これはバグです
関係ない余計な一言:
ガチゃがすり抜けたので気分悪いから試しに面白くないラブコメを書いてみた。
「先輩、まだ変な事やってる。」
ミント色のおさげが二つ、目の前にぶら下げている。
片膝立っている俺に影が差し掛かった。
このまま頭を仰げばキスされかねないので、俺は俯いたまま返事した。
「変な事とは?」
「収納箱に物を詰め込んでいる。」
「うむ、普通なことだな。」
「詰め込んだ物を全部取り出している。」
「うむ、普通なことだな。」
「取り出したあともう一度物を入れた。」
「うむ、普通なことだな。」
「何処がですか!?」
仕方あるまい、バグを引き起こせるかを試しているなんで、説明しようがない。
俺は一度死んだかもしれない、何せ気付いたら昔クリアしたゲームの世界にいた。
と言っても記憶が殆どない、俺は何者なのが、死ぬ前になにやってたのかも。
そもそも本当に死んだという記憶も証拠もない、あるのは俺が今居る世界は記憶中昔やったゲームの世界と酷似しているの一点だけ。
もっと正確に言うと、記憶はこの学園の敷地に踏み込んだ途端、脳内になだれ込んだ。
中にはぼんやりしか覚えない変な世界で生活した記憶断片と、鮮明に残ったゲームの記憶と設定の数々の二種類が存在する。
そして鮮明に残ったゲーム記憶の中には一本、結構続いたシリーズの中でも異色な、学園ベースの作品が混ざってる、それがいま俺が居る世界だ。
そこまで覚え出した直ぐ、俺は試した、あの有名のバグを。
そう、何を隠そう、このゲームのシナリオすごく良くて、システムも面白いって有名だけど。
開発時間が足りないのか、ゲームバランスが結構悪く、バグも結構多い。
それでも記憶中の俺は結構楽しめて、男女含め全キャラの個別エンドまで見た。
有名のバグに話戻すけど、最初に試したのは手順が一番簡単なやつで、見事に再現可能だった。
内容は同じ材料とやり方を使っても、完成手前に一手順加えると、仕様と違うアイテムを作れると言うバグ。
バグによって変化したアイテムは殆ど同じ価格な上、ゲーム仕様上材料は無限なので、大して利もないし害はない。
次に試したのは画面グリッチ系のバグ、ゲーム画面が乱れとか、スプライトがズレるとかそんなやつ。
こっちは再現出来なかった、詳しい理由はわかんないけど、作用対象が画面なんで自分の目で見る分には関係ないと、自分を納得させた。
残ったバグは簡単に再現出来ないため、その後はいろいろ準備して、今漸く次のバグ再現する手筈が出来た。
「そんなことよりお昼ご飯しましょう、先輩。」
彼女はまるでハートマークが見えるくらい甘ったるい声で誘ってきた。
「君が作った物なんで怖くって食べれない。」
「え〜先輩酷いです、ちゃんと愛情こめで美味しく作ってるのに。」
そう、一度ハメられて食べてしまったことがある、あれは極上の美食だ。
学食と同じ材料および味付けで作ってるのに、一秒たりともずれないリズム感と絶妙な火加減によって作られた、神々の饗宴に相応しい一品である。
あれを毎日食べろうっと?無理だ!そんな事したら堕ちるに決まってる!
「俺は昼食べない主義だ。」
「え、嘘、前食べてくれたじゃん?」
半分嘘ではない、もともと昼と夜択一で抜く派で、前までは昼食べて夜食べない日が続いてる。
そう、前までは。
この子が毎日昼ご飯を食べさせるようになってからは、昼抜きにした。
「む!先輩!なんで黙るの?私は本気なんです!どうして付き合ってくれないのですか?私のとこがいけないですか?」
「何度も言いますけど、俺は恋愛に興味が無い。」
黙ったまま作業を繰り返す俺に呆れたのか、彼女はいきなり爆発した。
そして俺もいつもの返事をした。
これは半分本音である、俺は恋愛にあんまり興味ない、けど別に絶対したくない訳でもない。
なによりこのミント色のお下げ、真ん丸でキュートなタレ目、程よい小っちゃいな鼻と口、身長と相まってなくはないバランスのいい膨らむ、太ってないけど細すぎない手、ちょっとだけ肉感ある太股に形がパーフェクトの脚線、全校女子と同じ制服なのに夏服も冬服も俺の目を誘惑するように着こなす、ピンヒールと奇抜過ぎるやつ以外は自由に選んでいい俺好みの靴とソックスの組み合わせ、近くにいると漂う甘い匂いで誘惑してくる、この子はきっとサキュバスだ、没頭できる物に対して食べ忘れるくらい一日中がんばる姿、俺だけではなく気が許すとついつい無防備な姿を晒すようになるのに、やってしまうと恥ずかしくなって真っ赤になる抜けた所、小悪魔ムーブで誘惑しようにも、結局恥ずかしくなって震え声になり、最終的に力抜けてそのまま胸をーーおっと、最後のは忘れてくれ。
兎に角言いたいのは俺が彼女を|好きじゃない《好きになってはいけない》ことだ!
今の彼女はただの変人みたさで俺に近づいてくるだけ!
何?文句でもある?俺は誰に言い訳してるんだ、くそか。
「どころで先輩はなんでずっと物を出し入りし続けるの?」
そういうやりとりも大分慣れてきた彼女は取り乱すことなく、ただむすっとした表情を浮かべてこう言った。
さて、何と答えましょう?
「うーん、強いて言えば検証?」
ある程度古いゲームの場合、こう言うバグはメモリー内の溢れた値でプログラムを組んで、結構自由に内容を改変できるけど。
残念ながらこの世界はそこまで古くない。
俺が今やってるのは特定の手順を踏むと、なぜが最後入れた装備の識別番号が別装備のパラメーターのシード値によって上書きするバグ。
察しがいい人なら分かると思うか、元になったゲームの装備パラメーターは固定ではなく、個別のシード値によって計算する仕組みになっている。
そしてシード値は見えない、ゲームの時は数値から逆算できるけど、数字が分からないこの世界ではそんな事出来ない、そもそも元になった装備のデータいないし。
結果、これはただの装備ガチャになる、と予想。
おまけにこのバグによって作り出す装備はほぼ最弱パラメーターに固定されるので、売値はその分安くなる上、準備と手順滅茶苦茶多いので、特殊な目的ある人以外はまずやらない。
まぁ、内容物によって三十分で他人が丹念込めて数日かけて作る物を出せるのは、利益出せるかもしれないか。
それをやり続けると違うパラメーターを持つ装備がなくなって、このガチャが永遠に同じ物出るので、ただ利益を追求して技術を失ってしまうとこの世界は詰みます。
なので例えこれが再現出来ても、未来永劫封印すると思われる。
「なんの検証?」
バグの、なんで答えないからループするじゃないですか!!
でもそろそろ出来るので、ここは黙っとく。
最後に一着の服を収納箱に詰めて、閉じる。
あら不思議、再び開けたら箱の中身が変わった。
でもそれを視認した瞬間、俺は「あ」と言う声を漏らした。
しまった、よりによってこれが来た。
完全に失念した、装備ガチャってことはこれも候補に入ってることを。
「え?」
案の定、彼女は目が点になりながらそれを見た。
俺の青ざめた顔を見向きもしないで、妄想を爆発した。
「や、やだ先輩、魔術を準備してこんな回りくどいやり方でプロポーズしてくる何で。いくらなんでも早すぎますよ先輩、私まだ一年ですよ。これはさすがに卒業してからじゃないと無理です、その前にちゃんとお母様とお父様に挨拶する済ませる必要も有るし、キスもまだだし。」
俺は持ち合わせっていない。
脳内が完全にピンクに染まって。
ハートマークつけた台詞が大量吐き出す彼女を止める言葉を。
その後俺たちが婚約したという噂は彼女のファングラブに渡り、指名手配まで作られ学園中に貼られたと言う迷惑行為が、数時間以内で行われた。
教職員達は犯人分からないので、結局俺が呼ばれて、あっちこっち回って否定しまくった上、貼らされた手配ポスターの処理までやらされるハメになって、しばらくバグ検証出来なくなったのは、また別の話。




