<Ⅰ>
私が居た、机があった、上に壺があった。
壺を開けるとそこには小さな人の形をした何かが入っていた。
人形のように見える。
緑のドレスを着ている、長い金髪、眼は閉じている。
まるでお姫様の様。
私は壺からそっとその人形のような物を出してみた。
触ってみてもなにも起きない。
冷たいような、暖かいような。
いや、これは冷たい。
死んでいるのか??
そもそもこれは生き物なのか??
確かめる方法がない、わからない。
でも1つ、言えることはあった。
この人の形をした物は、とても美しかった。
そうだ、名前を付けてみよう。
考えるが、中々思いつかない。
……決まった。
今から、君の名前は――だ。
――。私が付けた名前としてはいい名前だと思う。
――。私の声が聞こえてるか??
聞こえてないかもしれない。
でも、私は呼び続けるよ、――。
別に私が誰だっていい、ここが何処だっていい、君が何であろうともいい。
でも、君を――と呼ばせてくれ。
――、それは私の名前だから。
もう私は私ではない。
私の名前は君が貰ってくれ。
そろそろ時間だ。
行かなくてはいけない。
君の名前が分かるようにしるしを残していこう。
壺に、自分の血で書いた。
――。
私は人の形をした物を壺の中に静かに戻す。
蓋をした。
後ろを向き、歩き始めた。
またどこかで――と逢える日を。
願いながら、私は消えた。
残されたのは机と壺、それから人の形をした何か。
それから幾年の時間が経った。
壺の中から1人の少女が出てくる。
まるで人形のような可憐な少女。
少女は壺に書いてあった名前を見た。
――。
それが自分の名だと思った。
そこには、少女が1人、机が1つ、壺が1つ。
少女は机から飛び降りた。
少女は歩き出した。
何処に向かってるとも分からずに。
ただ、真っ直ぐと。
私の名前は――。
誰か、居ないかな??
誰かと、逢えないかな??
願いながら、少女は消えた。
残されたのは机と壺。
壺には文字が書いてある。
――。
というわけで、かなーり前に書いた作品を載せてみました。初投稿だぜわーい。
感想などあったら宜しくお願いします。