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事の真相

 神殿まで走っていくと、入り口に門番が立っていた。

 僕たちを止め、入るのを阻もうとしたため、僕は自ら名乗った。


「第三王子のエスティンです。こちらは、勇者レイ様です。どうか、ドミートス様にお目通りを」

「これは、失礼いたしました」


 中から神官が現れて、僕たちを神殿に招き入れた。

 結界が張られているはずだが、アルサイールには反応しない。

 完全に魔力が消滅したのだと、僕は確信を得た。


 神殿の内部は天井が高く、豪奢なシャンデリアが下がっていた。

 床にはバレヴィー石を使用し、調度品も金銀がふんだんに使われている。

 城でもめにしないような贅沢品の数々は、富と権力の象徴のように目に映った。


 やがて、広間に神官たちに囲まれて、ドミートス神官長が現れた。


「何だね。騒々しい」


 白く太い眉を顰めていたが、僕の姿を目に止めると、眉尻を下げて微笑んだ。


「これは、エスティン王子」


 変わり身の早さに内心驚きながらも、僕はゆっくりと一礼した。


「ご無沙汰しております、ドミートス様」


 ドミートスも恭しく、王族に対する礼を取る。

 隣に立っていたレイは、僕とドミートスを見比べ、静観の構えだ。


「今宵はどうなされた。こんな遅い時間に」


 言外に訪問するのなら日を改めろと言われた気がしたが、僕は微笑みを浮かべたまま箱を見せた。


「元凶を捕縛しましたので、引き渡しに参りました」


 何のことかと視線で問われて、僕は箱から中身を取り出して見せた。

 小さくなった魔王は、僕の手の中で手足を動かしたが、逃れられないとわかると観念したように静かになった。


「まさか、魔王アルサイールか……?」


 縮んでも、ドミートスには判別できたらしい。

 僕は、その問いに首肯した。


「そうです。ドミートス様は、このアルサイールを再度封印するために、勇者を召喚したのでしょう? これで目的は達成できましたね」


 僕は周知の事実のように、秘されていたことを口にした。

 もちろん、ドミートスは僕の言を肯定しない。

 そして、緑の瞳を光らせて、じっと僕を見つめている。

 何か不用意なことでも言えば、僕を捕らえる気でいるのは、周囲を固めた神官たちからも窺い知ることができる。

 けれども、僕にとっては彼らこそが生き証人だ。

 僕は、ドミートスの罪を暴くと決めていた。

 一つ深く呼吸をしてから、僕は話し始めた。


「この国には、予言があると囁かれていました。私がミーアの化身であり、アルサイールの復活をもたらすというものです。もちろん、ここにいる方は全員、ご存知のことでしょう」


 そう前置きすると、やはり誰もが驚いた様子を見せなかった。

 対峙するドミートスも、眉一つ動かさない。

 だから、僕は続けた。


「けれども、実際は違った。アルサイールがミーアの化身を求めて、自ら封印を解きかねない。予言でも何でもない、ただそれだけの話だった」


 ノクサムンも知っていたくらいだ。

 予言はわざと広めたものに違いない。

 もちろんその理由は、真実を覆い隠すためだった。


「初代リデアス王は、アルサイールを滅することはできず、封印することしかできなかったのでしょう。勇者がいなくなってからは、アルサイールの封印が解ける日のことを、神殿はずっと恐れていた。だからこそ、ミーアと似た容姿の者が生まれる度に、成人を前に幽閉してアルサイールに知られまいとした。それが、ミーアの乙女の真実だ」


 ミーアに捧げられたのではなく、アルサイールに捧げられたと言われる乙女たちだが、捧げるのであれば幽閉する必要はない。あれは、アルサイールの手の届かないところに置いて、気付かれないようにしたのが始まりだ。


「今までは、それで済んできた。しかし、間の悪いことに、現国王の息子としてミーアの姿をした私が生まれてしまった。成人を前に幽閉したくても、王は許さない。そこで私を、毒殺しようとしたのでしょう。ですが、計画は失敗に終わり、更にそのせいで王に警戒されて、余計に私に手出しができなくなってしまった」


 最初の毒殺計画は、ちょうど今から10年前のことだ。

 勇者が召喚できれば、まだ良かった。

 だが、その年の召喚は失敗に終わってしまう。

 追い詰められた神殿側は、そこで僕の暗殺を企てたわけだ。


「10年に一度のミーアの儀を、今回こそは失敗するわけにはいかなかった。なぜなら、私が成人してしまえば、魔王の封印が解けることをあなたはご存知だった。だからこそ、魔王を滅する勇者をあなたは欲したのです。異世界から召喚するほどに」


 結果として、レイはこの国に召喚されてしまった。

 魔王を今度こそ滅するために。

 少なくとも、もう一度封印をしようとは思っていたはずだ。

 魔王の力が強大になっていることは、年々増え続ける魔物の存在で自明だった。

 封印しても尚、魔力に惹かれて魔物は集まってきてしまう。

 これで、封印が解けでもしたら、今度こそリデアス国は滅びる。

 神殿側は、それを恐れていた。


「ですが、ご覧の通り、あなたが思うよりも前に、魔王の封印は解けていたのです。それは、私があのエレギラの遺跡に入ってしまったせいでしょう。あのダンジョンに魔王がいることまでは、神殿側は把握していなかったようですね」


 もし事前に察知していたら、勇者パーティーが侵入することを、決して許さなかったはずだ。ミーアの化身の存在を、魔王にだけは知られたくなかったのだから。


「これからは、どうぞご安心してお過ごしください。このように、魔王アルサイールの力は、私がこの手で封印しました。あとは神殿が責任を持って、管理していただければ幸いです。そして、二度と私にも勇者レイにも手出しはしないでいただきたい」

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