≪空の白と水色とがマーブルを描き、あたしはあなたをおもう ≫
夏ではないから涼しくて、秋ではないから温かくて。この季節をそんなふうに言っていたあなたにもう一度会いたい。
だから、君といたい。
もう、世界がとけてしまった。
ドロドロに、溶けた世界と人々。
どうすることも出来ずに、誰かの足音が近づいてくるのをじっと待つ。
川沿いの土手で、背中に芝を感じながら、じっと耳を澄まして、空を見た。
あたしはそんなに弱い人間じゃない、って何度も言い聞かせて、
何度も涙を吸い込んだ。
膨らんだスポンジ。
ぐしゅぐしゅのスポンジ。
どこまでも、どこまでも、あたしに我慢をさせる。
でも、こんなに空が白と水色のマーブルをきれいに描くものだから、あたしはあなたに逢いたくなる。
きれいなものを見たとき、かなしいものを感じたとき、どんなときでも、
あたしはあなたの目にもこれを見せたいと思う。
夏が終わりそうで、終わらないこの季節に、
川沿いの土手の上に寝そべっているとね、感じるんだよ。
ちょっとだけ肌寒い、風が頬を撫でていく、そうこの感じ。
今日のマニキュアは黄色いベースの上に、ベージュ色のドット。
ここのところ、台風ばっかり雨だったよね。
久しぶりに天気が良かったから、うまく、塗れたんだ。
そんなふうに、お互いの気持ちのいいときに、一緒にいたり、触れ合ったりしたいよね。
あなたがそんな風に思わなくても、私はそう思うんだなぁ。
「ミナコ。」
低くて優しい声がするほうを向こうとして、立ち上がろうと思ったら、
そのままその声の人にキスされた。
あなたはいつのまにか私の寝ている芝とおんなじ色の芝生の上に、腰を下ろし、身を乗り出して。
めずらしく、あなたは少しだけ口の端を持ち上げて、笑っていた。
≪空の白と水色とがマーブルを描き、あたしはあなたをおもう ≫
September.27
最後まで読んでくださってありがとうございました。これからはできるだけ優しげな、小さな話を少しずつ書いていこうと思っています。