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第十一九話「出戸彩芽と狼夜」


           


執政中枢にして指揮所中枢である主塔を離れ狼夜は跳躍。


左に見える炎上中の戦闘用六号出撃塔に向かった。


先行案内する病葉楓は氷魔法を操る。


長さ六メートル厚み四センチの螺鈿細工氷製投擲槍を無数に生み出し放つ。


道をふさぐ鎮定軍兵器を槍で穿ち凍結粉砕して行く。


彼女は兵器としての高性能を遺漏無く発揮。


敵、六脚型高機動軽戦車の軍勢。


空中要塞へ乗り込んできた敵生体改造兵のいびつな姿を凍結粉砕。


反撃の魔道砲を強力な魔道障壁で弾き進撃路を開く。


飛行移動で狼夜の案内しながら鎮定軍を撃破して先へ先へ進み空中要塞の建造物の屋根に出て行く。


狼夜は跳躍で壁を蹴って追随。


この地点に召喚兵を集結・レギオンマスターの特殊能力を全力起動。


 神の猟犬を模したガルム型召喚兵二千は狼夜の魔力供給で増強された。


異音を立てて変異、より早く、より力強く、より鋭く駆け出し鎮定軍を喰い殺した。


踏み砕き魔法弾を毛皮で弾き反撃の火球を口から吐き出し爆殺して行く。


 空中要塞主塔への道を阻む敵兵団。


城壁に点在する戦闘用出撃塔の六号塔周辺を急速に召喚兵である猟犬軍は制圧した。


意外過ぎる援軍に驚く侯爵兵は負傷兵が多く疲れ果てていた。


狼夜の進入を妨げる仕事を忘れた。


唖然とする守備隊を強引に突破。


狼夜へ六号出撃塔の進入を侯爵軍は許してしまう。


 外部から受けた砲撃で所々崩落した六号出撃塔は戦闘用飛行機械の出撃格納庫であり離陸甲板でもある。


朧家狼夜は炎上中の塔を登る。


煙に視界を防がれつつ今まさに飛び立とうとしている機械天使兵科の出戸彩芽を背後から抱き留め塔内部に引き込む。


瞬間的に空中戦艦の放つ集中砲撃が弾着・六号出撃塔は崩落。


病葉楓の張る魔道障壁に守られ包帯塗れの娘と狼夜は再会した。


「誰ですか貴方は、邪魔しないでくださいっ!」


 言い合いに付き合わず魔道化鎮静剤のアンプルを彩芽に打ち込み制圧。


 怪我にまみれた煤だらけの気絶した娘を担ぐ。


狼夜は自分が召喚したガルムに乗り込み病葉楓の案内で陥落して行く空中要塞を脱出する。


崩れ行き炎で満たされつつある六号戦闘出撃塔を離れた。


砲爆撃の中走り続け乗り込んできた旧型戦闘用高速飛行機械のもとに向かうと戦闘の影響で爆破されていた。


焦り周辺に視線を巡らせ脱出艇を探す。


無いままに敵魔道団が弾着して爆発して行く世界に彼は絶望を覚えた。


魔道弾と炎と衝撃波を避け逃げた。


その時、燃える空中世界を見た。


夕日と茜色の大きな雲と燃える空中要塞と無数の発生源から尽きない煙と敵空中戦艦の砲撃と殺し合いに空を飛び交う鎮定軍所属攻撃機と迎撃機の描く三次元戦闘軌道の曲線。


 殺しと破壊に違いなかった。


が―――、激しい運動を伴い壮大な浪費がいっそ芸術的に空を満たしていて狼夜は圧倒されかけた。


 空中要塞では弾着して行く敵魔道砲弾の影響で多くの構造物が壊れて行く。

 狼夜は絶望したまま被弾を避けやみくもに逃亡を開始した。

 相棒の病葉楓が示す指先に縋るように進路を進む。


 スタビライザーか制御系でも破壊されたのか……


飛行能力にダメージを負い振動して行く空中要塞を突き進み病葉楓は狼夜を案内。


 鎮定軍に制圧された第二戦闘出撃塔を狼夜は辿り着きガン・ブレードを起動。


高速戦闘開始三十分で空中鎮定軍から投射された兵器群を叩き砕くように平らげた。


出撃塔を奪還。


内部にある損傷した迎撃機まで狼夜を楓は案内した。


病葉楓は乗り込んで飛べるかどうか確認していく。


だが損傷した迎撃機は複座型で三名は無理だった。


「狼夜、ガン・ブレード貸して」


 病葉楓はそう言って血濡れの煤けた射撃機構付きの長い剣身を持つ高周波ブレードを狼夜から奪い取ると自分の胸を貫いた。


「おいっ!?」


「あーしは冬精霊。この剣に宿るだけ、後で狼夜が召喚兵の魔法で肉体を可愛く作って……」


 そんな無茶を言いつつ病葉楓はガン・ブレードに宿り入り込み声を発する。


「操縦は狼夜に任せた。私の指示で迎撃機を動かして……」


狼夜は頷き侯爵を後部座席に押し込んだ。


砲撃の弾着振動がどんどん近づいて来る。


ここも空中戦艦に照準されつつある。


そんな中、損傷した迎撃機に乗り込み機械を無理やり動かし離陸した。


機体は速度が出ず飛行五分で方々から火を噴く。


狼夜は必死に楓の指示で戦域から離れ降下し続けた。


離陸して行く迎撃機は敵弾幕を被弾しつつも急所弾着は辛うじて外れ損壊しながら捕捉を免れて空を行く。


鎮定軍は炎噴き出す敵の逃亡機を無視して優先目標に殺到。


敵軍は逃亡機を見逃し戦闘に没頭した。


出戸侯爵家の武威の象徴である空中要塞制圧戦。


それを西日本勢力を中核にした空中鎮定軍は空中進出。


出戸軍の鎮定を急いだ。


狼夜と楓は炎を噴き上げる飛行機械を必死に制御して降下を続けた。


狼夜と彩芽を乗せボロボロと破片を零す出戸侯爵軍所属迎撃機。


機体は降下を続け大昔に滅んだ二十一世紀東京都と埼玉と山梨県の領域境目。


朧家狼夜は雲取山へ墜落した。


墜落するまでに狼夜は機首を引き起こし迎撃機の減速に成功。


地表へ木々を避け不時着。


 オンボロ迎撃機は度重なる出撃で燃料層が使い果たされており炎と煙を噴き上げつつも爆発せずに済んだ。



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