表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏と暁の通り道  作者: 早生しあ
第一章
6/58

第一章 額縁の中の世界【4】

「国王! フィリップ様が見当たりません!!」

 くすんだ短い金髪の少年が城を走り回っていた。真っ青な顔をしている。

「まさか……」

「サムエル国王! 反乱を起こしたアバダン領への道で女性を発見しました! そばには夫と思われる男性も! ……今はそこ以上は進めません!」

 少年は二人を見て駆け寄る。サムエルも歩み寄った。

「深い怪我はなく、気を失っているだけです」

 軍服を着た兵が告げ、サムエルは少年の頭をなでた。

「ミク、ご両親だよね?」

「……はい。……何で……?」

「ミク……ミイが……アバダン公の屋敷に行ったんだ。フィリップ様が連れて行かれて……」

 広い部屋に医者を数人呼ぶと母親を診させる。サムエルとミクは窓に歩み寄る。

「フィリップ……」

 か細く呟くと目を閉じ、深呼吸をした。

 弟も大事だが、自分は一国の王。取り乱すわけにもいかない。

「フィリップ……向こうに行ったんだね……。あれほど部屋にいろと言ったのに」

 唇を噛み、顔を上げた。

「向こう側と話し合いの場を設けるようにしてくれないか? ミク、手伝ってもらっても構わないかな?」

「……はい」

 ミクは深く頷いた。

 サムエルとアバダンの話し合いは行われる事なく、アバダンの元に行ったとされるフィリップは行方不明だった。

 アバダンの屋敷に程近い場所で幼い少年が頭から血を流して倒れているという情報もあったが、その少年も見つけることが出来なかった。

 やがてアバダンは強引に境界に塀を作り、行き来を完全に禁止する。

 サムエルはフィリップの手がかりを失い、途方に暮れた。

 アバダンの政策は貧富の差を広げ、治安の悪化を招く。

 もし向こうの領土にいるとすれば、何不自由なく、苦労もなく育ったフィリップは生きていけないと誰かが噂をする。サムエルもそれを否定しながらも心のどこかでは諦めていた。




 フィリップはもう戻らない……と。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ