺の体を彼女の落下地点へとわずか3秒で辿りつかせた。そして若干の余裕を持って、俺は彼女をキャッチした。風力魔法を使って衝撃を少なくしたが、彼女の意識は朦朧としていた。

 「おい!大丈夫か!?」

 なぜ、この子はいきなり空から落ちて来たのだろうか...いや、今はそんなこと考えるより先に、早くこの子を医務室に連れていかないと。

 「私の王子...さま?」

 彼女はそんな意味不明な言葉を残し、気絶してしまった。すぐに医務室に連れて行こうとしたが、誰かが呼んだのだろう...先生が来てくれた。

 「諒、どうする?」

 「うーん...ここは先生たちに任せようぜ。」

 「そうだね...そうしよっか。それはそうと諒、お前さっきの風力魔法、一番威力の低い基礎魔法でよくあそこまでの威力が出せたな。」

 「まーな!『基礎が大事だ!』ておじい様が言ってたからな。今日までずーと基礎魔法ばっか練習してたんだ!」

 「お前って本当に意外と意外と頑張り屋だよな。」

 「まーこれでも次の王様だからな。」

 この時の諒は少し悲しげで、何かを悔いるような複雑な表情をしていた。僕も、そして...おそらくはこいつも、まだあのことから立ち直れていない。いや、多分もう立ち直ることなんてできない。これからも自分の無力さを悔い、憎み、同じ過ちを犯さないように生きていくのだろう。

 「諒!晴斗!久しぶり‼」

 「凛!久しぶり。」

 「おーりんりん!」

 「ちょっと諒!『りんりん』て名前で呼ぶのはダメってこの前も言ったでしょ!あなたはこの国の次代の王なのよ?!もう少しその自覚を...」

 「はいはい第一王女さまはお堅いねー。もう少しノリ良くいかないと...せっかくそんなに可愛いんだからさ。」

 「こ、こ、この私が可愛いなんて...嘘つかないでよ‼」

 「うん、ごめん今の嘘。忘れてちょうだいな。」

 「なんなのよ!あなたは‼」

 「前から思ってたけど、二人って付き合ってるの?」

 「なわけあるか!/なわけないでしょ!」

 ここまで息ぴったりだと説得力ないな...まーでも二人はこのまま順調にいけば、結婚してこの先の日本を創っていくんだよなー。それなら仲良いに越したことはないかも...諒にしても悪い話じゃないだろうし。この容姿端麗、性格良し、学力ありに魔法も得意な彼女なら、どっかの茶髪な王様でもお嫁さんとしては文句がないだろうしな。

「ねーあれって第一王女だよね?」

 突然のその声を筆頭に周囲がざわめき出す。そしてその瞬間、体に電流が流れたような気にさえなった。日本第一王女の姫神凛には俺たちと同じ、あるいはそれ以上に立ち直れない過ちがある...それは、今よりも幼かったころの四人の記憶。

 この学園内は例え国の王女であろうと王子であろうと、執事などの『お付きの者』をつかせることはできない。だから、この学園では俺たちしか彼女を守れる人はいないのだ。

 「凛...行くぞ。」

 そう言って諒は凛の手を引っ張りこの場から離れようとした。だが、確かに感じる―僕達三人を見下すその視線を―

 今まで何度も感じてきた。軽蔑や憐れみのあの視線。

 もう嫌だ。ここから今すぐ逃げたい...だが、それよりも今は凛の方が心配だ。

 「私は大丈夫だよ、晴斗。」

 突然のことに驚いた。彼女を心配する気持ちが顔に出てしまっていたようだ。

 「晴斗、落ちつけよ。それに二人とももっと堂々としていいと思うぞ。」

 確かにそうかも知れない。こんなの気にしなければいいだけだ。そして確かに感じる...二人は大きく成長している。二人は俺よりももっと強く、輝かしい。

 冷静さを取り戻し、三人で教室を目指そうとしていたその時、僕の携帯にメールが届いた。差出人は――

 「晴斗?」

 凛が僕を心配し声をかけてくれた。

 「ちょっと用ができた。二人は先に教室に行ってて。」

 「そのメール...お前のお父様からか?」

 ...さすが諒。時々鋭いんだよな、こいつ。

 メールの差出人は僕の父にしてこの国の王―月神晴信からだった。

 

 

 

 

学生です!初作品ですので、なにかとおかしな作品になると思いますが温かい目で読んで頂けるとうれしいです!

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