表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/40

第3話

「……婚約者? 王子様に?」


アリアナの言葉に、部屋にいた友人たち――エリス、マリナ、リュシアが顔を見合わせた。


学院の寮、午後の紅茶の時間。アリアナの部屋には、同じクラスの令嬢たちが集まっていた。


エリスは子爵家の娘で、優等生。マリナは有名な商会を持つ男爵家の娘でおしゃべり好き。リュシアは貴族ではないが、特待生として優秀な成績を誇る少女だ。


「うーん、私は聞いたことないわよ? 婚約者なんて」


マリナが首を傾げる。


「わたしも、そんな噂は耳に入ってないです」


リュシアが真面目に答える。エリスも頷いた。


「王子様が誰かと婚約していたら、学院内でそれなりに話題になっているはずよ。ましてや相手が公爵令嬢なんてことになれば、もっとね」


「でしょう?」


アリアナは思わず、胸をなで下ろした。


セレナ・エルメイア。完璧な容姿と立ち居振る舞い。学院内でも有名な公爵家の娘。その彼女が「婚約者」――そんな話が本当だったら、アリアナはとても耐えられなかった。


「でも……昨日、あのセレナ様に、“婚約者の存在”をほのめかされたの。王子のこと、あまり近づかないほうがいいって」


「えっ、セレナ様が……?」


三人が顔を曇らせる。


「なんか、こわ……」


「嫌味……というより、牽制ね」


エリスが静かに言った。


「でも、私たちが知らないってことは、少なくとも“公にはされていない”ってことよ。アリアナ、あなたが王子様と親しいの、皆知ってるわ。学院中が噂してるもの」


「そうだよ! アリアナちゃん、すごく好かれてると思う。王子様って、あんなに柔らかく誰かに接してるの、見たことないもの!」


マリナが両手を広げて言った。


「だから……自信持っていいと思う。王子様のこと、信じて」


アリアナは、少し泣きそうになりながら笑った。


「ありがとう、みんな」


でも、胸の奥では、昨日のセレナの冷たい声がまだ渦巻いていた。


“婚約者がいらっしゃるかどうか……気になるなら、お友達に聞いてみたら?”


彼女は、こうなることを予想していたのだろうか。


そして――アリアナの中で、ほんの小さな違和感が、静かに芽吹いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ