表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/37

初めての夜

 キスをしながら、レイは僕をベッドに押し倒した。

 僕に覆い被さって、頬と頬をすり合わせ、しばらく動かない。

 僕は、おずおずと背中に腕を回して、そっと抱き寄せた。

 すると、顔を上げて間近から僕を見据えた。

 漆黒の双眸が僕を捉えて離さない。

 その熱い眼差しに蕩かされて、僕は声も出なかった。


「嫌だと思ったら、いつでも言ってくれ」


 レイは、いつもより一段低い艶のある声でそう言った。

 きっと、前にギルドで僕に触れた時のことを思い出しているんだろう。


 ──「レイなんて、嫌い……大嫌いっ。触らないで!」


 僕はなんて自分勝手で、幼かったんだろう。


 あの時の僕は、レイに裏切られたと思った。

 大切にしてくれているという考えは、僕のただの思い違いなのだと。

 でも今なら、そうじゃないとわかっている。

 

 思いつめて、馬鹿なことをたくさん言って、レイを傷付けたのは僕の方だ。

 レイは途中で止めて、僕の感情を優先して考えてくれていた。


 今、僕はレイを見上げて、自分の心を曝け出した。


「レイだけではありません。私も、レイを欲しいと思っています」


 僕を見つめる黒い双眸が、一瞬見開かれ、次いで嬉しそうに緩んだ。

 気持ちが伝わったとホッとして、僕も微笑みかける。


 レイは僕に触れて、身に着けていた服を丁寧に脱がせていく。

 その長い指の動きを見ているうちに、恥ずかしさと共に嬉しさが込み上げた。

 大切にしてもらっているのが、手つきからもわかる。 

 上着を脱がし、中のシャツのボタンを外し、下穿きを脱がす段になって、レイは手を止める。


「……ガーターだ」


 レイはぽつりとそう言った。

 シャツを留めるために下穿きの上につけるシャツガーターが、そんなに珍しいのだろうか。


「レイはしていないのですか?」

「ん? ああ、俺は身に着けていない」


 お揃いの服なのに、僕にだけガーターをつけるなんて、側仕えの間違いだろうか。


「お前の兄は、良い趣味をしているな」


 ニヤリと笑って言われたけれど、よく意味がわからない。

 レイは、僕のガーターをしばらく眺めた後、結局外さなかった。


 僕のシャツの前をはだけ、首筋や胸元にキスをする。

 くすぐったくて身を捩りかけたが、シーツを掴んで何とか我慢する。

 レイは、きつく肌を吸ったかと思うと、顔を上げて満足気に指先で辿った。


「あいつの所有の印を、上書きしてやる」


 あいつというのは、アルサイールのことだろうけれど、所有の印は既にきれいさっぱり消えている。しかも、上書きというのはどういうことだろう。


 僕が視線で問いかけても、レイは答えずにチュッと音を立てて、胸元へのキスを続ける。

 そんなに吸ったら、口付けの痕が残ってしまう。

 そこで僕は、さっきのレイの言葉の意味を把握した。

 今は良くても、あとで側仕えの前で着替えたら、すぐに何の痕かバレるに違いない。


 胸元を愛撫されているうちに、だんだんと身体が火照り出し、声が出てしまいそうになった。


「気持ちいいか?」


 柔らかな声で訊ねられて、僕は肯定も否定もできなかった。

 肯定するのは恥ずかしく、否定すれば嘘になってしまう。


 レイは胸元から顔を上げて、再び唇にキスをしてきた。

 

「ルカーシュ、可愛いな」


 幼名で呼ばれて、思わず目を開くと、レイはハッとしたように手を止めた。


「悪い、つい」


 何を謝るのかと不思議に思ったところで、過去に自分が口走った言葉を思い出した。


 ──「その名で、呼ぶな……っ!」


 混乱していたとはいえ、あんなことを言うつもりはなかった。

 しかも、まだレイが覚えていて、気を遣わせていたことが居た堪れない。


「いいんです。呼んでください、レイ。あなたになら、呼ばれたい」


 親しみを込めて幼名で呼ぶ人は限られている。

 レイには、これからも呼んでほしいと思う。

 だから、僕は微笑んだ。

 レイは頷き返し、僕の頬に触れて呼んだ。


「ルカーシュ」


 父母や兄たちが呼ぶのとは違う、レイの発音の仕方が僕は好きだ。

 何が違うのだろうかと冷静に考えようとしたけれど、レイに触られて思考が奪われる。


 ふと僕は、自分が裸同然で、レイが襟元さえ乱していないことに気が付いた。

 

「……レイも、脱いでください」


 僕が言うと、レイは手を止めて僕の上から退いた。

 そして、一枚一枚、着ていたものを脱いでいく。

 露わになった厚い胸板や割れた腹筋に、僕は目を奪われる。

 そっと手を伸ばして触れると、レイは僕の手を取った。

 

「今触られたら、まずいんだ」


 レイは触るのに、僕は触ったらダメなのか。

 ちょっと意味がわからずに視線で問うと、困ったように笑う。


「そのまま、俺に身を委ねてくれ」


 僕は頷いて、抗いそうになる身体を落ち着けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ